第2話 『幸せ』の一時
朝起きたらガラクシアとメルがベッドに侵入してきており、今日働いたら全力で怒りますと言われてベッドから起こしてもらえない時間が続いている。
とりあえず今日1日は休みなさいと言うことらしい。
2人は存分俺に甘えて楽しんでいる。
そんな顔を見てるとなかなかベッドから出たいなんて言えないし、こんな状況ならばしっかり休んで、また明日から頑張るくらいの切り替えを素早くしないと損だもんな。
「たまにはいいかもな……もう一回寝るか!」
「「はーい♪」」
きっとこの状況はみんなが頑張ってくれているからなんだろう。だったら開き直って存分に楽しませてもらわないとな。
心の中でダンジョンを頑張って回してくれているであろう、みんなに感謝をする。
「「おやすみマスター♪」」
俺は2人を抱き寄せて二度寝を決心した。
◇
――『罪の牢獄』 居住区 食堂
二度寝を決め込んでから一瞬にして熟睡してしまい、次起きたのは昼前だった。
なんだか相当疲れていたようで、久々に身体が軽い気がする。
ガラクシアとメルの姿は起きたときにはなく、次に俺の監視役に来たのは阿修羅と大蝦蟇だった。
とりあえずお腹が空いたので昼食を食べようとしてあることに気付く。
「2人とも煙管と葉巻はどうした?」
「若が食事を終えるまでは待つさ」
「ゆっくり食べるとええぞ」
なんとも面白い気遣いだ。
それにしてもこの2人は格好も似てるし、煙管と葉巻っていうのも気分によって使っているのもあって、似てる部分で互いに波長が合うのかよく話をしているのを見る。
大蝦蟇はベテラン魔物だが新人であるため少しだけ居づらかったという雰囲気だったが、阿修羅が声をかけてくれて助かったと言っていた。
たくさんの魔物がいるけどなんだかんだ『
「それにしてもニンニクたっぷりラーメンってうまいなぁ」
「すごい臭いじゃぞ」
「俺たちの煙よりキツイんじゃないか?」
主人に対してこんだけ軽口言える関係ってのは自分で言うのもあれだが楽しいなって思える。
2人とも落ち着いていて話がしやすいから一緒にいると自然にリラックスできる。
「大蝦蟇は虎蜘蛛とも仲良くやっているとか?」
「あやつと仲悪いやつなんぞ見たことないがの」
……言われてみれば確かにそうだな。
カーバンクルにレーラズ、フレイムリザードと仲良くするの難しい連中と一番コミュニケーションをとれている魔物は虎蜘蛛な気がする。そんなに動くタイプではないけれど、上手に支えてくれるので、みんなから頼りにされているんだろう。
考えてみれば虎蜘蛛には最初っからお世話になりっぱなしだったからな。
この後会いに行ってみるかな。せっかくの休みだし。
「ちなみにコアルームで指示を出してるのは誰だ?」
「ポラールとリーナ嬢だな」
「納得の人選だな」
まぁ最初から心配はしていなかったがその2人なら安心だ。
俺は2人とラーメンを食べながら、ゆったりとした昼の時間を過ごした。
◇
――『罪の牢獄』 ダンジョンエリア 破裂の黒森
昼食中に決めたように虎蜘蛛やシンラに会いに行った。
この階層に冒険者が来たらすぐに解散する予定だが今のところ大丈夫そうだ。
虎蜘蛛の上に乗せてもらって横になっている。
その隣ではシンラが黙って瞑想している。
少しするとフレイムリザードが焚火をしてくれた。三者三様のもてなしは、自然とリラックスさせてくれる空間を作り出してくれた。
パチッパチッと木が燃えてはぜる音が凄く心地よい。
「良いもんだな…たまぁにはこういうのも」
こういう時間を過ごしていると改めて魔物のみんなの存在の大きさを認識できる。
少し起き上がってシンラを撫でる。
ここにいる3体は本当に魔王なり立てから支えてくれた魔物たちだからな、今後もずっと一緒に歩んでくれないと困る。
落ち着いていて、効率よく働いてくれる虎蜘蛛、鳴き声すら出さない寡黙な仕事人シンラ、クールなのか面倒くさがり屋なのか分からないフレイムリザードと個性的だが楽しいメンバーだ。
「お前たちの力が今の俺に繋がっている。これからも一緒に頼むよ」
シンラを撫でながらそう呟く。
相変わらず鳴き声すら発しないシンラと足をあげて反応してくれる虎蜘蛛、欠伸しているフレイムリザードだったが変わってないようで良かった。
「昼寝でもするかな」
フレイムリザードの欠伸につられてしまったのか眠くなってしまったので虎蜘蛛の上で寝ることにする。
焚火の音が穏やかな気持ちにしてくれる。
俺はゆっくりと意識を落とした。
◇
――アーク 商業区域 とある飲食店
気付けば夜まで寝ていた俺だったが、ルジストルとリーナが晩御飯をご馳走してくれるとのことなのでアークにある飲食店に来ていた。
