第13話 最強『最古』の魔王たち


 なんとか魔王戦争が終わり。

 アイシャは休み続けているが、ドラコーンが上手く指示を出し城の修復作業が開始されたので、俺はドラコーンと他の真名持ちに声をかけ『罪の牢獄』に戻ることにする。


 アイシャは目を覚ましたらすぐに連絡してくるだろうし、俺も自分のダンジョンが心配だからと声をかけると、どの魔物を丁寧な礼を言って送り出してくれた。


 そして転移をして目を開けて広がっていた景色は


 清々しい空気に包まれた。 

 青い世界が広がる。


 雲の上だった。




「あれ?」


「ますたー。ダンジョン改造したの?」


「おかしいな」



 自分のダンジョンに向けて転移したはずなのに、どこかの山の頂上に来ていただなんて、とりあえず後ろに気配を感じるけど急いで帰ろう。



「そう急がんでも良かろうて」


「……」


 

 嫌々振り返って見るとそこには1人のデカいお爺ちゃんが2人。

 どっちも立派な角に和服をベースにした格好が似あっている。

 けどデカい。



「儂は先の戦争を解説と審判をしておった者。『皇龍の魔王クラウス』という者じゃ」


「『大罪の魔王ソウイチ』です。こっちはスライムのメリクリウスと真雷氷幻鳥のシンラです」


「こんにちは」



 メルがしっかり挨拶するなんて感動だが、この2人はとんでもないオーラを纏っているな。

 こっちを威圧するつもりなんてまったくなくて歓迎する気なんだろうが隠し切れないオーラが溢れている。



「ルーキーとは思えない素晴らしい試合であったの~」


「それはアイシャに言ってあげてください」


「はっはっはは! そうじゃな、お主も素晴らしかったぞ」


「ありがとうございます。それでここに呼んだ本題はなんですか?」


「おぉ! すまんすまん」



 豪快に笑うおじいさんに少し冷や汗が出てくる。

 まったく敵意もないんだからメルも特には警戒していないが、いったいどんな風に生きてきたらこのオーラを出せるのやら。



「まぁ質問なんじゃが、どうやってそこのEXランクを配下にした?」



 クラウスさんがメルを見て問いてくる。

 なるほどEXランクを知っているってことか、どうと言われても難しいので、とりあえず『大罪』のデメリットとガチャ運について軽く話をする。



「なるほど…だがそれでEXには普通辿り着かん、『大罪』か…欲しい魔名じゃな」


「っ!?」



――ガシャッ!!



 クラウスさんが俺を羨ましそうな目で見た時。

 シンラの上でのんびりしていたメルから『歪み渦巻く怒りの海リヴァイアサン』が伸びていた。


 しかし『歪み渦巻く怒りの海リヴァイアサン』はクラウスさんの後ろにいたデカい人型魔物が掴んでいた。

 とんでもなく速い『歪み渦巻く怒りの海リヴァイアサン』とそれを掴む行為。まったく見えないやりとりだった。


 メルが人間形態になって俺の隣まで来る。

 完全に警戒している表情でクラウスさんを見ている。



「ほっほっほ! それがさっきの『豪炎』の魔物を殺した技か。すまんなお嬢ちゃん! 少し見てみたかったのでな」


「ますたー。言わなかったけど興味本位で覗いてるのがたくさんいる」


「そうなの?」


「さすがEX」



 メルがそう言うと何もない空間が歪み、そこから4人の魔王らしき者たちが出てきた。

 拉致されるわ囲まれるわ試されるわ、どーなってんだ。



「とんでもないルーキーだな」


「そうね…見たことないもの」


「SSランクを持つ者ですら珍しいはずなのにな」


「お主らの気配隠しが下手でバレたのではないか?」


「とりあえず説明してもらっても?」




 俺はクラウスさんを見て説明を求めた。

 相変わらず豪快かつ優しそうに笑っている。









 かなり長い話だった。

 座る場所を用意してもらった俺はクラウスさんから話をしてもらった。


 ここに集まったのは『最古の魔王』と言われる5人で『原初の魔王』を除けば最強の5人らしい。

 ミルドレッドの話では100年以上生きれば中堅とか言ってたが、クラウスさんの話では300年ほどまでが中堅でそこから上級だが、多くの中堅~上級がこの5人に挑み散りすぎて、上のほうの魔王が減ってしまっているらしい。

