第5話 神粘土と『赤刃』の到来
アイシャの魔王戦争当日。
緊張であまり寝付けなかった俺は朝5時ではあるがコアの前に座っていた。
魔王戦争開始は今日行われる他の戦争との兼ね合いで15時からになっている。
他の魔王たちの戦争を見ないけど、戦術のためにも見ておくんだったなって思う、ポラールとリーナは見ているらしいので聞きに行かないとな。
コアルームの小さなゴミを掃除しててくれたスライムを拾い上げて少し街の様子でも見ようかなとコアを起動する。
するとコアに1つのテキストが表示された。
『確認:配合の解禁・30日以内の配合可能回数は2回です』
少し眠かったけど目が醒めたよ。
そういえば配合リセットの日だったのか、俺が戦争してから30日くらい経過したってことか。
これは戦力増強のチャンスだ。
Gランク以外の魔物で配合していないのはアウラウネとルジストルだけだ。
アウラウネは少し前に本人に確認したら、今変化して仕事に支障が出たら嫌だし、これ以上仕事したくないから嫌って言われたもんな~。
――プヨンップヨンッ
配合について頭を悩ませていたら膝の上に居たスライムが飛び跳ねる。
…戦闘要員ではなく掃除担当だけど、確かに古参であり、いつも頑張ってくれて、かつ癒しになってくれるスライムを配合するってのもいいのかもしれない。
まぁ一応聞いてみるか。
「配合したいか?」
――プヨプヨプヨプヨッ
凄い勢いで反応してくれるスライム。
相変わらず可愛いし、上手に自分の意志を表現してくれるので助かる。
「もし強くなったら戦闘に出てもらうってのもあるんだぞ?」
――プヨンプヨンッ
合ってるか分からないけど「任せてよ」って言ってる気がする。
まだこのスライムは一度も戦ったことがないはずだけど本当は他の魔物と一緒に戦いたいのかもしれない。
とりあえず魔名カードと聖魔物を机に広げる。
スライムはプヨプヨと動き回りながら物色している。
「好きなの選んでくれ。紙が3つで物が1つまでで頼むよ」
どこか楽しそうに物色しながら物を寄せていくスライム。
10分ほどして4つのアイテムが机の右側に寄せられていた。
1.魔名カード『創造神獣』 ランクEX
2.魔名カード『星魔導』 ランクEX
3.魔名カード『大罪』 ランクS
4.聖魔物『神の造りし粘土』 ランクEX
正直「水神」や「水銀」を選ぶんじゃないかなって思ってたけど、まったく予想してないラインナップだし、『大罪』を選ぶのもビックリだな。
「決まったよ~」って感じでプヨプヨ跳ねるのが可愛すぎて撫でてしまう。
画面をタッチして配合を開始する。
部屋よりデカいスライムが生まれたらどうしようという少し面白い不安を抱きつつ、4つのアイテムが吸い込まれて輝き始まるスライムを見守る。
現れたのはいつもより磨きかかった水色に感じる変わらないスライムがそこにいた。
「変わってないぞ…『メルクリウス』」
思わず考えていた真名まで付けてしまう。
メルクリウスはさらに光り輝いたが特に姿が変わることなく、いつも通り可愛らしくプルプルしている。
【レヴィアタン】 神造生命体 ランクEX Lv970 固定
真名 メルクリウス 使用DE??
ステータス 体力 EX+99 物理攻 SS+91 物理防 EX+99
魔力 EX+99 敏捷 SS+84 幸運 EX+99
アビリティ ・『
・『
・『
・『
・完全適応 EX
・星核の根 EX
スキル ・『
・宵の水星 EX
・明けの水星 EX
・『
・完全模倣 EX
・分裂 EX
・『
・周囲に存在している生命体の感情を読み取る力があり、相手の感情を揺さぶり精神操作することもできる。
スライム+『大罪』+『星魔導』+創造系統EX+『神の造りし粘土』
可愛らしいプヨプヨスライムからは想像できない意味不明な能力の数々に圧倒される。
これで確信したんだが『大罪』の真骨頂は配合に使うことで上手く行けば凄いことになるってことなのか。
「まーすたっ!!」
「えっ?」
――ギュッ!
勢いよく跳んでくる青いドレスを着た可愛らしい女の子。
黒髪に青いラインが3本縦に入っているショートカットに150㎝ほどの身長の少女にスライムが変わっていた。
どうなってるんだ?
「ビックリした~?」
「あぁ…スライム形態も可愛いけど、今はドレスが似合って可愛いよ」
抱き着かれたのでとりあえず抱きしめ返して撫でてやる。
嬉しそうに顔を俺の首元に埋めて楽しんでいる。
今の形態は人間形態らしくどっちの形態も2つの形態が元の形らしい。
ドレスはガラクシアとポラールを見て俺の好みだと思ったから創りだしたそうだ。
そして真名をつけてあげたことに凄く喜んでくれていて、張り切ってやりたいことがあるらしい。
「このダンジョンと街に私の力を張り巡らせていいかな?」
「メルの力を張り巡らせる?」
「うんっ♪」
とりあえず悪いことではなさそうなので許可をする。
メルがスライム形態になり、少ししたら青く限りなく細い糸が蜘蛛の巣のように地面に張り巡らされていく。
数秒でコアルームの全ての壁は青い糸が張り巡らされていた。
そして3分ほどで何事も無かったかのように青い糸は光となって消え去った。
そしてメルは人間形態に戻ったメルが嬉しそうに報告してきた。
「今やったのはこのダンジョンと街に見た通り私の魔力の巣を張り巡らせたんだ。これでますたーを狙う悪い奴はすぐに私が感知できるよ!」
「ぶっ飛んでて笑っちゃうな」
星核の根と『
あまりの凄さと嬉しさにメルを抱きしめてクルクル回ってしまう。
「きゃ~♪ ますたー楽しいー!」
「最高だぞ! メルは凄い子だなぁ」
「さっそく1つ報告!」
メルの真面目な声にクルクル回るのをやめて2人で椅子に座る。
メルは少し目を瞑っている。何かを感じ取っているんだろう。
「街の南にある宿の2階の一番北の部屋にいるやつがますたーに明確な殺意を持ってるよ。そいつは刃物を持っていて、血を吸った生き物に姿を変えて、ますたーに近づいて刃物で刺し殺そうとしてるみたい♪」
「全部筒抜けじゃん。とんでもない力だな」
「ちょっと疲れるからずっと注意はしてないけど、何かあったらすぐ教えるよ♪」
こんなのダンジョンコアの監視システムの超上位互換で暗殺や色んな事件をこれで解決できそうだが、この力は俺に対する感情のみってのが弱点だな。
このダンジョンの魔王に対しての感情だけだから他の人を守るのは今まで通り気を付けないとな。
とりあえずこの素晴らしい力を持ったメルが改めて仲間になってくれたのを祝いつつ、『赤刃のビエルサ』の居場所も分かったので情報共有と作戦の打ち合わせをしておかないとな。
「メル…これからもよろしくな」
「うん♪ たくさん頑張るね」
ニッコリと笑うメルを見て朝起きてから感じていた緊張感は、どこかへ飛んでいった。
さぁやるか!
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