第1話 少しずつ進む『謎』
ミルドレッドが魔王戦争をするって聞いた時、すぐに手伝おうかと思ったが、リーナからルーキーはルーキーがメインどちらかに入っている魔王戦争以外介入してはいけないというルールがあると教えられたので応援のメッセージだけをとりあえず送信するだけにしておいた。
そしてコアのプレゼントのところを開いたら少し考えさせられる実績が解放されている。
1.プレイヤー初撃破記念 【2000DE】
2.プレイヤーパーティー初撃破記念 【5000DE】
これは仲間にした大蝦蟇があの4人を倒した実績のようだ。一応俺たちもその場にいたからおこぼれみたいな感じだろうか。
つまり原初の魔王は「プレイヤー」を倒すことを望んでいるし、魔王ならば「プレイヤー」を倒すことは当たり前のように考えているってことか。俺たち同期は数が多く、そして同じ時期にプレイヤーが現れるっていうのは、まるで狙われてたことなんじゃないかと思えてくるな。
このプレゼントのことを相談していたらとんでもない人に遊びに来たいと言われたので許可をしてしまった。
我らが食堂では俺に爆睡しているメル、それに『七元徳の魔王アクィナス』と配下の『神熾天使ミカエル・フスティシア』が来ておられる。
相変わらずの眩しいほどの黄金の髪が美しくと見惚れてしまう。それに優しい微笑みの中にも、しっかりと感じる威圧感。最早一体の魔王として、人間と戦うということにも飽き、人間からもその強さから挑まれることはないと言えど、未だに震えるような存在感はさすがの一言だ。
……でもやっぱり綺麗だな。
という風に見たらメルに怒られるので真面目に行こう。
「話に出ていた実績は今年のルーキー魔王にだけある実績のようですね」
「試されたのですか?」
「えぇ……これは大きな意味がありそうですね」
アクィナスさんは「プレイヤー」が輩出された聖国にダンジョンを構える魔王だ。
聖都からはけっこう離れているので「プレイヤー」に遭遇することは無いらしいが、配下を上手く忍び込ませて情報収集をしているらしい。
アクィナスさんが収集した情報では「プレイヤー」が元の世界に戻るには指定された魔王とユニークモンスター、遺跡に封印されし者を倒せばクリアになるらしく、誰か他の人に倒されてしまったら別の魔物や魔王に変わるという条件が課されているということ。
例外として「プレイヤー」の誰か一人でも『原初の魔王』を討伐したら全員クリア扱いになったり、EXランクの魔王1体でも討伐できればクリア扱いになるという話を掴んだそうだ。
「俺が見た「プレイヤー」は無謀なランク差に挑んでいましたね」
「誰かに先に倒されれば探し直しですからね。何故同じ冒険者同士で争うシステムなのかは分かりませんが、早い者勝ちな分、仕方ないところもあるでしょう」
「お金がいらないとも言っていたので、ここでの活躍で別世界でお金が貰えるような感じかもしれないですね」
「なるほど……それは新しい発見です」
悩んでいる姿も絵になる。
アクィナスさんは、この世界に突如現れた未知の存在に何か思うことが大きいようで、ルーキー魔王の俺にですら話を聞きに来てくれている状況だ。
後ろのミカエルは一言も話をせず俺たちの話を黙って聞きながらメルを警戒している。
ちなみに『大罪』と『七元徳』は敵対存在だとアクィナスさんは言っていた。とんでもない爆弾発言だ。
「彼らはお金を得るためにこの世界にどうにかしてやってきたってのが目的でクリアすれば良かったけど、やはり死ぬのが怖くてどうにかしたいってところですかね」
「その線が有力ですね」
聖国が呼んだのか、別世界からやってきた先が偶々聖国だったのかで話が変わるけれど、目的は別世界でお金を得るためのようだ。
そして長くこの世界でいなくてもやっていけるように特殊スキルと成長速度上昇のオマケがついているっていう謎。
これは別世界とこっちの世界で前から繋がっている奴がいないと難しいと思うんだけどな。誰の差し金なんだろうか。
「知れば知るほど謎が多い集団ですね」
「勇者が現れた時も同じでしたね」
「そうなんですか?」
「えぇ…面白かったですよ」
