第18話 『先輩』の仕掛け
配合によってさらに強くなった2体のために実績ボーナスで手に入れていた【指定魔物に適したダンジョンルーム】を使ってダンジョンを再び大きく改造した。
1F 薄暗い洞窟 ゴブリン集落+スライム+一角ウサギ 罠多数
地下1F 朽ちた街 スケルトン+子蜘蛛 『銅』の軍勢化
地下2F 破裂の黒森 鬼ノ虎蜘蛛+フレイムリザード
地下3F 闘技場 スケルトン+全滅したら出てくるアヴァロン
地下4F 永遠の星空 真雷氷幻鳥+ガラクシア
地下5F 地獄の門 ポラール
居住区 果樹園 豊穣のアウラウネ
みんなで決めた結果こうなった。
ガラクシアとポラールに【指定魔物に適したダンジョンルーム】を使ったら「永遠の星空」と「地獄の門」になったので任せることにした。
「永遠の星空」はただずっと夜なだけの人1人いない小さな街だ。
名前が長いから真名ではないがシンラと名付けた真雷氷幻鳥と2人で仲良くやってくれている。
「地獄の門」はポラール専用な感じでポラールの能力に合った場所なので、寂しいだろうけど1人でやってもらうことにした。
本人も巻き込む心配がなくなったと安心していたので大丈夫だろう。
まぁガラクシアとポラールにアヴァロンは階層を勝手に移動して好き勝手やっていいと伝えてあるし、虎蜘蛛とフレイムリザードがやられそうになったら助けてやってほしいとも言ってあるので自由にやってくれる。
どうでもいいかもしれないが、最初に生み出した「一角ウサギ」が生き残っていたので、死なせるのが惜しくて、俺の自室でペットにした。
ある程度弄り終わって、そろそろ作ろうかと思っていた街について頭を悩ませているとガラクシアとリーナが声をかけてきた。
「後1時間くらいでSランクの冒険者が来るんだって」
「いきなりだな! そんな有名になった覚えはないけどな~」
Sランクの冒険者なんて人間の中じゃ誰もが聞いたことあるような人物で、国から討伐依頼をされるような連中だったはずだけど、なんでこんな出来立てのダンジョンを制圧しにきたんだ?
「気になったから調べてみたら、『豪炎火山』っていうダンジョンの街から来たんだって」
「『豪炎の魔王』は50年ほど活動しているなかなかの実力者ですね」
「今来てる『紅蓮の蝶々』ってのはその街を拠点にしてるグループらしいよ」
「『豪炎』に依頼されてここまで来たってことか」
確定したわけじゃないけど、わざわざSランクの冒険者が来たってことは何かしら依頼を受けたってことか。
まだBランクまでの冒険者しかダンジョンに来たこと無いのにいきなりSランク冒険者をけしかけてくるなんて嫌な先輩もいたもんだな。
「全然近くの街で休まず来たっぽくて気付くの遅くなっちゃった」
「いや…ありがとうガラクシア、さすがにSランクは被害がデカくなりそうだから策を考えようか」
せっかくのSランク冒険者と戦う機会なんだから色々やってみないとな。
俺は迎撃準備を整えるためにコアを画面を弄り始めた。
◇
――帝国領 最南 大森林
「あの洞窟じゃないか?」
地図に記された場所らしきところにある洞窟を指して1人の青年が叫ぶ。
他のメンバーもその洞窟を見て、ようやくかというような声を出す。
「ダンジョンで間違いないな。中から魔物の匂いがする」
彼らは帝国領西にある迷宮都市「ヴァルカン」を拠点にしているSランクのパーティー「紅蓮の蝶々」だ。
全員で6人のパーティーで結成7年でSランクまで到達した猛者の集いでもある。
1人目は副リーダーだが中心的存在の青年カイル。火竜の素材を使った武装をした双剣使いで茶髪のイケメンで帝国全体でも人気筆頭の剣士だ。
2人目はこのグループのリーダーである槍使いの美女レディッシュ。カイルと同じく火竜の素材を使った竜槍を持っており、肩まで伸びた赤髪に右耳についたピアスが特徴だ。ツンデレ属性があると噂されている。
3人目は回避型タンクのくノ一であるツララ。とある国で習得した忍術と言われる技とシーフのスキルを使用できるダンジョン攻略の要である少女だ。動きやすくするために短く整えられた黒髪に花の髪飾りが目立つ存在だ。
