第14話 ルビウス『制圧』作戦終了


 ガラクシアと阿修羅はアヴァロンに近づくと互いにデバフが凄いことになると言うので、俺だけ眠っている領主を背負ってアヴァロンの所へ向かった。


 轟音が鳴り響く戦場に到着すると、まともな足場は存在せず、草木は全て枯れ果てており。そこら中燃えている場所に着いた。


 構え的に『無限の彼方までケラノウス届く雷霆・ヤケレ』を放っていたであろうアヴァロンが俺に気付いたのか手を止める。


 『無限の彼方までケラノウス届く雷霆・ヤケレ』は相手が遠くにいる限り何発も撃ち続けるから逆に相手が心配だな。


 視線を炎と煙で覆われている箇所にやると、上半身が吹き飛んでいるような見覚えのある鎧の下半身がある。



「殺すなって言ったんだけどな」



 アヴァロンは指示を無視するなんて余程のことなんだろうと思うんだけどな。

 そんだけ強かったってことかなって考えていたら、巨大な火柱が師団長さんの所で上がる。


 アヴァロンは火柱に視線を向けている。


 火柱が消えると元通りになった師団長さんが剣を構えていた。



「はぁ…はぁ…これで3度目か、まさか一撃でやられるとは思わなかったよ」


「蘇れるのか?」



 阿修羅のスキル説明で復活させられるスキルを持つのは魔物でも4体しかいないらしいのに、こんなところに持ってる奴がいるなんてな。



「これが『太陽ザ・ソル』だよ。負けるわけにはいかないんだ」



 肩で息をして疲弊の色を隠せていない師団長さんが言う。

 団長クラスになると上半身吹き飛んでも再生するのか。



「君たちは何が目的なんだい?」


「そっちこそ俺たちにあんなことしといて何がしたいんだ?」



 俺は領主をアヴァロンの横に転がしながら、アークに出されたルビウスからの条件と騎士団員がアークでやった行為について話をした。


 師団長さんは途中から苦い顔をし出したところを見ると、まったく聞いていなかったんだろう。

 特に騎士団員がアークでやった行為はショックなようだ。



「団員がした行為は許されない行為だが、それでここまでのことを?」


「帝国では舐められたら終わりなんだろ?」



 この言葉は帝国でよく使われるらしいので言ってやったけど間違いとは思わない。1つの街を預かり、魔物たちの王である立場から誰かに舐められることがどれだけのデメリットに繋がるか知っているつもりだ。


