第2話 お隣さんから『お手紙』ついた♪


 ガラクシアの報告通り、話を聞いた10日後。

 お隣さんって言うには遠いんだけど、一応お隣さんからお手紙が届きました。


 さっそく朝からルジストルと一緒に手紙の内容を確認している。


 とっても腹が立つ書き方だ。


 『帝都の守護が行きにくい大森林で街を守っていくのは大変だろう。陛下に誠意をみせることができるのならばその大森林の街であっても庇護下に入れてやる。まずは実態調査で我が町から兵を5日間ほど派兵するので準備をしておくように』



「なんで自分たちの庇護下に入れようとしてる人にこんな書き方するのやら」


「それは帝国は絶対的な存在だと過信しているからでしょうな」



 基本的にはある程度のレベルだったら話を受ける方向性で行こうと思っていたが、こんな書き方されてしまうと嫌だと抵抗したくなってくる。



「今閣下が考えている展開を誘導する書き方であるとも言えますね」


「なるほど…」



 なんで俺の考えが読まれたかは置いておこう。

 わざと抵抗させてコテンパンにすることで徹底的な支配をしてやる路線もとれるって流れなのか、余程自信があると見える。



「アークは帝国最南にある場所です。これより南は山と海ですので他国に攻め込まれる可能性は少ない。それを庇護下にしてやるというのもおかしな話ですな」


「確かにな…他国じゃなくて魔王にしか襲われそうにないんだよな」


「道は整備されましたが大森林をわざわざ抜けてここまで攻めるのは難儀なもの」


「んー、襲ってくるなら帝国だけだろ?」



 こちら側のメリットが少ない気がするんだよな。

 大して意味のない庇護のために資源と金ちょうだいって言われても俺たち側からすれば疑問に思ってしまう。


 というよりアークが襲われる前にお隣さんが先に襲われるのにどうやって守るって言ってるのか分からん。


 兵士の歓迎なんてしてもアークの住民たちがストレスに感じるだけだ。

 完全にメリットが感じられない。



「今だけ従うメリットはあるのか?」


「閣下は力を蓄えた後、反旗を翻して独立なさろうとお考えでしょうが、少しの間の恭順が『罪の牢獄』とアークの発展する速度が落ちる可能性が大きいですな」


「勇者やとんでもなく強い冒険者がなかなか怖いんだよな。もし来たらの話だけど」



 まだ見ぬ脅威になる存在たちに怯えていても意味がないのかもしれないけど、「プレイヤー」って奴らもどんな奴らか分からない中、今完全に独立することが良いか悪いか…。


 俺とルジストルが交渉することで条件は緩和させてもらい、譲れない部分はしっかり主張するつもりだ。



「閣下が交渉に行かれるのはよろしくない気がしますな」


「その心は?」


「帝国騎士団が出張ってきて拘束される可能性がございます」


「じゃ~誰が行くんだ?」


「私が数人連れて参りますよ」


「拘束されるんじゃないのか?」


「殺される訳ではありません」



 ルジストルが拘束されれば裏側から戦争へ、そのままアークに返され宣戦布告なら表で戦争をする。

 交渉は一度だけでなく何回にも渡る可能性が高いのでその都度対応を考えなければいけないって感じか。



「さすがにルジストルを失うわけにはいかん」


「これでも大精霊です。そう簡単にやられません。閣下が頂点に立つまで死ぬわけにはいきませぬ」



 まず精霊ってバレた場合なんだけどな。精霊って見破れる人間がどのレベルの強さなのか知らない。

 確かにそんな軟じゃないのは理解できるけど相手の強さが見えない分怖いものがあるな。



「私はこの案が良いと思いますが…」


「帝国の狙いはドワーフとアウラウネの農産物だろう。面倒だなー」



 朝から疲れてきた。

 俺が愚痴ったタイミングでリーナが水をもってきてくれる。

 最近はリーナはアークで頑張ってくれるので新鮮だ。



「ありがとう」


「ソウイチ様は魔王の中でも突出して感情的なお方ですね」


「しょうがないだろ。他の魔王と違ってDEで復活させられないんだよ」


「そこを除いてもです」



 まぁリーナの言う通りではあると思うけど、まだBランクのダンジョンでしかない俺たちが完全に独立してやっていけるかどうか不安なんだよな。


 できるなら最低レベルの条件まで下げて軽く帝国の庇護下に入っておくのが理想だけど、さすがにそんなに条件を緩くなんてしないだろう。



