第17話 終わりを告げる『鐘の音』
転移魔法でダンジョン入口少し進んだ火山道に来た。
あの玉座があった場所に行ってもいいが誰もいない可能性があったので入り口から破壊していくことにした。
各々の暴れる場所は事前に「紅蓮の蝶々」が詳しく地図で教えてくれたので把握済みのはずだ。
何かあれば「紅蓮の蝶々」と「赤刃のビエルサ」が街中へ先に跳ばしているので対応できるはずだ。
そろそろダンジョン侵入者が入ったことがコアルームに鳴り響くだろう。
進入禁止時間に入ってくるルーキーに怒り狂ってくれれば面白い。
「さぁ! 頼むぞ皆!」
「「「はーい!!!」」」
ガラクシアとメルはそれぞれの目的地の場所へと去っていった。
そしてポラールを見ると見たことも無いような晴れやかな笑顔で火山を眺めていた。
「今日は本気で暴れても良いんですよね?」
「たくさん我慢させたからな、好きにやってくれ」
「ゾクゾクしちゃいますね!」
――ゴウゥッッ!!
ポラールから溢れ出る絶大的な魔力と闘気。
そして同時に展開される漆黒に輝く12枚の羽と地獄の輪と呼ばれる頭上に浮かぶ赤黒い歪な輪。
俺にだけは負担にならないように対象外になっているんだろうけど、ポラールが本気になった瞬間、俺たちに近づいてきていた魔物は消し飛んでしまった。
――ゴゴゴゴゴゴッ!!
火山が震えている。
ポラールから放たれる圧倒的な威圧感がダンジョンそのものを恐れさせているんだろうか、そんな意味合いの震えに感じる。
「『
誰も地獄からは逃れられない。俺も少し逃げたい。
◇
――「ヴァルカン」 鉱山地帯
「魔物だぁぁぁぁ避難しろぉぉぉ!」
早朝から稼働する鉱山現場で響き渡る避難指示の怒号。
そこでは『豪炎火山』序盤で出てくる魔物たちがどこからか転移してきて鉱山を荒らしていた。
それを空から見下ろすガラクシア。
ソウイチに住人を殺すなと言われているので荒らすついでに住人を追い出すために奥地に魔物を転移させた。
どんどん逃げていく鉱山で働いている者たち。
騒動を聞いて冒険者たちが高山地帯に入ってくるが結界に遮られて入ることができない。
ガラクシアは誰も出てこなくなり、魔物の気配しかしなくなったのを確認して、今まで試せなかった魔法を試そうと魔力を溜める。
早朝なのでガラクシアの全力を出すには程遠い時間だが仕方ないと思いながら頭の中で使いたい魔法を整理していく。
「星天魔導『
天に巨大な魔法陣。
そこから恐ろしい音を立てながら現れるのは真っ赤に焼けた隕石。
――パキッ ピキピキッ!
罅が1つ入り、勢いよく広がっていく。
完全に崩れた隕石の欠片たちが重力を思い出したように勢いよく降り注ぐ!
――ヒューーンッ ドドドドゴォォンッ!!
鉱山地帯へ勢いよく落ちていく真っ赤な隕石群。
『
次々と降り注ぐ隕石群が鉱石を砂山のように破壊していく。
傍から見ればとんでもないことが起きており、天変地異のようなことが起きているのだがガラクシアはイマイチ好きではないのか面白くなさそうだ。
「ん~、爆発してるだけでつまんないなー」
魔法陣から顔を出していた真っ赤な巨大隕石が全部降り注ぎ終わるころには、鉱山など消え去っており、残ったのは巨大なクレーターのみ。
ガラクシアはたくさん魔法を試したかったのでつまんないなと口ずさみながらメルのところへと飛んでいった。
◇
――「ヴァルカン」 商業区
「ダンジョンから魔物が逃げたぞぉぉぉ!」
街は完全に大混乱に陥っていた。
「ヴァルカン」の生命線である鍛冶屋が集まる商業区で『豪炎火山』に生息している魔物と一匹の悪魔が街を破壊していた。
早朝だったとは言え冒険者の対応は素早く、魔物を次々と葬っていく。
しかし一匹の悪魔に対してはまったく敵わず、何故か街に来ていた「紅蓮の蝶々」に助けてもらいながら避難せざるを得ない状況に追い込まれていた。
1人の青年が「ヴァルカン」のギルドマスターに声をかけている。
「ヴァルカン」の冒険者を束ねるギルドマスター「震拍手のオープス」。
現役は退いたが、元Sランクの冒険者といて今は緊急事態として前線に出ようかと思ったのだが相手が悪く、態勢を整えている。
「オープスさん! なんですかあいつは!?」
「…あれは「炎腕魔王イブリース」だ。本来は『豪炎火山』最奥にいるはずの魔物だ」
「そ、そんなのがなんで街に!?」
「ギルドマスター」だからこそ知りえる情報だ。
