第2話 ドキドキ『同盟』交渉
初日にある程度の街の基盤を作った俺たちは2日目の作業に移行している。
ちなみに街はダンジョンの一部扱いなのが良いところだ。
DEを使えば色々できてしまうので、こちらで短時間のうちにその時々に合わせた変化をさせられるのが便利なところだ。
モニターで監視もできるしな。
「建物内の細かい整備だったり、規則作りなんかは「紅蓮の蝶々」に意見を採用しよう」
「私たちが出したのは一般的なものだから変なことにはならないはずよ」
街の治安部分や建物の整備だったりと忙しく頑張っている。
ガラクシアがダンジョン近くに来ていたルーキー冒険者やら色んな人を今まで洗脳していたおかげで近くの村や帝都にも少し噂が流れている。
「よし今日も頑張ろうか」
農業地区を整備したり、ダンジョン入口を入りやすいように整えたりと忙しい時間を送っている。
正直「紅蓮の蝶々」と魔物たちのおかげで凄まじい速さで整っていくので予定の半分ほどの期間で完成するかもしれない。
少し余裕が見えてくると色々コアに載っている面白そうなものに手を出したくなってしまう。
すでに「鉱山」と街の農業区域があるさらに西のほうに「湖」まで購入してしまった。
「鉱山」はまだそこまでランクが高くないので初心者向けの低ランクの鉱石が生まれるところでこれも集客狙いだ。
「湖」は魚が多くて釣りをしたい人だったりゆったりしたい人が集まれるようにしてある。宿まで作ったので噂になってくれれば嬉しい。
完全に無駄遣いな気がするが止められないもんはしょうがない。
2日目も無事終わりどんどん街が形を作りあがっていく。
「紅蓮の蝶々」の知り合いだったり商人が見に来たときは交渉なんてまったく経験がない俺の代わりにレディッシュやガラクシアにポラールが担当してくれた。
そのうち街の代表もどうにかしないといけないな。
なんやかんや順調に事が進んでいるので、そろそろ厄介ごとが来るだろうと思い、俺は気を引き締めながら警戒するリストをみんなに分かるように書き出しはじめた。
◇
――『罪の牢獄』 居住区 食堂
街づくりも6日ほどが経ち、正直想像以上の進みで良い感じになっているようだ。
「紅蓮の蝶々」の知名度は想像以上で人がどんどん集まってくるのだ。特に「紅蓮の蝶々」に憧れている冒険者が多く集まり、冒険者が集まる匂いを嗅ぎつけた商人も集まり気付けば店がいくつか開こうとしている。
ポラールとリーナが把握してくれたり交渉をスムーズに済ましてくれているのが大きい。
そして「紅蓮の蝶々」が各地に困窮していた亜人族や人をいる場所を教えてくれて、ガラクシアが話をしに行き、街の職員として採用している。
我らが師匠ミルドレッドも手伝ってくれて、ミルドレッドの街から色んな人材が派遣されても来たので一瞬で軌道に乗った。ミルドレッド最高!
『豪炎』から邪魔が入るかと思ったが、そろそろ始まるあることのせいで邪魔することに力を割けないのだろう。
そのあることが近づいてきて相談に来ている者が1人。
「あと5日後だな」
「少し緊張もしてるけど準備は良い感じです」
「少し前にメッセージ送ったけど『豪炎』が噛んでいるのは確実だ」
「喧嘩を売ったと少し噂になっていましたよ」
「どっから漏れたのやら」
アイシャが魔王戦争が5日前に迫ったので、また相談に来ていた。
今回はもし『豪炎』が直接乱入してきた場合どうするべきかについてだ。
アイシャの師匠である『天風』はあまり関与するつもりはないらしく、少しの情報と激励の言葉を貰っただけらしい。
俺はアイシャに『豪炎』の魔物をあの日見た感じの特徴を伝える。
予測される能力や戦場に乱入してきそうな魔物やどんなタイミングで姿を現すのかを話し合っている。
そして俺は意を決してアイシャに話を持ち掛ける。
「アイシャ…1つ相談なんだけど」
「なんでしょうか?」
アイシャは表情を変えずに真っ直ぐこちらを見てくる。
これまでも先に街を作っているアイシャに色々と相談だったり手伝ってもらってはいるが、今までの関係を崩しかねない相談だ。
「ふぅー。俺と同盟を組まないか?」
アイシャの顔がきょとんとした表情に変わる。
俺は間髪容れずに話を続ける。
「今回の戦争だって「同盟」を組めば何の憂いもなく乱入することができる。どうせ『豪炎』はアイシャを倒したら俺のところに来るだろうから、できれば今回で叩いておきたい。少しでもアイシャの勝率を上げられたらと思っている。それに今後も良い関係を築いていきたいと思ってるんだが…」
アイシャの顔が少しムスーッとした表情に変わってしまう。
俺は何かやらかしてしまったのだろうか?