4人目は狼人族のベイル。接近戦と風魔法でパーティーを支えつつ狼人の特性を存分に活かして素早く狩りを行うイケメンだ。綺麗な青い毛並みは帝国でファンクラブがあるほどだ。
5人目は付与魔法を得意とする少女二ナだ。彼女は2年前にパーティーに参加した新人だが若いながら天才的な付与魔法の使い手で、いつも冷静に戦況を判断できるところも他のメンバーから買われている。水色のポニーテールに何人の男が魅了されたか。
6人目は銃火器を使いこなす青年のグランス。ワイルド系イケメンを目指しているかのような髭とセットされた黒髪が特徴な中身が残念な奴だが銃の扱いは群を抜いており、魔弾の扱いは帝国でもトップ3に入ると言われている。
「紅蓮の蝶々」は「ヴァルカン」の長に直々に破格の報酬で依頼され、帝国領最南にある大森林にあるここ最近できたダンジョンのコアを破壊するために来ていた。
早急な依頼とのことで街に止まることも無くストレートに向かってきたが、そこまで遠いわけじゃなかったようで疲労の色はあまり見えない。
何故Sランクである自分たちができたばかりのダンジョンを攻略しなければいけないかとは思っているが、破格の報酬と都市直々の依頼で断れなかったのもあるから仕方ないとも思っていた。
「さぁ! とっとと片付けて戻って報酬で遊びに行きたいぜぇ!」
「油断すると危険ですよ」
「グランスに言っても無駄よ二ナ」
「俺の鼻には一角ウサギとゴブリンの匂いが漂ってきている」
「ツララの忍術を試す機会がたくさんありそうですね!」
「とりあえずコアを見つけないといけないから頑張ろう」
ダンジョン入口まで到着し、周囲を確認する6人。
わざわざこんな場所に来させられたのは誰かの差し金でダンジョン内で後ろから襲撃される危険性がないかの確認のようで、さすがにSランクともなるとできたばかりのダンジョンだろうがいつもの確認行動は絶やすことなく行う癖がついているのだ。
「冒険者が出入りした匂いはあるが、今中に人がいるような感じはしないな」
「ならここから一発かましておきましょっ」
ベイルのダンジョン入口での安全確認と他の冒険者がいないことを確認しダンジョン内に入っていないのに自慢の竜槍に魔力を集中させるレディッシュ。
彼女の持つ火竜の槍「フレアブル」、持ち主の火魔力を膨れ上がらせ放出することができる特性をもつ武器なのだ。
「『
――ゴゴゴオオォォォッ!!!
ダンジョン外からダンジョン内へと放たれる無慈悲な豪炎!
「フレアブル」の力もあってレディッシュの膨れ上がった火の魔力はダンジョン入口の見える限りを燃やし尽くしていく。
中から聞こえるのはゴブリンの一瞬の叫びのみでほとんどは叫ぶ間もなく消し炭になっていく。
「ふぅー、もういいかしら?」
10秒ほど放たれ続けた『
何度か見ているが容赦ない爆炎を見てグランスとカイルは苦笑いを浮かべる。
「相変わらずおっかねぇーなあれ!」
「少し魔物が可哀想になるよ」
「何か言ったかしら!?」
「「何も言ってません!」」
こうして無慈悲な砲撃で進路の安全を確保した「紅蓮の蝶々」の面々は洞窟の中へと足を踏み入れていく。
◇
――『罪の牢獄』 コアルーム
槍を持った女性冒険者に1Fを燃やし尽くされて、さすがに言葉を失ったよ。
Sランクにまでなるとあんなことやってくるのかよ。
魔物も罠も宝箱も全部消し炭にしたってことは本当にダンジョンコア以外は眼中にないって感じみたいだな。
「Sランクは全部あんな感じなの?」
「彼らはまだ若いので勢いと後先を考えていないように思います。もっと強いSランクは世界に何組もいますよ」
「怖いもんだな」
自分の力を試したくてウズウズしている我らが可愛い幹部たちがいるので早く罠にかけようと俺はコア画面を弄りだした。
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