 もちろん勇者の影響もあるらしいが…。


 この5人は3000年ほど魔王をやっており、そして5人が現在、唯一のEXランクの魔物を配下にしている魔王であったらしい。


 約2年前に1体だけ配下していた魔王がいたが討伐されてしまったらしい。


 SSランクの魔物を数多くだったりEXまで成長したスキルを持つ魔物は上級魔王でもいるらしいが、EXは俺とやられてしまった魔王が現れるまで5人だけだったらしい。


 それが気になって俺と5人を顔合わせするために、実況中にアイシャのコアに細工をしかけて俺を呼んだらしい。


 俺の中に黒い怒りが生まれる。

 この自分勝手野郎どもが…。



「大丈夫ですかご主人様?」


「あれ?」


「ほう…」



 居るはずの無い声がすると思って振り返ったらポラールが心配そうに俺を見ていた。

 誰かの幻術でもなく本物のポラールっぽかったので頬を引っ張ってみると怒られたので本物だ。



「どうしてここに?」


「ご主人様が本気で怒っているのを感じたので。ダンジョンはガラクシアとアヴァロンに任せてあります」


「良い子だな~」


「え? えっ?」



 来てくれたポラールが嬉しくてとりあえず撫でておく。

 ピンチだと思ってきたが元気だった俺を見て驚くポラールがさらに可愛いので撫でたいが、これ以上やるとメルが怒るので途中で止める。


 とりあえず冷静になったので話の続きを求めるが現れたポラールを見て5人とも少し驚いている。



「EXの中でも異質を感じるのう」


「うちに欲しい人材じゃ~」



 好き勝手言う5人にポラールのオーラが冷たくなっていくのが感じる。

 そして5人にむかってポラールが言い放つ。



「これ以上ご主人様を怒らせるなら、まとめて地獄に送りましょうか?」



 ポラールが12枚の羽を展開する。

 これは本気で怒っているときの奴だ。


 そして視線の先には主を守るようにして現れた各魔王の魔物たち。

 5体とも凄まじい存在感だ。


 俺はこの場全員に言い聞かせるように、普段あまり出番のない『大罪』の魔力を放ちながら言い放つ。



「静まれ」


「…はっ! も、申し訳ありませんご主人様」



 ポラールが羽を消して泣きそうな顔になりながら謝ってくる。

 俺はポラールを座らせてメルと一緒に撫でてやりながら、5人に向かって言う。



「うちの大事な配下を泣かせたんだ。面白い話は聞かせてもらうからな」


「はっはっはは! 任せておくが良い」



 とりあえず5人の自己紹介をクラウスが他の4人を説得することでしてもらった。

 まぁさすがに5人もいたら俺を倒すことは容易だったんだろう。

 ちなみに5人は魔名ランクもダンジョンもEXの方々らしい。 

 それにどっからか現れて主を守っている人型の魔物たちもEXランクらしい。


 すごい。



 『皇龍の魔王クラウス』と配下の『神滅ノ皇帝龍 コウリュウ』。どっちもお爺ちゃんであるが、この中でよーいドンで戦ったら一番強いと自他ともに認める存在らしい。


 『七元徳の魔王アクィナス』と配下の『神熾天使ミカエル フスティシア』。綺麗な女性二人ではあるが、『大罪』の俺と互いに相性最悪だろう。だけど優しい表情で俺を見ている。


 『星魔元素の魔王クラーク』と配下の『全元素創造神 マクスウェル』。クラークさんは知的な雰囲気の紳士服を着た男の人で、クラークさんの座っている宙に浮かぶ玉座がマクスウェル。


 『神狐の魔王リン』と配下の『九尾の神狐 玉藻の前』。どっちも尻尾がたくさんあってぜひ触らせていただきたい美人2人。でも元素を司るクラークさんよりも強力な神火でセクハラしようとしてきた奴らを魂まで燃やし尽くしたと聞いて邪念を消した。


 『次元記録の魔王クロック』と配下の『星の創造鍛冶屋 ヘファイストス』。様々な次元世界の記録を読むことができる魔王と魔王の記憶にある生命以外の物を創れるドワーフのヤバそうなコンビ。


 

 まだ自己紹介しかされてないのにお腹いっぱいになりそうだ。

 俺はとりあえず名前をしっかり憶えて再度クラウスさんの話に耳を傾けた。

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