「ガラクシアの力借りても良いけど、いずれバレると面倒だしな」


「帝都丸々操れれば簡単なんですがね」



 とんでもないことを口走るけど、さすがに帝都には化け物みたいな人間がたくさんいるんだろう。

 勇者ってのがいるかは不明だが、帝国騎士団ってのは実力者ぞろいって誰かが言ってた気がするからEXランクレベルが居れば危ない。


 でも理想を目指すならルジストルに行かせるのが一番か。



「まぁとりあえず返信しないとな」


「お任せを閣下」


「ちゃんと詰めてからだからな」


「詰めるのも私では?」


「やる時はしっかりやるさ」



 俺はルジストルにお隣さんの件は一回任せることにした。

 

 個人的に気になったし街に情報収集でも行こうかな。







――迷宮都市アーク 南 冒険者区域 冒険者ギルド ギルドマスターの部屋



「すまんな時間作ってもらって」


「この街の真の主とやらの願いでは仕方あるまい」



 俺は一番情報を知ってそうな人物。ギルドマスターのオプールに気になったことを聞きに来ていた。

 お隣さんについては詳しくは知らないようで、そこそこ大きいが帝国南部にある数少ない街だから大事にされているらしい。


 

「んで俺が一番聞きたいのは帝国騎士団なんだけど」


「アルカナ騎士団か」



 アルカナ騎士団なんていうカッコいい名前付いてるな。

 きっとカッコいい名前に見合う実力は兼ね備えているんだろうな。



「逆によくアルカナ騎士団を知らずに帝国で生きてきたな」


「この街以外興味なくてね」


「まぁーいい。アルカナ騎士団は11の師団からなる軍勢で基本は帝都におるが各師団ごとで帝国で起きる様々な問題に動いとる」


「11の師団ね」


「各師団の団長と副団長が戦力の大半だ。アルカナ騎士団は実力で選ばる選定方法だから化け物揃いだぞ」


「やっぱりそうなのか」



 アルカナ騎士団で警戒するのはつまり22人の団長・副団長ってことね。

 オプールの話では副団長と団長でも実力差がデカいってことだ。


 11人の団長をどう対策するかってことが重要なんだな。

 でも帝国には独立している迷宮都市が数個ある。その迷宮都市と同じくらい知名度と冒険者の数が居れば放任してもらえるってことだが、アークはまだそのレベルにないから仕方ないな。



「アルカナ騎士団の詳しい力は知らんが1~3師団の団長は「天下三帝」と呼ばれているヤバい奴らだ」


「一生会いたくないな」


「まぁ奴らが出張ってくることはないだろう。こういったことには副団長が出張ったり師団丸ごと出てきても6.7.10師団のどれかだろうな」


「なるほどさすがギルドマスターよく知っているな」


「これくらいなら誰でも知ってるさ。まぁ良い情報として団長・副団長が皇帝から貰っている二つ名でも教えておくか」


「おぉ! カッコいいなそれ!」


 

 オプールからアルカナ騎士団の二つ名を教えてもらえた。


総司令 帝国皇帝クピィトゥス・ガイストス『皇帝ジ・エンペラー

第1師団 団長『世界ザ・ワールド』 副団長『運命の輪フォーチュン・ロール

第2師団 団長『女帝ジ・エンプレス』 副団長『魔術師サ・マジシャン

第3師団 団長『正義ジャスティス』 副団長『ラ・フォース

第4師団 団長『教皇ハイプリースト』 副団長『死神ザ・デス

第5師団 団長『審判ジャッジメント』 副団長『吊された男ハングドマン

第6師団 団長『ザ・ムーン』 副団長『悪魔ラ・デビル

第7師団 団長『太陽ザ・ソル』 副団長『ザ・タワー

第8師団 団長『節制ザ・テンパランス』 副団長『隠者ハーミット

第9師団 団長『女教皇プリーステス』 副団長『恋人ザ・ラバース

第10師団 団長『ザ・スター』 副団長『戦車ザ・チャリオット

第11師団 団長『愚者ザ・フール



 みんなカッコいい名前を持っているようだな。

 覚えきれる気がしないが、この中の誰かが出張ってくるってことなのでルジストルに共有しておかなきゃな。


 オプールに帝国についての話をたくさんしてもらい、オプールの時間が許す限り情報収集をさせてもらうことができた。


 さて! あれから1カ月経つし! 確認しておくかな。

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