第14話 ルーキー冒険者の『秘密』


 5人の化け物魔王に呼び出されて、とりあえず自己紹介は無事に終えEXランクの希少さはよくわかった。

 ちなみに野生で生息している魔物ではEXランクは存在していないらしい。


 そして次は今年の魔王と冒険者が何故多いのかについて話をしてくれるらしい。

 これは俺も『原初の魔王』に聞いた質問の答えに近いものが出そうな気がする。



「過去に例を見ないほど多い、今年の誕生した魔王と冒険者。ちなみに冒険者になったばかりの者にあったことはあるかの?」


「いや…一番若くても1年以降の冒険者ばかりかな。場所も場所だし」


「儂らの直接見たわけではないが、話では、2か月前に急激に増えた冒険者になった者は別世界から来た者たちという話が出とる」



 クラウスはさらに詳しく話をしてくれた。

 2か月前、俺たちが誕生したと同時に冒険者になった者たちは今までの冒険者にはない言葉をよく使うらしい。

 「早くクリアして帰る」「クリアするまで戻れないなんて聞いてない」「現実に帰ったら好き放題やってやる」といった発言や、この世界にまったく存在していない地名や単語を言ったりするらしい。


 これらの言葉を言うのは全て2か月前から冒険者になった連中らしい。


 妙な知識は知っているけど戦闘経験は皆無だったり、年はバラバラだけどLvは一緒だったり不思議な共通点があるらしい。


 一番不思議なのは大きいだけで何もなかった聖国領北の街「始まりの街 デパル」でほとんどの冒険者が活動を始めたという点らしい。



「まぁ聖国だったら俺がまだ出会ってないのも当たり前か」


「聖国以外で始めたらしき者もおるそうじゃがの」


「ですがおかしな話です。冒険者になるのはいいですが、年も種族もバラバラだけど装備やLvは一緒でいきなり多くのパーティーやギルドが作られる。聖国から皆同じようなルートで冒険をしている点」


「何か明確な目的のある集団ってことか」



 5人が俺に目をつけた理由はEXランクだけじゃなく、多すぎるルーキーの中でも異質で何か手がかりがあるんじゃないかという推測からでもあるらしい。



「冒険者たちみたいなことを思ってるわけじゃないですけど、自分が何者かはなんとなく気になっていました」


「自分が何者か生まれた時から気になるか」



 確かに珍しいことなんだろうが俺は気になってしまった。

 

 覚えておかないといけないのは新米冒険者たちは何かを成し遂げないと元の世界とやらに帰れず、この世界には魂だけで来ているような者ということ、この世界で死ねば向こうの世界でも死んでしまうという条件もある。



「捕えて聞いてみるか…」


「そういえばお主は冒険者を殺さず捕え、しかもダンジョン内を自由にさせているらしいのう」



 なんで知ってるのかはツッコミを入れなかったが、他の魔王ではあまり捕えて殺さないなんてことはないらしい。

 街に住み着いて利用することはあるけれど、手を結んだり仲良くしたりすることは決してないらしい。


 でも気になってきたし、俺はもしダンジョンに入ってきたり聖国に行くようなことがあれば新米冒険者に会ってみたい。



「ちなみにその冒険者たちは自分のことを「プレイヤー」と呼ぶらしいぜ」



 「プレイヤー」か、よく分からんが自分たちを特別な存在だと区別するための愛称みたいなものだろう。

 とりあえず目標の1つに据えて話を聞くことを追加しておこう。



「楽しい話も良いんだが、実は俺のダンジョンに『豪炎』のところからSランク冒険者が送り込まれているらしいんだ。一旦帰ってもいいか?」


「ふむ、それは引き止めるのも申し訳ないのう。じゃがEXを持つルーキーということでまた話を聞かせておくれ」



 ということで5人全員とメッセージが送り合えるようになったのと、『星魔元素』以外は皆連絡くれれば遊びに来ていいとのことでコア番号も教えてもらった。


 まぁ最強と言われている魔王から話を聞いたり魔物を見せてもらえるのはありがたいので今度行かせていただく約束をして俺は自分のダンジョンに戻してもらった。








――ソウイチが去った後



 自分のダンジョンにSランク冒険者が来ているので様子を見に行きたいとのことで帰ったソウイチを見送った5人は、さらに話を続ける。



「それにしてもEXランクの魔物が2カ月で今確認できたので2体は驚きを越して何かオカシイです」



 『七元徳』は改めて1000年生きてもEXに辿り着かない歴史があるのに2カ月で辿り着いたソウイチに対して疑念を持つ。

 気に入りはしたがオカシイ存在であることには変わりがないのだ。



「『大罪』という名は見たことも聞いたこともない」



 『星魔元素』の記憶では一度も『大罪』の魔名を所有していた魔王を知らないし、ソウルピックでも見たことがないので、確実に『大罪』という力が影響しているはずだと予測をたてる。



「いやー! あの後から出てきた堕天使! よくここに跳んでこれたな、あれは何かしらのスキルで自動的にどんな障壁だろうが抜けて主のところに来れるやつだろうな」



 『次元記録』は後からやってきたポラールの異質な力に感動していた。EXランクの中でも違う空気を纏っている者、それにスライムが戦争で見せていた力もまったく知らないものでワクワクしていた。



「あの子はええ魔王になりそうじゃ。うちのダンジョンに早う遊びに来てほしいな~」



 『神狐』はとてもソウイチを気に入ったようで今からでもソウイチの師匠になりたかったが、そんなことをしたら確実に『原初の魔王』に怒られるだろうから言うのを我慢したくらいだ。Gランクしかコアから呼び出せないというのがツボに嵌ったらしい。



「後から来た魔物はコウリュウと似た感じの雰囲気だったの」



 『皇龍』は魔物軍勢で一番の実力を誇る『神滅ノ皇帝龍 コウリュウ』と同じような異質さを持つと感じたので少し驚いたようだ。

 そして魔王としての考え方の違いにも注目しているようで5人の中でソウイチは面白いと感じたようだ。



「普段でしたら『焔』のほうに目が行きますのにね」


「ルーキーでSSランクなんて普通では考えられない」


「でもソウイチはEX2体持ちじゃからのう」



 3000年近く生きてきたがこのような事態は初なので久々に魔王としての血が騒いできた5人。

 新米冒険者たちは我武者羅に進んでおり、普通の冒険者よりも2倍ほどのレベルアップの速さを誇っているらしいのでそこも見逃せない。


 普段は滅多に交わることのない5人だが、久々に集まったのを祝いに、その日は軽い酒盛りを行なったそうだ。








――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム




「なんだか疲れたな」




 アイシャの魔王戦争に予想通り『豪炎』が来たので無事対処したと思ったら5人の化け物先輩に仲良くしてと挨拶まがいの脅迫を受けるっていうとんでもない1日だった。


 メルも疲れたようで自分の階層に戻っていったので寝ているんだと思う。

 「紅蓮の蝶々」の面々が「赤刃のビエルサ」を捕らえたという報告を聞いたので後から見に行かないといけないな。


 街のほうも異常無いようで、できたばかりにしては素晴らしい速さで発展していっている。

 そろそろゆったりと1日かけて街を見に行くのもいいかもしれないな。


 俺は1日黙って頑張ってくれたシンラにできる限りのお礼を言って休むことにした。

 



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