第3話 ゴブリン界の『英雄』
アルカナ騎士団の情報をギルドマスターから仕入れることができた。
頭の中が情報塗れで爆発しそうだけど、とりあえず『罪の牢獄』のコアルームに戻ってきた。
そして! お待ちかね! 前回の配合から1カ月が経ちました!
待望の配合タイムに入れるわけだ。
ここまで来たら配合してほしい魔物とGランクの魔物を全種類配合していこうかなと思っている。
ひと月で2体までしかできないから、いつ終わるか分からないけどな。
何故かアウラウネには配合をまたまた断られてしまったので候補を考えなければいけない。
俺の中では「フレイムリザード」「カーバンクル」「一角ウサギ」「スケルトン」「ゴブリン」「血吸い蠅」がダンジョンに生息していて、まだ配合をしていない魔物たちのリストだ。
フレイムリザードは敵が来たら全力で頑張ってくれるが戦い以外興味が無くて、戦闘時以外は寝ているので配合してほしいか聞いてもあまり反応は無かった。
カーバンクルはこの姿が変わるのが今は嫌らしいのでアウラウネと同じ感じだ。
「Gランク勢は聞いても返せない魔物ばかりだからな」
最古の魔王様(星魔元素以外)たちとはメッセージで何度かやりとりをしていて、クラウスさんが俺と同じEXランクを4体所持しており、これ以上は増えそうにないらしいという話を聞いていて実はEXランクの配下は4体まで説があるから気楽に行こうと思う。
俺に4体いることは内緒だけど、5体目も奇跡的にできてしまったら絶対秘密にしなくちゃな。
このダンジョンで何気に先陣を切って大活躍をしてくれるゴブリンたちを見に行ってみるか…。
◇
――『罪の牢獄』 1F 洞窟内部
俺は冒険者がいないことをしっかり確認して第1Fに来ている。
罠がメインのフロアでスケルトンやゴブリン、スライムが生息している。
ゴブリンが集落らしきものを何個か作っているので差し入れを持って一番デカそうな集落に入ってみる。
さすがのゴブリンも魔王である俺は理解できるようで安心している。
「元気にやってるか~?」
「ギャッギャッ!」
何体かのゴブリンが出迎えてくれた。
軽い武具を冒険者から手に入れたんだろうな、しっかり装備している。
1Fは罠で有名だから、魔物に構わず突き抜けていく冒険者が多い中、頑張って仕留めた戦果だから俺も誇らしい。
俺はゴブリンに肉の差し入れを渡して、今一番強いゴブリンを呼んできてほしいと頼んでみる。
「俺の言うことはある程度理解できてると思うんだけどな…」
少し待つと奥から他のゴブリンとまったく違う色をした個体が現れる。
聞いたことはあったけど、まさか実在するなんてな。
「黒いゴブリンか…」
極稀に生まれる色違いの魔物。
ランクやアビリティ、スキルは同じなんだけどステータスが少し高くなって生まれてくるのが色違いモンスター。別名ではユニークモンスターだとかなんとか。
なるほどこれがこのダンジョン最強のゴブリンってわけか。
黒いゴブリンは俺に挨拶の意味も込めてなのか骨を渡してくる。
きっと自分が戦い勝利した強者の骨なのだろう。
俺はありがたく受け取り配合についての説明をする。
「もし配合をしたらどうなるかは分からない。鬼ではいられると思うけどな」
黒いゴブリンは悩んでいるようだ。
仲間と離れたり今の自分が気に入っているからかもしれないな。
それにしてもナイフを含めると背中に2本と腰に1つで3つも武器を持ってるなんてカッコいいじゃないか。
「ギャッギャッ!」
他のゴブリンが喜んでいるような表現で踊りだす。
それにつられてか他のゴブリンたちも跳ねたりして喜んでいる。
黒いゴブリンもそれを受けて何か決心したような雰囲気を感じる。
