第14話 『結局』忙しい毎日
とても優しい匂いがする。
昨日は1日で色々ありすぎてクタクタになって寝た。
なんとなくだけど寝すぎた気がする。そろそろ起きないとまずいかな。
そう思って目を開けると、ベッドの上にはイデアがいた。
「そういうキャラだったっけ?」
「ん~、おはようマスター」
「おはようイデア。昨日はご苦労様」
「あんなに頑張ったのに呼んでくれないから忍びこんじゃった」
「呼ぶなんて制度存在しないんだけどな」
「他のみんなが最高って言うから気になったんだ」
髪を下ろしているからか雰囲気が全然違うな。
白い寝間着が可愛らしくて似合っている。
イデアのおかげで大量の情報が手に入って、一気に色々動きだすことができそうだから本当に助かる。
勇者相手に圧倒するばかりか、わざわざ丸裸にしてくれたイデアには頭が上がらない。
そんな気持ちもこめてサラサラの髪を優しく撫でる。
「ふふっ♪ 確かにこう褒められるといいもんだね」
「別に特別何かしなくても言ってくれればやるよ」
「今度からお願いしようかな♪」
イデアと五右衛門は裏で支えるのが上手な2人だから一気に色々楽になった。
みんな仲良しだし、一緒にいて楽しい魔物たちだ。
少し寝足りない気もするが今日も忙しくなりそうだから頑張らないとな。
昨日のことは忘れてはいない。ミルドレッドを討つために動いた奴は徹底的に炙り出してやるさ……どれだけ時間がかかろうとな。
「頑張りすぎはいけないよマスター、肩の力を抜いてね」
「そうだな。ありがとうイデア」
俺の後ろに回って肩を揉んでくれるイデア。
イデアの言う通り気負い過ぎず、少し心に余裕を持っていかないとな。
コアルームに辿り着き、画面を作動させると、プレゼントのところに数字が光っている。
そういえば最近また見ていなかった気がするな。
1.7体目のEXランク魔物支配下記念 【ソウルロイド1体】
2.勇者初討伐記念 【100000DE】
3.勇者2人目討伐記念 【ソウルピック10連チケット】
4.勇者3人目討伐記念 【Sランク魔物獲得チケット】
5.Sランクダンジョン攻略記念 【魔名カード『魂喰らい』ランクS】
6.Sランク魔王討伐記念 【ホムンクルス10体セット】
7.ダンジョンランクがAになった記念 【お好みダンジョンエリア選択チケット】
8.『王虎』魔名獲得
9.『空』魔名獲得
ソウルロイドっていう意味不明なのは置いといて順番に行くとしよう。
勇者を討伐したことでDEが一気に潤った。
ソウルピック10連チケットがあるのでさっそく画面を操作してガチャをひく。
1.魔名カード『劇毒』 ランクS
2.魔名カード『覇道』 ランクSS
3.魔名カード『空虚ノ王』 ランクEX
4.魔名カード『銀世界』 ランクSS
5.聖魔物『黄金の羽根』 ランクSS
6.魔名カード『腐夢』 ランクEX
7.魔名カード『神王雷』 ランクEX
8.魔名カード『誘惑』 ランクA
9.魔名カード『剣神』 ランクSS
10.魔名カード『大地』 ランクS
11.聖魔物『悪神台座』 ランクEX
このガチャは相変わらずリアクションができないので次の配合に期待だ。でも名前から見るに強そうなのが揃っている気がするぞ。
そしてかなりの戦力強化であるSランクの魔物を獲得できる究極のアイテムを使用する。
かなりの種類のSランク魔物がいるので悩む。
今の『罪の牢獄』に何が足りないかと考える。
ダンジョンを任せられる魔物がもっと欲しいと思うので、少し悩んだが選択した魔物をタッチする。
出てきたのは巨大な蛇。
とにかくデカくて、全体の大きさで言ったらレーラズの次に大きいであろう魔物。
単純な力、そして機動力を兼ね備えた魔物だ。
【ニーズヘッグ】 魔蛇族 ランクS 真名 無し 使用DE7000
ステータス 体力 S 物理攻 S 物理防 S
魔力 B 敏捷 A 幸運 B
アビリティ ・大地の恵み S
・完全適応 S
・毒の王 B
・音探知 A
・魔蛇の鱗 S
スキル ・毒魔法 A
・土魔法 A
・毒攻撃 S
・麻痺攻撃 S
・鋼の鱗 A
・土の加護を得ている巨大な魔蛇。血の臭いや音に敏感でかなりの探知力を持つ。
