第5話 罪たちの『祭典』
アウラウネが配合アイテムを物色してから20分が経ち、ようやく大満足というようにアウラウネがアイテムを渡してきた。
「これできっと全力で仕事せずに済むはずです♪」
「どんだけ働きたくないんだよ」
「この果樹園だけでいいんですよ」
まぁ元々この果樹園を頼んでいたから、後から色々追加してしまった俺が悪いのかもしれないけど、ここまでやりたくないものなんだろうか。
「ちなみに真名はいる?」
嫌と言われても渡すつもりだけど、一応軽く聞いてみる。
「今後の働きに関わるかもしれませんね」
そこはしっかりしてるんだな。
アウラウネはアークの生命線だし、このまま頑張ってもらうため月2体にまでつけれるようになった真名を授けてもいいと思っている。
問題はどんな真名にするかだけど、全然浮かんでこない…。
けっこう期待してる目をむけられてるのがまた困る。
「……『レーラズ』」
「あんまり可愛くない名前ですが、せっかくマスターが考えてくれたので貰っておきますね」
真名を授けると同時に配合を始める。
ちなみにレーラズが選んだアイテムはこんな感じの実にらしいラインナップであった。
1.魔名カード『創造』 ランクSS
2.魔名カード『守護神』 ランクSS
3.魔名カード『大罪』 ランクS
4.聖魔物『夢幻の枕』 ランクEX
まさか枕を選んでくるあたり全力でサボりたい思いがよく見える。
守護神はきっと果樹園だけの守護神をしたい願望から選んでいるんだと思うけど、『大罪』を選択しているのは少し意外だな。
4つのアイテムがアウラウネに身体に吸い込まれていく。
大きな花の中にいたアウラウネが花ごとどんどん大きくなっていく。
気付けば花は見上げる高さまで伸びてしまい、俺の目の前には立派で巨大な樹が生えていた。
【永遠世界樹ユグドラシル】 世界樹 ランクEX Lv945
真名 レーラズ 使用DE??
ステータス 体力 EX+99 物理攻 SS+45 物理防 EX+99
魔力 EX+99 敏捷 S+39 幸運 EX+99
アビリティ ・『
・『
・『
・世界を見守る母なる樹 EX
・楽園の花畑 EX
・森羅万象大自然理 EX
スキル ・『
・『
・極大地魔導 EX
・極結界魔導 EX
・世界樹の権能 EX
・夢幻花粉 EX
アウラウネ+SSランク以上守護系統魔名+SS魔名+大罪+夢幻の枕
・『
・てっぺん付近に咲いているアウラウネは実は自由に動ける。動きたくないという思いが極限まで高まって生まれた魔物。
「嘘だろ」
「ふふっ…これでお外で働けなくなってしまいましたね」
根っこ付近に突如咲いた花から現れたいつものアウラウネの姿をしたレーラズ。
他の『大罪』たちと同じでぶっ飛んだ能力を持ってる。そして何より他の奴らと違うのは味方にデバフをかけない点が素晴らしい!
これで誰かと共闘できると思いきや果樹園から動けるのは本体の身体だけしか動けない罠。
「作戦通りってわけか…これからも頼むよレーラズ」
「真名で呼んでいただけるのはこの上ない幸福ですね。よろしくお願いしますマスター♪」
一気に2体も増えたし、そろそろあれをやらねばなるまいな!