勇者はこの世界から選ばれる人と今回の「プレイヤー」のように別世界から来た人間の2つのパターンがあると言う。
勇者固有のアビリティとスキルを持ち、ステータスも勇者という称号の力で増大する最強の人間。
勇者より強い人間もいるが、別世界から来た人間はいきなりこんな力を付与されるのだ。
「付与できる存在がいるってのが驚きですね」
「私たちも原初様から付与されていますけどね」
「……確かに」
そう言われれば立場と名称が違うだけで俺たちも似たような存在なのかもしれないな。
ただ俺たち魔王には別世界とかなんだかの記憶も何も無いし、魔王として生まれたという認識だから分からないんだけども…。
「勇者が1人死んでも1年以内には誕生するのも不思議な話ですね。慣れましたけども」
「頭が痛いですね」
「私は数名の勇者を倒してきましたが、別世界については語ってはくれませんでした」
「さすが最強の魔王が1人」
ちなみにアクィナスさんは勇者を怒らせるよりも、もっと強い人間が数人いるのでそっちに気を使ったほうがいいと教えてくれる。
3000年魔王やっている説得力がすごい。
「もう少しアークが落ち着いたら「プレイヤー」の中に入り込んで探ってみようと思っています」
「本当にルーキーとは思えませんね。応援しますし、もしあれでしたら私のダンジョンから聖国内に行っていいですからね」
「ありがとうございます」
魔名は相性最悪で魔物同士も喧嘩しちゃいそうだけど、主が良い人過ぎて眩しい。
まぁアクィナスさんからすれば、俺はルーキー魔王でしかないからな。
こうして「プレイヤー」についての情報交換会は想像以上に盛り上がり、ちょっとした勇者の情報なんかも教えてもらったりして、凄い得した時間になった。
◇
――『罪の牢獄』 居住区 果樹園
日付が変わろうとした時間帯。
ダンジョンの主人であるソウイチが眠ったのをしっかり確認し、ダンジョンの魔物たちが集まっていた。
『
「ご主人様に敵対する者が多くなってきました」
その魔物たちの中心にいるリーダーはポラールだ。
実力的にも纏める力もこのダンジョンでは一番のようなので流れでリーダーになったようで、誰もが認める『罪の牢獄』のリーダー。
だが『
「冒険者に「プレイヤー」と呼ばれる者たち、他の魔王に勇者に騎士団」
「若も頭が痛いだろう」
「ますたー毎日忙しそうで寂しい」
「ん~、夜忍び込んでも熟睡してるからな~」
「私が作っている魔法の果物たちをたくさん食べてドーピングしてますけど、毎日悩み過ぎて疲れてますね」
ダンジョン居住区でレーラズが常に管理して作っている果物たちは食べると一瞬で元気になり、体力も魔力が回復して活力も漲るけど、取りすぎると数時間後しんどいというドーピングフルーツなのだ。
ソウイチは自分たちの脅威になりそうな存在全てに対して常に策を考えようとしつつ、アーク発展のために走り回っており、魔物たちは忙しすぎて大変だと声をかけるも止まらないので今日の会議が開かれたのだ。
「本来魔王ならばゆったりと構えているのが一番なのです」
「我らの力働きが不足していると?」
「そいつは大変そうじゃの~」
「いえ…恥ずかしいですが我々ではご主人様の仕事を毎日こなすことはできません」
まずソウイチが何を何のためにやっているのか魔物たちは完全に理解できていないので魔物たちが代わることはできないと判断するポラール。
他の魔物たちもポラールの意見に賛成なのか反論はしない。
「ですが1日ならば明日にでもやれるはずです!」
「「おー!」」
ポラールの力強い宣言にメルクリウスとガラクシアが勢いよく声を合わせる。
阿修羅や大蝦蟇、レーラズにルジストル辺りは今日の話のオチが見えて苦笑している。
「明日はご主人様をのんびりさせる係をローテーションで行い! 他の者は全力で働きましょう!」
「「おー!!」」
誰もポラールに逆らえないので有無を言わさない空気と共に、会議と言うよりもポラールの宣言会は20分ほどで終了し、各々は明日の予定を伝えられ次第去っていった。
今日も『罪の牢獄』は平和なようだ。
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