ここまで仲良くやってきたつもりだったが、それは俺の勘違いだったのか?
「何か気に障るようなことを言ったか?」
「…そんなにたくさんの理由が無いと私と同盟を組む気になれませんか?」
アイシャの言葉に俺は返すことができず詰まってしまう。
「ソウイチとなら私も一言言ってくれれば、ぜひ同盟を組ませていただきたいです。私は仲良しになれたと思っていたのに、理由がないとダメだったのですか?」
「いや…俺が臆病者だったよ」
少し悲しそうな表情になってしまったアイシャを見て焦ってしまう。
そんな風に思ってくれたなんてすごく嬉しいけど、俺はその気持ちを踏みにじってしまった。
「…アイシャ、俺と同盟を組んでくれ! ここから先も友として共に歩んでほしい!」
「ふふっ……友として、ですか。良いでしょう私も待ち望んでいました」
立ち上がりアイシャと握手をする。
この同盟はかなり嬉しいものだ。特に友達がいない俺からすればアイシャの存在は心強いし、何かあったときに色々気兼ねなく頼めるし、頼んでほしい存在だ。
『確認:『焔の魔王アイシャ』と同盟を結びますか?』
コアの画面が目の前に表示される。
アイシャも同じだったようで、俺たちが同時に画面をタッチして宣言する。
「同盟を結ぶ!」
「結びます」
『同盟:『大罪の魔王ソウイチ』と『焔の魔王アイシャ』が同盟を結びました』
画面に正式に同盟が結ばれた証が出てくる。
アイシャのほうを見ると嬉しそうにニコニコしている。
「改めてよろしくアイシャ」
「こちらこそよろしくお願いします」
「じゃ~改めて作戦会議するか」
「そうですね」
アイシャと笑い合いながら、そして距離が明確に近くなったからか、いつもより大胆に互いに作戦を提案しあうのが楽しく、夢中になりながら語り合った。
ガラクシアにカップルとからかわれて、真っ赤になって急いで去っていったアイシャは面白かったし、いい同盟相手を見つけたなって思う。
「マスタ~今日は頑張ったから一緒に寝ようよ~」
「またポラールに怒られるぞ」
前にも朝起きたらガラクシアが隣で寝ていたところを起こしに来てくれたポラールに発見されてしまい、2人まとめて説教されてしまったので勘弁してほしい。
実力的にポラールは頭1つだけ抜け出している。ガラクシアとアヴァロンはタイプが違い過ぎてなんとも言えないがどっこいって感じなのもあり、誰もポラールの説教から逃れられないのだ。
「うぅ~どうにかバレない方法を考えようよ~」
「そんな無理難題を…」
何はともあれ街づくりもミルドレッドにアイシャや「紅蓮の蝶々」の知人たちの協力があって凄まじく順調だ。
魔王戦争もできる限り万全の準備をしたい。
せっかく同盟になってくれたアイシャを失いたくないし、出てくるであろう『豪炎』の魔王を絶望するほど叩いて二度と関わりたくなくなるようにしてやりたい。
「やってやろうじゃないか」
俺はさっそく準備に取り掛かった。
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