・毒や麻痺を付与する攻撃を得意としており、巨体を駆使した力攻めで獲物を仕留めることもできる。
出てきてまったく鳴き声をあげないところをみるとシンラと同じ感じだが、身体が大きくて静かだと少し怖いもんだ。デカいので今度乗せてもらおう。
とりあえずレーラズの所へ送って教育をしてもらおう。
そして気になるソウルロイドなのだが、簡単に言えば偽の冒険者を作れて、コアモニターで操作できるらしい。
Lvやステータスはもちろん初期からだが、DEを使用してドーピングができるようだ。
能力は全て選んだ種族基準で成長していく。会話や動作などは操作する者の真似をするっていう色んな国に侵入させるに持ってこいな最強アイテムらしい。
「若、それ面白そうだな」
「儂やりたいのぉ~」
「いや、俺がやるさ」
これでやれることがさらに広がった。
でもすぐに手をつけると大変なことになりそうなので、その前にアイシャからのメッセージで呼ばれているので準備して向かわないとな。
俺は一緒に来てほしい2人に声をかけてアイシャの所に行くことにした。
◇
――『焔輪城ホムラ』 ダンジョン 会議室
いつも通りの会議室でアイシャと『天風』が待っていた。
やっぱりミルドレッドと『空』のことなんだろうな。
腕を組んで少し重い雰囲気を纏っている『天風』と、師匠が不機嫌でオドオドしているアイシャを見ていると、なんだかんだ良い師弟関係に見える。
「お待たせしました」
「大変でしたね。ソウイチ」
「あぁ……生涯忘れることの無い1日になったよ」
本当に忙しい1日だった。
アークに「プレイヤー」がやってきて捜索して、ミルドレッドの魔王戦争を応援して、そっから勇者と戦ってさらには『空』に襲われる。
どこの誰がこんな絵を描いたかは知らないが、絶対に地獄を見せてやる。
「僕のことはラムザと呼んでくれて構わないよ」
「『大罪の魔王ソウイチ』と申します。昨日アイシャに送ったメッセージ通りです」
「僕もこの目で確認してきたよ」
ラムザさんはアイシャと『空』のダンジョンを見に行ってきたらしい。ラムザさんからすれば大事な友を二人同時に失ったのだ、だけどまったく揺らいでいるようにみえない。
統率者が不在になったミルドレッドの街はラムザが少しの間面倒を見るようだ。
魔王として器の大きさを感じる。
「『空』は勇者の1人に洗脳状態のような感じにされていました」
「ミルドレッドを殺すだなんてそうでもなければあり得ないからね」
「勇者3人相手に疲労困憊だったミルドレッドたちでは厳しかったようです」
「……随分冷静なんだね」
「悲しむより先にミルドレッドをあんな目に遭わせた存在は残らず滅ぼしたい気持ちですよ」
俺がそう言うとラムザさんは少し驚いた顔を、アイシャは少し悲しそうな顔をしていた。
でも俺は『救世の賢者・坂神雫』を簡単に許すことはできない。他にも絡んでいる奴がいるだろうから炙り出す。
人間を滅ぼしたいわけではなく、上手く関係を気付いていきたいとも思っている。
魔王は全部危険だということも変えたいし、無闇に人を襲う世界もどうにか考えていきたい。
まずはどうにかして「プレイヤー」と勇者に対して関係を築いていきたい。
「少し……変わりましたね」
「ルーキーのやることじゃないね」
「出会った勇者が弱かったのかもしれませんが、3人程度ならどうにかなったので、ここからは慎重さを忘れずに行動していくつもりです」
「ソウイチ…」
「もちろんアイシャにも手伝ってほしい」
「凄いことに巻き込まれそうですね」
「そうか……なら僕は戻るとしよう」
ラムザさんは用が済んだようで帰っていった。
俺が無謀な復讐に走らないか見たかったようだ。
大事な友であるミルドレッドの弟子が復讐なんかで死んだらミルドレッドが悲しむとのことらしい。
『空』は勇者に敗れてしまって残念だが、良い友人だったと言っていたらしい。
「良い師匠だな」
「えぇ…本当に頼りになりますよ」
俺は今後の計画について、そのままアイシャと話をする。
「プレイヤー」と勇者に対して、どのようにアプローチをしていくのかなど、時間の限り相談させてもらった。
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