なるほど戦士の送り出しってわけか、ならばもっと盛大にしてやらないとな。
「よし! 今日ダンジョンが閉まって冒険者がいないことを確認できたら祝いの宴をやろう! 色々渡すから皆で準備をしといてくれ! もちろん俺も来るからな!」
「ギャッギャッギャッ!」
俺はDEを使用してお肉セットやら酒やらいろいろと集落の中央に呼び出した。
もしこの集落が陥落したらそれまでだったというわけで諦めるとするけど、生き残っていたら楽しみにしておこうかな。
「頼んだぞ」
俺はそう言い残してゴブリン集落を去っていった。
◇
あれからルジストルやリーナと帝国騎士団の話を共有したり作戦を詰めたりした。
そして時刻は夜の22時になりダンジョンに冒険者が入ることができない時間になった。
どこかに潜んでいる可能性はあるけど、ポラールが大丈夫って言っていたので安心だ。
コアルームのモニターを見てみると、集落じゃなくて、階層全てのゴブリンたちが宴の準備をしている。
素晴らしいじゃないか。
俺はゴブリンたちの下へ行く。
なんだか知らないけど宴を言い出した俺が緊張している。
「ギャー! ギャッギャッ!!」
俺の姿が見えたからか見張りのゴブリンが叫ぶ。
すると集まっていたゴブリンたちが地鳴りを起こす勢いで祝福を表現しているのであろう踊りを表現してくれた。
黒いゴブリンを注目させるように踊るゴブリンたち。
黒いゴブリンが盃を前に座って俺を待っているようだ。
「なんだか燃える展開だな」
俺は黒ゴブリンのところまで行き対面に座る。
黒いゴブリンは目を閉じて何かを待っている。
魔王を試すだなんていい度胸してると思ったけど、巨大な覚悟を感じた俺は深く息を吐く。
横からゴブリンが酒を持ってきてくれる。
「なるほどな……契ろうじゃないか」
わざわざ俺の用意した酒を、自作したのか瓢箪に入れ直してある。
黒いゴブリンの前にある盃に酒を注いで、そして自分の盃にも同じくらいの量を注いでから黒いゴブリンに聞こえやすいように、酒の入った瓢箪を音が聞こえるように置く。
周囲のゴブリンたちは踊るのをやめて静まり返る。
すると黒いゴブリンは盃を両手で持ち、顔のあたりまであげて俺を見つめる。
俺は盃を片手で持ち、黒いゴブリンが持つ盃と同じ位置まであげる。
「このダンジョンと街を守るために、俺たちと一緒に歩んでくれ」
「ギャッ」
「ここから先降りかかる苦難をお前の力で切り開いてくれ」
「ギャッ」
「その命……預からせてもらうぞ『阿修羅』」
「ギャッ!」
――カンッ!
盃を交わすと同時に黒いゴブリンに真名を授ける。
勢いかもしれないけど、今まで配合したどの魔物よりも違う方向での強い覚悟を感じたから授けた。
守ることに特化したアヴァロンやカーバンクルの対になってくれるような存在になってくれたら面白いなって正直思っている。
「さぁ! 好きなだけ食いまくるぞ!」
「「「「「「「「「ギャッ! ギャッ!」」」」」」」」」
言語は違くとも、種族が違くともこんなに楽しい宴ができるというのはいいことだ。
ゴブリンたちは催しを色々やってくれて楽しませてくれる。
阿修羅も仲間たちと盛り上がっているし、俺との交流を深めようと身振り手振りで語り掛けてくれる。
多くのゴブリンが阿修羅の武勇伝らしきものを踊りで表現してくれる。
阿修羅が多くのゴブリンに慕われているのが分かるし、頼りがいのある強い奴ってのも凄く伝わってきてホッコリしてしまう。
「今日は宴を楽しんで、配合は明日の朝で良い。だから楽しめよ阿修羅」
「ギャッ!」
俺たちは体力の許す限り宴を楽しんだ。
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