第5話 『夢幻』の夢
アークを拠点にしているプレイヤー集団『
彼らは7人の戦闘ジョブと2人の支援ジョブに別れているパーティーだ。
9人の目的はアークにあるダンジョン『罪の牢獄』にいる『大罪の魔王』の討伐、3つの目的の内、魔王討伐のみ共通しているだけだが、彼らは聖都で意気投合し、パーティーを組むことにした。
パーティーリーダーで『刹那戦闘』のユニークスキルを所有する剣狩人のレオンは武器の手入れをしながら、今後拠点として使用するために借りている家で考え事をしていた。
『大罪の魔王』を討伐目標にしている他のプレイヤーが続々とアークに集まってきている。
先に攻略されてしまったら自分たちの目的は他の魔王へとチェンジされてしまうシステムである以上、他のプレイヤーよりも早く討伐しなくてはアークに来た意味が無くなってしまうと考えていた。
「もし誰かに先を越されたらここに来た意味が無くなっちゃう」
「焦ったところで死ぬだけじゃない?」
『
『罪の牢獄』は何層あるかも判明しておらず先日も第4階層の構造が変化していると騒がれていたばかりなのだ。
「ダンジョンに行くのは賛成ですけど、まだLv上げをしたほうがいいと思います」
幾度もメンバーを救ってきた白魔術師のエリはアイカの意見に賛同するように発言をする。
彼らプレイヤーはLvを40支払わなければ地球で眠っている本体も死んでしまうと言うリスクがあるので容易に飛び込むことは出来ないのだ。
しかし、時間を使えば何度でも挑み続けることが出来る可能性もあるということなので、十分なLvを確保することをエリも思っていた。
「……無謀」
マジックスナイパーという超遠距離ジョブであるサキもアイカの意見に賛成するように普段の無口を破って発言をする。
自分たちよりもLvが低いだろうと考えられる他のプレイヤーが自分たちよりも先に攻略出来るはずがないと考えているのだ。
「とりあえずダンジョンに挑みまくってLv上げと慣れだな!」
刈り上げられた黒髪をしたガタイの良い男が大きな声で答える。
彼は「タクミマン」というネームで『
『
「フォルカさんから情報をたくさん得ることは出来ましたからね」
眼鏡をかけて知的な雰囲気を感じさせる彼は「アル・グレッド」と言い、メンバーからはアルと呼ばれている。
『
いつも落ち着いており、ここまでの旅路でも彼の知識が大いに役立ってきており、ダンジョン攻略でも後方からの指示役として活躍している。
さらに棒術が得意らしく接近戦もこなせるオールラウンダーでもある。
「他の目標も忘れないようにしないとね!」
ブラウンヘア―のショートカットを揺らしながらソファーで足をブラブラさせている爽やかな少女が楽しそうに声をあげる。
彼女の名前は「風祭風香」という。
足技に特化させた武闘家として敏捷値と手数で魔物を倒す前線ジョブとして『
本名でネーム登録してしまったことを後悔していたのだが、今では気にせずに過ごしている。
「風香…新しい装備が出来たから試着してちょうだい」
「やったーー! さっすがマコちん!」
黒髪を靡かせながらゴスロリ服を着ている少女。
彼女は「マコ・マコ」という名で魔物と戦うことはないが「裁縫師」としてアークでも活躍している人気者だ。
戦闘メンバーが獲得してきた素材を使って強い装備を作成すべく毎日頑張って引きこもっている努力家でもある。
「ご飯も出来たよー!」
「ご飯も食べるー!!」
水玉模様のエプロンをしてメンバーに声をかけるのはプレイヤーでも珍しい「調理師」と「薬師」と言うジョブを持つ生産特化プレイヤーの「リンラン」だ。
その料理の腕は凄まじくメンバーの癒しの時間のもなっている。地球でも料理が得意だったようで毎日様々な素材を捌いて料理を作っている。
リンランの声を聞いてメンバーの声を明るくなる。
それとほぼ同時に家の入口にある扉がコンッコンッと叩かれる。
エリが確認して扉を開けると、そこには。
「お待ちしてました! フォルカさん」
「こんにちわエリちゃん。本当にご馳走になって良かったのか?」
「もちろんだぜ! いつも世話になってるからな!」
「作るのはリンランでしょ…」
『
◇
リンランがフォルカが来るとのことで張り切って作った料理を食べながら『
『
「焦っても良いことはないけど、早い者勝ちと考えるなら他の冒険者に関しても常に情報収集をしておいたほうがいいな」
「私たちより強くなっていたら先を越されるから?」
「あぁ…結局どのダンジョンも攻略するのは名のある冒険者ばかりだからな」
「プレイヤーばかりじゃないってことですね」
アークに住む人や店を出す商人が増えてきたことは皆感じている。
フォルカの話ではもうそろそろSランク冒険者やSSランクパーティーが来る可能性も少なくないかもしれないとのことだ。
さすがにSSランクパーティーがダンジョン攻略に名乗りをあげたら時間の問題かもしれないとのことだ。
「Lv上げもダンジョン攻略もウカウカしてられない」
「……焦りは禁物」
「まぁ…もしあれだったら使ってくれ」
フォルカがレオンに渡したのは、ダンジョンを緊急脱出できる魔道具だ。
魔法陣を展開してダンジョン入口まで転移させることが出来る高価な魔道具をフォルカは何事も無いようにレオンに渡す。
「一回本気で挑んでみて無理だったら逃げればいい。なんとなくだが、一回挑んでみないと焦る気持ちは無くならないだろう?」
「い、いいんですか!?」
かなり高価な魔道具に驚く『
ここまで応援したりアドバイスをくれるフォルカに頭が上がらない『
レオンはせっかくの機会だと思いメンバーに1度だけ本気で挑んでみようと提案する。
「自分たちが今どこの立ち位置にいるのか知る良い機会にしよう」
「まぁ…その魔道具があるならいいかもね」
ダンジョンから使用さえ出来れば脱出できる魔道具があるならと賛同していくメンバーたち。
フォルカの後押しもあり昼食を食べながらもさっそくダンジョン攻略について話し合うことになり。フォルカはそれをいつも通りの形で見守っている。
7人の陣形やハンドサインの確認、互いのアビリティ・スキルの確認や武器防具についてそのような組み合わせで行くのかと言った話を続けていく。
フォルカの的確なアドバイスもあり、段々とメンバー全員が納得できる方向に進んでいき、数日後には挑んでみようと言うことで話が決まってミーティングは解散になる。
帰り道にフォルカは誰にも聞こえないように呟く。
「全員まとめて脱出できるように注意。それと時空間魔法を高ランクで使用できる魔物がいることも想定したほうがいいかもしれない」
その予言めいた小言は、テンションの上がっている面々の誰にも聞こえることは無かった。
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