第5章 帝国領土『南』制圧作戦

プロローグ 帝国の『動き』


 デザイアとシンラが新た姿となって『罪の牢獄』に加入して5日が経過した。


 いつでもどこにでも現れるシンラはダンジョンの様々なエリアを飛んでいる。

 語りはしないが交流をしているようだ。

 ベテランのシンラはみんなに信頼をされているようで、もし自分の階層に冒険者か勇者が攻め込んできた場合、どんな状況に陥ってしまったら助っ人に来て欲しいと打ち合わせをしているみたいだ。


 そして問題のデザイア。

 魔物Lvは999が限界ってコアに表記されていた気がするが1000というLvで誕生したヤバい魔物。ポラールと阿修羅、そしてイデアよりも上ってことだ。

 座っている美女と下の蜘蛛は別個体で、虎蜘蛛は『ニャルラトホテプ』になっており能力は大体同じなようだ。

 虎蜘蛛時代からの魔物たちの親みたいな立場は変わって無くて、色々話を聞いているようだ。ポラールとイデアも頼っているぐらいだ。上の本体は基本寝ているんだが…。


 だけど問題が1つあり、ダンジョンにしっかりデザイアの階層も用意したのだが、デザイアがそこから出ようとしないことだ。引きこもりなのだ。


 本気を出せば誰にも認知されることなく影響も受けない究極のデバッファーは部屋から出てくれないのだ。

 尋ねると話は聞いてくれるんだけどな。


 そしてダンジョンの構成は話し合った結果こうなった。



ダンジョン名 『罪の牢獄』ダンジョンLv29 知名度B 総合B(難易度EX)

 迷宮都市 街 ルジストル・ホムンクルス多数+リーナ 難易度 無

 1F    薄暗い洞窟 ゴブリン集落+スライム+一角ウサギ 罠多数  F

 地下1F  朽ちた街 スケルトン+子蜘蛛  『銅』の軍勢化  D

 地下2F  湿地帯  スケルトン(泥纏い)+血吸い蠅+スライム  C

 地下3F  灼熱火山 炎腕魔王イブリース(メル分裂体のためランクS)  B

 地下4F  破裂の黒森 偽金剛蜘蛛+偽火竜+偽狼軍  S

 地下5F  暗黒遺跡  デザイアが創り出した生命体たち SS

 地下6F  闘技場   スケルトン+全滅したら出てくるアヴァロン  EX

 地下7F  永遠の星空  ガラクシア  EX

 地下8F  暗黒湿地帯  五右衛門 EX

 地下9F  星海     メルクリウス+スライム多数  EX

 地下10F  鬼の花道   阿修羅  EX

 地下11F  白の塔    イデア EX

 地下12F  地獄の門   ポラール  EX

 異空間  星屑の祭壇  デザイア  EX


 居住区 果樹園  レーラズ+カーバンクル+ニーズヘッグ EX

     コアルーム ソウイチ シンラ(各階層にランダム出現) EX



 デザイアは6Fからだったらどことでも繋がっている異空間で引きこもっている。

 だけど『枢要悪の祭典クライム・アルマ』の誰かがピンチになったら出るつもりらしい。まぁ最初はアヴァロンか。

 地下5Fにはデザイアが創り出した少し気味の悪いのがたくさんいる。外見が虫や触手の集合体なので不気味で近寄れない。


 シンラは俺がコアルームに1人になっている時はコアルームに居てくれると言うので心強いけど、鳴き声もあげてくれないから居るのかどうか気付かない時がある。


 そして何と言っても魔物の中で4体しかいないと表記されていた自身と他者を魔力だけで復活させられる魔物が阿修羅以外にシンラも増えたことが大きい!

 それにデザイアは他者を復活させられるが、自身が死んだときは美女か蜘蛛のどちらかが生きていないと復活させられないという条件はあるけど強いのには変わり無いので、これで少し心配事が減った。



「デザイア爆弾は作れるのか?」


「妾は想像できる範囲ならなんでも創れる。じゃが面倒なことなのじゃ」



 そして俺は今、デザイアのところにきている。

 火の明かりだけで薄暗い祭壇で、一番奥でデザイアが待ち構えている構造になっている。


 俺は虎蜘蛛の「爆卵産み」をかなり頼りにしていたので、同じことが出来るかどうかデザイアに確認しに来た。

 だけどそんな方法でなくとも、もっと便利で強力なことが出来そうだな。



「威力も思うがままか?」


「ちゃんと主が説明してくれれば自由じゃぞ」


「すごいな! さすがデザイアだ!」



 蜘蛛の上にある玉座に座っているデザイアのところに行きたいけど遠いな。


 そう悩んでいると、俺の考えが分かったのか、玉座から生えている触手の1本が俺を迎えに来てくれた。

 触手に捕まってデザイアのところに行って、思う存分デザイアを撫でる。

 フードはとらないでほしいようなので、ゆっくりと撫でまくる。



「恥ずかしいのじゃ!」


「可愛い奴め!」



 虎蜘蛛とは別の個体と考えていいだろう。どちらかと言えば下にいるニャルラトホテプの子どもみたいな感じに思うけど、主は上にいるアザトースなんだよなぁ~。

 ニートなだけでみんなを助ける心を持っていてくれてるし、ポラールとイデアの相談役になれるだけでもかなりの存在感だ。

 


