第4話 ぶれること無き『阿修羅道』


 とにかく頭が痛い。


 阿修羅を迎え入れるためにゴブリンたちと楽しく朝方まで宴をしていたはいいが、まさかこんなに響くまで俺も飲んでしまうとは油断した。


 なんとか部屋に戻ってこられたようで、ベッドの上にはメルとカーバンクルが一緒に寝ている。

 とりあえず2人とも可愛いので抱きしめて撫でておく。


 するとカーバンクルが目覚めたので、体調不良の解決をお願いする。



「カーバンクル…俺を助けてくれ」


「きゅ~~♪」



 カーバンクルのお腹にある赤い宝石と両目が輝く。


 すると頭痛と気怠さは消えて快調になった。

 最高の魔物だよ! カーバンクル最高!



「ありがとう! お前は良い子だな」


「きゅ~~♪」



 少し痛かったかもしれないが強く抱きしめてたくさん撫でてやる。

 鳴き声も撫でた時の表情も可愛すぎてたまらん。


 少し撫でると部屋から出ていったので虎蜘蛛かアウラウネのとこにでも行ったんだろうな。


 俺は眠り姫であるメルを起こす。

 人間形態で寝ており可愛らしいパジャマを着ているメルを起こしたくもないが、起こさずに放っておくと少し拗ねるので起こしておく。



「おはよ、ますたー♪」


「おはようメル、酔った俺を運んでくれたりしたのか?」


「そうだよっ」


「…ありがとう」



 少し一緒に横になって髪を梳かすようにしてゆっくり撫でる。

 とても気持ちよさそうになされるがままにされているメルに聞いておく。



「まだ寝るか?」


「ん~、起きる」



 メルがスライム形態となり少し小さくなって俺の頭の上に乗っかってくる。

 全然重さを感じないからいいんだけど、髪がべたつかないのは何かの魔法でも使っているおかげなのか?


 







――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム



「さすが鬼の一族なだけあって酒は強いんだな」


「ギャッ」



 俺は阿修羅を呼んで配合の準備をしていた。

 俺の倍は飲んでいただろうにピンピンしている阿修羅に少し驚いたが、鬼ってのは酒に強いって聞いていたからな。

 ガラクシアあたりと飲んだら楽しめるんじゃないかな。


 配合アイテムを机に並べて阿修羅にいつもの条件を伝えて選んでもらう。


 

「遠慮せず好きなもの選んでくれ」



 選び始めてまさかの1分ほどで選び終わった阿修羅。

 しっかり決意をした目をしているので何も言わなかった。


1.魔名カード『第六天魔王』 ランクEX

2.魔名カード『天魔覆滅』 ランクEX

3.魔名カード『大罪』 ランクS

4.聖魔物『浄瑠璃』 ランクEX



 画面をタッチして配合を開始する。

 1カ月ぶりくらいに見た少し懐かしい感じもする演出をみる。4つのアイテムが光となって阿修羅に吸い込まれていく。


 そして何故か阿修羅が持っている2本の剣と1本のナイフが浮き上がっていた。



『確認:超変異が発生しました。配合を続けます』



 この流れはポラールと同じ流れだな。

 浮かび上がった3つの剣が阿修羅に突き刺さる。

 え? 死んじゃうとかないよな?


 元の小さなゴブリンから俺よりも20㎝ほど大きな豪快な和装をした長い白髪の黒鬼が現れた。

 背中に『仁義』の文字が書かれた色鮮やかな和装を身に纏い、黄金に輝く2本の角がとっても目立っている。



 【大嶽丸】 鬼神族 ランクEX Lv999 真名 阿修羅 使用DE?

 ステータス 体力 EX+99  物理攻 EX+99  物理防 EX+99

       魔力 SS+92  敏捷 EX+99  幸運 EX+92

アビリティ ・『天下に轟くシュタルク暴虐の武神シュラーゲン

      ・三明の神剣 EX

      ・大武天鬼嶽道 EX

      ・天地悪路王 EX

      ・頂きの武 EX

スキル  ・『暴虐フォルテ』 EX

     ・鬼神の剣技 EX

     ・神通力 EX

     ・天下風雷ノ陣 EX

     ・顕明連黄泉帰りの儀 EX

     ・四天阿修羅王 EX


超変異必須 鬼族+大罪+『天魔覆滅』+魔王系統EX+『浄瑠璃』or『ソハヤノツルギ』


・『暴虐フォルテ』の大罪を司る鬼神。極限まで高められた武技でいかなる守りも粉砕し、三明の神剣と神通力を使用し攻防ともに隙のない近距離戦闘特化の魔物。近接能力以外許しませんマン。