なんとも疲れが吹き飛ぶ料理らしく正直期待して待っていると…。
「これ真っ赤だけど大丈夫なのか?」
「美味しいですよソウイチ様」
「えぇ……食べ終わるころには閣下の疲れは吹き飛んでいますよ。生まれ変わった気持ちになれます」
色んな料理が運ばれてくる。
何やら公国北の寒い地域でよく食べられている料理らしく、かなりの人気店のようだ。通い詰める人間がいるほどらしく、かなり賑わっている。
「そういえば2人は仲良くやれているのか?」
「えぇ……楽しく仕事させていただいております」
「慣れぬ仕事ですがソウイチ様が人手を追加してくださるので良い感じですね」
「そいつは良かった」
アークのことは2人に丸投げしてしまっているから申し訳ない。
毎日とんでもない量の仕事をやってくれるんだろうなと思うと2人には足をむけて眠れないな。
街のみんなを2人の指示にはテキパキ動いているので相当信頼されているし、冒険者の中でも怒らせるとヤバい2人と噂されているので立場もしっかり使えているようで良かった。
「閣下こそ…倒れてしまえば元も子もないですよ」
「今日改めて痛感させられたよ」
「休むのも仕事の1つです」
逆に2人が休んでいるか心配になるが、しっかり休みをとっていることでしっかりしている。
上の者が手本を見せないと下の者はついてこないと言われてしまった。
とっても耳が痛い。
「さぁ閣下、冷めてしまいますよ」
「そうだな。いただきます!」
10秒後、店内に俺の絶叫と2人の笑い声が響き渡った。
◇
――アーク 鉱山 頂上付近
とんでもない目にあった俺は燃えるように熱い身体を冷ますために山の頂上付近に来て夜風にあたっていた。
一緒に来てくれたのはポラールとアヴァロンの2人だ。
『罪の牢獄』が誇る。最強の矛と最強の盾が護衛ってのは豪華なことだ。
熱く火照った身体に夜風がとても心地いい。
「アークは綺麗ですね。ご主人様」
「あぁ…みんなのおかげだよ」
上から見えるアークを眺めてポラールが声をかけてくれる。
ポラールを見ると真っ直ぐ街を見ている。
毎日見ているが相変わらず綺麗な顔をしている。
いつも一緒に来てくれてリーダーとして最前線でその力で俺たちに魅せてくれるポラール。
俺が不在なときはダンジョンを全力で守ってくれる大切な存在だ。
「もっと素晴らしい街にしましょうね。ご主人様」
「あぁ……必ずだ」
俺の肩にゆっくりと体重を預けてきたので、しっかり受け止める。
なんだかんだ甘えん坊なのもポラールの魅力の1つだな。
「お前も最強の盾として今後も頼むよ」
振り向きはしないが確実に聞いてくれているアヴァロンに声をかける。
どんなことでもしっかりと遂行してくれる最高の騎士が居てくれるおかげで俺の少しの無茶ができる。
最強の矛と最強の盾の偉大さに改めて気付かされる時間になった。
◇
――『罪の牢獄』 居住区 果樹園
寝ようと思ったらカーバンクルに呼ばれたので果樹園までやってくるとレーラズが歓迎してくれた。
前に一度やってもらった花のベッドを作ってもらいカーバンクルを抱き枕にしながら横になる。
「落ち着く香りだな」
「選んだかいがありました♪」
レーラズも花のベッドに来て微笑んでいる。
アークの生命線で秘密の回復アイテムを育ててくれている陰の立役者であるレーラズ。
なんだかんだ言って働いてくれるので本当に信頼できるし、よく周りが見えているのでダンジョンを任せられる存在だ。
「レーラズも一緒にどうだ?」
「添い寝してほしいですか?」
「あぁ…よく眠れる気がする」
「仕方がないなー♪」
レーラズとカーバンクルがくっついてくれるのでとっても暖かい。
カーバンクルは気持ちよかったのか一瞬で寝てしまった。
この子は『罪の牢獄』のアイドル的存在でこのダンジョンを明るくしてくれる。
色んなところに駆け回って騒ぎを起こしたりして笑いを起こしてくれるムードメーカーだ。
本当にどの魔物も唯一無二の存在だ。
こんな素晴らしいみんなを絶対に失うわけにはいかないな。
今日は最高の1日になった。今度から月に一度はこういう日を作ってもいいのかもしれんな。みんなと過ごす日を。そして改めて『罪の牢獄』で頑張ってくれている魔物たちと向き合う時間ってやつを。
朝起きるとガラクシアとメルが元気いっぱいに起こしてくれた。
こんなにも素晴らしい魔物たちを失わないためにも、今日も魔王として、しっかりと働かないとな!
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