第16話 『焔』襲来


 ミルドレッドが祝勝会を開いてくれてから5日経ち、戦争での傷も癒えてダンジョンも前より強化することができている。

 実績で貰ったDE含め、そこそこのDEがあったのでダンジョンルームの強化だったり構造を改造して、洞窟ダンジョンから少しずつ離れている。


 今の『罪の牢獄』はこのような構造になっている。


 1F    薄暗い洞窟 ゴブリン集落+スライム+一角ウサギ 罠多数

 地下1F  朽ちた街 スケルトン+子蜘蛛  『銅』の軍勢化

 地下2F  破裂の黒森 鬼ノ虎蜘蛛+フレイムリザード+ブリザードイーグル

 地下3F  闘技場   スケルトンソルジャー+ガラクシア+ポラール

 

 居住区  果樹園  豊穣のアウラウネ 



 こんな感じになっている。

 アウラウネは破裂の黒森にヤバい時は行くことになっていて、破裂の黒森は実績報酬で手に入れた【指定魔物に適したダンジョンルーム】を1つ使い虎蜘蛛に適したエリアを作った。


 自分に最適な環境で凄まじい気合で蜘蛛糸を至る所に張り巡らせる虎蜘蛛がいてそれを空から見守り上手く連携するブリザードイーグルと爆卵を一斉に着火するフレイムリザードがいる形にしている。

 自分で作っておいてあれだが、かなりいい形になっていると思う。


 Gランクの魔物を他の種類も作りたいのだが、すぐにケンカして良くないとミルドレッドが言っていたのでなんとか共存できる4種類に抑えている。

 稀に一角ウサギがゴブリンに食われているときがあるけど仕方ない。


 手に入れた『銅』の力をスケルトンとゴブリンの武装に使わせてもらっている。



「せっかく2回できるし、配合を考えておきたいな」



 ダンジョンコアの前でそんなことを考えていたら、1つのメッセージが来ているのに気付く。

 タッチして開いてみると驚きの相手からメッセージが来ていたのだ。



『挨拶:初めまして、『焔の魔王アイシャ』と申します。先日の『銅』の魔王との戦争お見事でした。この度私は『茨』の魔王と戦争することになりました。もしよろしければ先日見事な戦術を披露してみせた『大罪』の魔王さんにアドバイスを頂きたく、ダンジョンに転移をする許可を頂けると嬉しいです』



 『焔の魔王アイシャ』と言えば俺たちの世代で一番DEを獲得しているって爺さんが言っていた魔王だったはずだ。

 

 『銅』との戦争が終わってからルーキー同士の戦争が様々なところで告知されているが『焔』の魔王も戦争をするのか、わざわざ俺にアドバイスなんか求めなくてもやれそうなのに何が狙いなんだ?

 

 俺としても聞いてみたいこともあるし、同期と仲良くしておきたいってのもあるから良いかなとも思うけど悩ましい。



「悩ましいけど繋がりを作っておくのも大事か」



 コアをタッチして『焔の魔王アイシャ』の転移を許可する。

 どんな相談をしてくるのだろうかと思うが戦争相手が『茨』なら言葉だけ見れば相性は良さそうなもんなんだけどな。


 すると許可をして1分ほどで『焔の魔王アイシャ』はやってきた。



「待ってたのかよ」


「初めまして『焔の魔王アイシャ』と申します」



 前見た時と変わらず髪も目も服装も真っ赤なので驚きの統一感だ。

 凄く真面目そうな雰囲気をしていて、ダンジョン運営も上手くやっていて今のところ完璧って感じだと思うんだけど、きっと完璧だからこそ油断しないって意味なのかな?



「『大罪の魔王ソウイチ』だ。アドバイスできる立場にあるとは思えないけど、よろしく頼む」


「アイシャと呼んでください。先日の戦争は素晴らしかったです。相手の戦略を読む力、できれば色々教えてほしいのです」


「我からもお願いしよう」



 アイシャの後ろについてきた竜人が一緒に頭を下げてくる。

 ミルドレッドのところのバイフーンと似たような存在感がある。アイシャと同じように全身真っ赤な竜だが二足歩行に発達した手足の筋肉が竜人って感じがする。



「とりあえず座れるところに案内するよ」


「少しワクワクしてきました」



 遊びに来ている感じもするアイシャを連れてとりあえず食堂まで行くことにした。










「なるほど裏で組んでいる奴がいるってことね」


「『茨』のダンジョンに入った冒険者が出していた噂から生息していた魔物の特徴や私の師匠から得た話で推測した結果ですが」



 まぁ余程の手札じゃないと『茨』が『焔』に挑むなんて馬鹿げた話だから、さすがに何かあるんだろうなとは思ったけどそういうことだったのか。

 