・4体しか存在しない自他を蘇らせるスキルを所有していたり、まったく同じ強さの分裂を3体作ることができたりとスキルも豊富。

       


 完全にポラールと同じ流れでEX+超変異のヤバいパターンだった。

 そしてさすがにここまで来ると『大罪』の力が見えてきた。

 

 ①魔物に適切なものがあった場合それを選びやすくさせる。

 ②レベルとステータスが配合時にその魔物最大まで上がる。

 ③アビリティとスキルランクが配合時に最大になる。

 ④アビリティとスキルが敵味方関係なしになりやすい

 ⑤真名をあげていると成功率あがる?



 ここらへんが推測されるな。

 これが本当だったら『大罪』は、こと配合に至ってはデメリットが気にならないくらいメリットに溢れた魔名ってことになる。


 ⑤は今のところ配合前か配合中に真名を授けているからなんとか上手く行っている説があるので、そう思っているだけだ。


 阿修羅は立派な煙管を咥えながら落ちついた表情をして俺を眺めている。

 言葉を交わせる男魔物第2号はありがたい。



「改めてよろしく頼むよ阿修羅」


「若、任せてもらおう」



 また1人最強の魔物が仲間になってくれたのでダンジョンを見直さなきゃいけないな。

 阿修羅はさっそく散歩に出かけてしまった。たぶん挨拶まわりだろう。


 とりあえずもう一体配合できるのは置いといてコアでエリアを弄ろうかな。



「あれ? さっきは無かった実績プレゼントが来てる」



1.5体目のEXランク魔物支配下記念 【魔名配合回数+1 総計真名付与回数+1】



 俺からすればとんでもない報酬がそこにはあった。

 これで月に2回の配合に『大罪』が使える!

 まぁ魔物が使いたいって言った場合はだけども…。


 それにしてもEXは5体目から実績があるだなんて、何か仕組まれているような気がしないわけでもないな。

 クラウスさんたちがたどり着けなかった場所が俺に到達できた理由はまったくもって分からないが何か訳がありそうだけど、『大罪』のおかげとしか言えない。



「まぁ今考えても仕方ないか」



 阿修羅が散歩から確認してもらえばいいが、今のうちにエリアを1つ追加しておくか。

 阿修羅もやはり『大罪』の影響なのか単体で戦うことが前提みたいな能力で敵味方関係なしデバフやダメージを与えてしまうので困ったものだ。

 

 そして残り1体できる配合枠。

 待つべきか今のうちにやってしまうべきか悩ましいところではある。

 隣町とのやりあいが始まる前に戦力拡大させておくのが一番か。



「誰か配合してほしい奴はおらんかね」



 俺はある魔物を説得するために席を立った。








――『罪の牢獄』 居住区 果樹園



「そんなに私にやってほしいんですか~?」


「あぁ…まぁ単体でここを任せている以上、アウラウネにも強くなってほしいんだ」


「強くなる保証はないとおっしゃっていましたが」


「今のところは弱くなった魔物はいないけどな」



 アウラウネとしては強くなってこれ以上仕事が増えるのが嫌だったり、今やっていることができなくなるのが怖いとのことだ。


 納得できる理由だけどさらに伸びればダンジョン的にもアーク的にも大きな一歩になると思っている。

 


「…はぁ~絶対仕事増やさないでくださいね」


「増えたとしても果樹園関係だけにしとくよ」


「不貞腐れて枯れちゃいますよ」


「毎日水あげにくるから許してくれ」


「言質はとりましたからね♪」


「……ちくしょう」



 かなり渋々ではあるがなんとか配合を許可してもらった。条件つきだけどな。

 そして動きたくないから果樹園で準備してほしいと言われたので、コアを呼び寄せて机を出してアイテムを並べていく。


 配下の魔物に全力で気を使う魔王ってのも何か感じるものがあるが、これでアウラウネが頑張ってくれるなら安いもんだな。


 いつも通りの説明をすると、ゆったりとアイテムを物色するアウラウネ。


 かなり面倒くさそうだがきっと自分に合ったものを選んでくれるだろうと思って俺は見守ることにした。


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