◇
――『罪の牢獄』 居住区 果樹園
その日の夜。
ダンジョンは閉鎖され冒険者がいないことを確認し、俺は『大罪』の力を司る6体を呼んで果樹園に集合している。
果樹園である理由はレーラズが動きたくないからだ。
「集まってもらったのは今後の方針と、みんなの呼び名を決めておきたいからだ」
「方針はある程度伺っておりますが、呼び名とはなんでしょう?」
代表してポラールが尋ねてきてくれる。
この6体のリーダーはなんとなくポラールってことになっている。たぶんだけどタイマンで一番強いからっていうのが理由になってる気がする。
「みんなも知ってると思うが、次戦う敵にアルカナ騎士団っていう集団がいる」
「……若的にはここにいる6人にもその騎士団のような名をつけたいと?」
「さすが阿修羅! 察しが良いな!」
俺のテンションの高さに真面目なポラールと阿修羅は少し呆れ気味。
メルとガラクシアは楽しそうにしてくれていて、アヴァロンは元々感情が読めないのでいつも通り、レーラズは眠っている。
「これからも『大罪』の力を持つ仲間は増えていくと思ってるから決めておけばカッコいいと思うんだがアイデアある人!」
「はーい!」
「ガラクシア!」
「マスター大好きモンスターズ!」
「恥ずかしいから却下!」
そんな名前つけたら他の魔王からとんでもない目で見られそうだからやめといてほしい。
ガラクシアとメルはその名前で賛成なようだが、さすがに俺が精神的に生きていけないので他を考えてもらう。
ポラールと阿修羅はどこまでも真面目で共通点である『大罪』を含めたような言葉にしたほうが良いという模範解答をいただいた。
かなり悩ましいがどうしたもんかね。
「ますたー。私たちに遠慮せずにますたーが考えたやつがいい」
「若が考えたものなら俺たちに文句などないさ」
「確かに…それが一番いいかもしれませんね」
メルの天使のような一言で一気に俺への視線が集まる。
なんかお腹痛くなってきたな。
「難しいな…みんなを一言で表すのってなんだろうか?」
「大変だねーマスター」
いつの間にか起きていたレーラズが笑っている。
ゆっくりと俺の後ろまでデカい根を伸ばしてきて、自分は動かずに俺の真後ろまでやってきて微笑んでいる。
「なんかいいの案ある?」
「ん~、私たちってみんなで戦うと弱くなっちゃうけど、普段は仲が良くて集まるとお祭りみたいになるのが特徴ですかね?」
「お~、真面目だな」
「早く解散してほしいから頑張ります♪」
「それは言わないでほしかったよ」
まぁ気持ちは分かるけどそこは真面目にいってほしかった。
でもレーラズから良いヒントを聞けたから1つ思いついた。
「『
「主人が決めたなら我らはその名に恥じぬようにするだけだ」
「かいさ~~~ん!!」
特に大きな感想も無く。
レーラズの解散宣言で各々散っていく。
なんだか悲しくなってきた俺の背中をレーラズがさすってくれる。
「ますたー、みんな興味が無いってわけじゃなくて、改めて頑張ろうって思ってるよ」
「…本当か?」
「マスターが真剣なんだもん。私たちはその意志に全力で応えるためにいるんだからね! もちろんレーラズちゃんも!」
「レーラズ~!」
「きゃっ!…ふふっ、今日はここで添い寝してあげますね♪」
一瞬仕組まれた罠かと思ったがそんなことわざわざする訳ないかと思い、レーラズの提案を受けて、なんかキラキラ光るものが俺の周囲を舞っているのを見て、俺は意識を失った。
◇
翌朝。
隣でスヤスヤ眠るレーラズが最初に目に映る。
花がベッドみたいになっていて寝心地も良かったというか異常に身体が軽い。
なんかやってくれたんだろうなーと思いながらレーラズに声をかける。
「おはよう、降りても大丈夫か?」
「ん~おはようです、マスター。今日も頑張ってくださいね」
「レーラズも頑張ってくれ」
「今の私が頑張ったら『罪の牢獄』が魔物植物まみれになるかも!?」
「な、なんてこった…」
「ふふっ…そんなことしないですよ♪」
朝の軽いやり取りをして果樹園をあとにする。
結局俺の身体に何をしてくれたかは聞けなかったな。
また会ったらしっかりお礼をしないといけないな。
俺はそろそろ来るであろう帝国からの返信への対応を考えながら歩きだした。
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