 この戦争は『茨』から仕掛けてきたものらしく、まだ時間はあるからいくらでも準備はできるけど相手が複数の魔王ってのは厄介な話だ。


 アイシャのダンジョンにはSランク2体にAランクが3体とルーキーとは思えない戦力だが、それでも正面から戦うだけだと敗戦の可能性が考えられるので相談する相手が欲しく、前の戦争で気になった俺に声をかけたってことらしい。



「ちなみに協力してそうな相手は分かったりするのか?」


「正確には分かりませんが、『茨』のダンジョン内には『泥』と『蝙蝠』の特性を持つ魔物が多いところですね。魔名カードはソウルピックで手に入りますが確率が極めて低いですし、『泥』と『蝙蝠』の魔王が同期にいるのは確認しているのでそうでないかと」


「凄い調査力だな」


「偵察に役立ってくれる魔物がいますので」



 随分便利な魔物がいるもんだな。

 俺もガラクシアにそういった仕事を頼んだほうがいいのだろうか? それともポラールに短期間しか持たないが召喚してもらってやってみるべきかもしれないな。



「それなら3人が相手だと思って戦ったほうが良いと思うけど、何が厄介だと思うんだ?」


「ダンジョンに生息していた『泥』と『茨』の組み合わせだと思われる魔物に火魔法が全然通用しないというのが冒険者の間で噂になっているのです」


「まぁ戦争仕掛けるってことは『焔』に対する対策はしてるだろうな」



 『泥』に『茨』か『蝙蝠』を合わせて少しでも火に対して強い魔物を作ろうというのは定石だし、きっと戦場を泥塗れにして『焔』を少しでも抑えるプランで来るはずだ。


 3人の魔王が手を組んでいるのなら最低3体はAランクはいるだろうし、『泥』を生み続けることができるような魔物がいたら『焔』的にはやりにくい戦いになってしまう。


 地上戦を『泥』と『茨』で攻め込んで、空中戦を『蝙蝠』が攻める戦略は間違いないだろう。

 3人の魔王がそれぞれ戦術を仕掛けてくるのは面倒なことだな。



「それにしても他の魔王が戦争に乱入するなんて面倒なことだな」


「なんでもありですからね。どうにかして勝たねばなりません」


「ちなみに戦術の核になりそうな魔物を教えてもらえると嬉しいんだけど」


「私は考えているのはソウイチさんの蜘蛛と同じように爆発する卵を産める魔物がいるので活かしていきたいですね」



 虎蜘蛛さんと似た魔物がいるとのことなので、詳しく聞くと『爆炎アルマジロ』っていうBランクの魔物を10体ほどDEを使って用意をしているらしく戦場が決まり次第運用を考えていきたいと思っているそうだ。


 他にも後ろに控えている「焔竜人ドラコーン」は単体で戦術兵器になるガラクシアとポラールのような立ち位置のようで、もう一体のSランクも似たタイプらしい。


 こうやって2人で考えてくると楽しくなってきたし、アイシャが凄く真面目で良い魔王なんだなって思う。

 

 俺と違ってDEを使えば全魔物を呼び戻せるけども、できるだけ被害を抑えたいという気持ちも立派だ。



「どちらかと言えば空中戦を制する力がありそうだから、一気に空を支配してから上から叩き続けるってのが今のところは第1プランになると思う」



 ドラコーンにAランクにも師匠である『天風』の力を持つ魔物がいるらしいのでその2体を中心に空中戦を制したほうが速そうだ。

 『蝙蝠』がどれだけ脅威か分からないけどきっとドラコーンほどの力を持っている魔物はいない気がする。


 そんな話をしていると食堂にリーナとポラールが入ってきた。



「あれが噂の堕天使さんですね」



 やっぱりアイシャも気になっていたようで戦争の話はどこかへ飛んでいき、ポラールへの興味を隠さずに質問しまくりたい空気を醸し出す、我らが同期1位がいた。

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