自分を引退にまで追い込んだ「炎椀魔王イブリース」、ダンジョンのボスであり、SSランクの強大な魔物だ。
魔力だろうが闘気だろうが腐らせながら燃やしてくる力が厄介で、正直歯が立たない戦線状態が続いていた。
何故か街に戻ってきている「紅蓮の蝶々」が安全な場所があると転移魔法陣で避難させてくれているので住民や商人の多くは無事に逃げ切ることができた。
「俺たちも限界だな」
今いる冒険者が束になってもSSランクの魔物には勝てない。
街のリーダーである人物たちが避難勧告を出したようなので、この街は壊滅するのだろう。
オープスは残った冒険者たちに撤退の指示を出し、「紅蓮の蝶々」が用意した転移魔法陣で逃げるように指示を出していった。
転移魔法陣の先は「紅蓮の蝶々」が新たに拠点にした街があるということは確認済みなので安心できているのもオープスを落ち着かせている要因の1つだ。
「オープスさん! ギルド館内の物をほとんど移し終わりました!」
「よし! 我々で敵う相手ではない! 退くぞ!」
ギルドマスターの指示を受け、冒険者たちは転移魔法陣へと退避していった。
◇
――『豪炎火山』
俺は『大罪の魔王』を名乗っているソウイチだ。
今は俺に喧嘩を売ってきた『豪炎』の魔王でもある猫野郎を地獄に叩き落とすために奴のダンジョンに来ている。
そして俺は今、頼れる魔物ポラールの後ろを堂々と守られながら歩いている。
さすがAランクダンジョンなだけあって配置されている魔物のランクは平均的に高いのばかりだ。
CランクやBランクがゴロゴロいるので正直怖いのだが、ポラールがそんな不安を全部吹き飛ばしてくれる。
放たれる闘気と魔力は近付くだけで一部の魔物は消し飛んでいく。
そして発動されている『
「面白くないですね、ご主人様」
「ポラールが強いからな。残っているのは真名持ちだけかな?」
気付けば俺たちが一度行った玉座の間らしき場所の近くまで来ていた。
火属性かつ頑丈な魔物が多いダンジョンだけど罠の置き方が幼稚だし、構造が簡単すぎて歯ごたえが無かった。
ポラールの打撃に耐えられる魔物は存在せず、拳を喰らって粉々になる魔物も多かったので猫野郎としては誤算だろう。
玉座の間に進むと猫野郎と真名持ちと思わしき多種多様な火属性獣人たちが並んでいた。
憎悪に塗れた表情で俺を睨む猫野郎が口を開く。
「テメェ……よくもやってくれたな」
「その様子だと外の惨状も知っているようだな」
「テメェはいったいなんなんだよ! ルーキーのくせにどうしてそんな力を持っている!?」
「そんなこと教えたところでお前の末路は変わらねぇ」
教えるつもりもないんだけども。
アイシャへルーキーたちを唆して魔王戦争を行い、切り札を投入するも呆気なくやられてしまい、冒険者たちも俺のダンジョンを攻略できずに寝返ってしまう。
そこそこの年数生きた魔王がルーキーに徹底的にやられるなんて普通は考えられないだろうが、俺とアイシャを敵に回したのが運の尽きだな。
「ご主人様への非礼をその身をもって償っていただきます」
「くそ! 強い魔物に恵まれただけの新人がぁ!!」
「『
「あぁ…本当に怒ってるんだな」
「はい」
――カーーンッ カーーンッ!
「待て! お前ら止まれ!」
猫野郎の指示を受け、突進体勢だった魔物たちが止まる。
さすがにポラールの脅威を見ているので下手な動きはできないのだろう。
鳴り響く鐘の音。
それはポラールのアビリティの1つで『
ONとOFFが可能なポラールの特徴的なアビリティ、その2だ。気を抜いたら常時発動してしまうので気をつけてるらしい。
アビリティ:『
・自身に影響を与える複数のアビリティ・又はスキルの影響をランダムに1つに絞る。
・1度に10以上のアビリティが自身に向けられた際、自身の周囲半径5㎞に鐘の音を響かせる。鐘の音を聞いた自身と主人以外の鐘の音を聞いた者は激しい『怒り』を覚えた瞬間に身体と魂が崩壊する。
・自身の魔力と幸運のステータスを1ランクアップさせる。
・自身と主人以外の魔力と幸運のステータスを1ランクダウンさせる。
・自身のLv未満の対象の全ての耐性を2ランクダウンさせる。
「さぁ…祝福の鐘は鳴り響きました。最後の言葉を聞いてあげましょう」
ポラールは冷たい表情で正面の軍勢にそう告げた。
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