 最初の戦争で『銅』に勝たなければ歴史に残るような笑われ者になっていただろうが力を見せた今、そんな噂は聞かないし、俺に挑もうってやつも同期で聞いたことはない。



「だとしてもやりすぎだ」


「俺たちからすればそれほどのことをされたってことだ」


「それに……貴方は人ではないな?」



 さすがに気付かれたか。

 まぁこれも予測済みだし、アヴァロンみたいな魔物を普通の召喚士が契約できるわけないしな。



「この領主は師団長さんみたいに復活するのか?」



 アヴァロンが大剣を領主に向ける。

 一応聞いてみたが確実に復活はしないだろう。

 諦めたように師団長さんは剣を納める。



「アークの戦力を見誤った僕らの負けか」


「別に皆殺しなんて考えていない。ただ話をさせてくれ」



 俺は師団長さんを館に呼び込んで話をする準備をすることにした。







――ルビウス 領主館 会議室



 師団長さんが自分らの敗北を認めてくれ、この街で今起きていられた第7師団のトップ2人と話をすることにした。

 2人とも凄く落ち着いているし、こっちのアヴァロンと阿修羅を見ても動じることなく座っている。


 俺はアークが帝国に出せる物や金銭についてだったり、独自の法を続けていく理由についても話をした。



「これがアーク側からの条件ってことですね」


「これ以上は妥協できないということだね」


「そうです。最南端の街でできるのはここまでです。庇護下に入っても助けに来られないような街にこれ以上望まないでいただきたい」



 2人ともルジストルが用意していた資料をしっかり読み込んでくれているようだ。

 ここまで来たら認めるしかないだろう。

 それに領主は起きたらこっち側の人間になっているので条件を飲むしかないんだが、2人には聞きたい話がある。



「まったく関係ない話を聞いてもいいかな?」


「なんだい?」


「聖国で急激に増えた自分を「プレイヤー」って呼んでる連中についてだ」


「最近帝国にも領土にも来ている冒険者たちですね」



 2人とも知っていることを話してくれた。

 共通で空間魔法を使えたり、通常の人とは思えない成長速度を持っていたりと変わった力を持っており、元の世界に戻るために戦っているそうで、その条件は「プレイヤー」全員が同じではないらしい。



「さすが情報が早い」


「どうして気になるんだい?」



 俺はアークにあり方について話をした。

 亜人や魔族だろうが受け入れて、みんなで楽しく暮らしていきたいと。

 もし「プレイヤー」と呼ばれる冒険者たちの目的が俺たちに悪影響を与えるようなものならば対策したいと伝えた。



「多くの「プレイヤー」は魔王を倒すことを目的としているね」


「決められた魔王の情報を各地で集めていると聞いています」



 魔王を倒すだとか指定された魔王を討伐することが目的の奴らが多いってことはもしかしたら俺を狙う「プレイヤー」もいるってことか。

 それともSランク以上のダンジョンを攻略しなきゃいけないとかなのかな?



「今回は僕らの負けで、言われた通りの報告資料も出すが君も気を付けたほうが良い、魔王が表に出過ぎると我々も黙っていない」


「気付いていたのか」


「そこの2人は通常の魔物とは比べ物にならないオーラを感じるからね」



 師団長さんはさすがに魔王だってことも気付いていたか。

 でもここまで来ただけの情報を得ることができた。

 

 俺は条件をしっかりと決めて、目覚めた街の人たちを確認し、領主にもしっかり条件を認めさせて終えることができた。

 

 急に俺に対して人が良くなったような領主にさすがに疑っていたが、ガラクシアの力は魔法じゃないから気付くのは難しいし、気付けても解除するにはEXランクの力が必要だから今はできないだろう。


 

 こうしてルビウス制圧作戦は『枢要悪の祭典クライム・アルマ』5体の力技で被害無しで最高の戦果を得ることができたから大満足だ。


 ここから第7師団の方々は忙しいし、怒られるんだろうが俺たちに喧嘩を売ったってことで頑張ってくれ。


 もし帝都から他のアルカナ騎士団は来れても1師団だろうから対策を練らないとな。








――『罪の牢獄』 居住区 果樹園



「結局みんなの力押しに頼っちゃったな」


「そのために私たちは居るんですから」


「ますたーが考えてくれた作戦だよ」



 果樹園にGランクとルジストル以外の全ての魔物を集めている。

 コアルームではリーナとルジストルがイチャこらしてるだろう。

 

 ちなみに俺は虎蜘蛛が乗せてくれると言うので上に乗り、カーバンクルを撫でながら話をしている。



「配合で変わったばかりの阿修羅とレーラズもご苦労様」


「これだけの面子に囲まれれば自然と力が入るものさ」


「私は待ってただけ」



 俺はみんなに労いの言葉をかけた後に、今後の方針を話す。

 アークをどういう流れで大きくしていきたいのか、「プレイヤー」についてどうしても気になることがあるっていう話をして、今後も外に出ることが多くなるかもしれないってことを伝えた。


 そしたら虎蜘蛛やシンラが俺たちも連れてけと怒り出したので、しっかり約束した。


 なんとか帝国との関係も最悪まで至らずにルビウスがこっちの思惑にある程度乗ってくれつつ帝国から守ってくれる隣町になったので安心してやりたいことができる。



「とりあえず今日は休むか!」



 今日は休んで明日から頑張ろうかな。


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