「主、この蜘蛛は「ニャル」でいい、ニャルの方が皆を知っておる」


「わかった。改めて頼むよニャル」



 下に向かってそう呼ぶと足をあげて反応してくれた。まさしく虎蜘蛛だ。

 能力はだいたい同じだけど別の意志を持っている魔物が存在しているっていう面白い事実も分かった。

 

 俺はそのままデザイアと色々話をした。可愛い奴だ。








――『罪の牢獄』 居住区 食堂



 みんなで晩御飯を食べている。

 この時間は出来るだけみんなで食べたいので、出来るだけ食堂で食べるようにお願いしている。もちろんデザイアもだ。

 ルジストルとリーナから報告があるようで、みんなで2人が話始めるのを待っている。



「閣下、帝国がアークに対して本格的な調査を寄こすようです」


「やはり来るか」



 人も多く集まってきて、商人も目を付けてかなり店を出してくれている。農業の面では帝国でも1番と言っても過言じゃないレベルになってきた。

 冒険者も集まってきていて、「プレイヤー」もそれなりに拠点にしている。


 何より稼いでいるのに帝国にほとんど還元していないのが見逃せなくなったか。

 調査に来ると言うことは大掛かりなことをしてきそうだ。

 俺たちとしてはそんなことされても帝国と仲良くしたいと思わない。



「ちなみに誰が動くか分かるか?」


「それはまだ決まっていないようです」


「アルカナ騎士団も忙しんだな」


「最近は我々以外でも帝国内にある新たなダンジョンや街が活発に動いていますからね」



 俺の同期達もさすがに数カ月たって本格的に動き出してきている。

 特に1度魔王戦争を終わらせて条件を達成した魔王は安心して動き出せるだろう。    

 ルーキーである以上、先輩魔王から魔王戦争を仕掛けられる心配はない、誰かと同盟を組んでいたりすれば互いに守り合いながら待ちを発展させいていけるからな。


 どうやらルジストルとリーナの調査によると、かなり距離はあるが帝国領土南にもう一人勢いのあるルーキー魔王がいるそうだ。

 そして最近その魔王がアークに冒険者や商人を使って調査をしに来ているらしい。そういう奴らはメルにレーラズが捉えて一早くルジストルとリーナに報告をしているので大丈夫なようだ。


 ルーキーの調査なんかよりも、帝都と先輩魔王たちの調査や対策をしたほうが良いとは思うけど、他者のやり方にケチつけても仕方がない。



「ライバルを調べてどうにか踏み出そうってことか」


「えぇ……今アークを支配出来れば帝国南では1番勢いのあるルーキー魔王になれますからね」


「ただでさえ南はダンジョンが多くないらしいからな」



 帝国南は大森林に山、湿地帯と魔物が多く生息している地域がほとんどだ。

 大きな街はルビウスに『バルデス』『テラヌス』くらいだ。俺の中での大きい街っていう基準は曖昧なもんだけど、人口と発展度合いで決めさせてもらっている。

 どちらかが倒れれば帝国領土南の迷宮都市として長いことやっていけるって考えか。



「アルカナ騎士団は帝都から近いそちらのほうの調査を終わらせてから、アークへの本格調査をするようです」


「ちなみにどんな街なんだ?」


「街の名は『ホルムズ』。ダンジョン名は『死霊の墓場』だそうです」


「迷宮都市は少なくて良い、冒険者が分散してしまう」



 せっかくなら帝国領土南を支配できるなら目指してみてもいいのかもしれない。

 『枢要悪の祭典クライム・アルマ』が10人になって自在に動けるようになった。ビビってばかりじゃ意味ないからな。


 それに【フォルカ】でも活動を少しずつしているおかげで違和感なく入り込めるだろう。

 ちなみにメルにガラクシア、阿修羅に五右衛門がフォルカをよく使っている。

 話し方は上手く真似しているようで今のところ問題は無いようだ。



「ホルムズを調査するのと同時にホルムズにいる帝国騎士団も見ておこう」


「手配しておきましょう。もちろんフォルカで行かれるので?」


「そのためのソウルロイドだからな」



 冒険者として行けば帝国騎士にも相手魔王にも疑われないだろう。

 そんなに弱くないから何かあっても逃げれるくらいにはなるだろう。

 ダンジョンを冒険者として攻略してみるのも面白いかもしれない。



「まぁ明確に敵対してるって分かったら魔王戦争仕掛けられるのも面倒だから、その前に終わらせよう」


「ますたーアイス食べたい」


「私もアイス食べるー!」


「妾にもアイス1つじゃ」


「儂も食べるぞ!」


「私も頂こうかな」



 今までダンジョン内から出るだなんて、急な事件が無い限り考えなかったが、魔王として格を上げていくにも、外の世界を侵略しに行かないとな。



 

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