第15話 『隠蔽』する大罪
初めての戦争から1日が経ちなんとか元通りになりつつあるダンジョンだったが、ガラクシアとポラール、それに新しく来てくれたアウラウネの仕事が多すぎてどうしたものか困っている最中だ。
まずアウラウネは負傷した魔物を回復魔法で治していき、虎蜘蛛と同ランクのはずなのに手下みたいに従えて果樹園を一瞬のうちに綺麗な状態に変えてしまう仕事の出来る魔物っぷりを見せてくれて、できるだけ果樹園にいたいらしく、今も果樹園で待機している。
ガラクシアとポラールはぶっ飛んだ能力を使ってなんでもやれるようになってしまった。
しかし力がぶっ飛びすぎて上手く調整が利かないのか派手な失敗もやらかしていたので仕事を変えて、今は新しく追加したダンジョンルームの「闘技場」の整備をしてもらい、一旦昼休憩中だ。
フレイムリザードは暗いところのほうが寝やすいのかダンジョンのスケルトンがいるエリアで昼寝をしていて、現在の食堂にはガラクシアとポラール、そしてリーナがいる状況だ。
リーナもガラクシアとポラールのようなランクEXなんて見たことも聞いたことも無いらしくスキルもほとんどが知らないものだった。
「あんまり知られ過ぎると面倒なことになりそうだな」
「すでに先の戦争から目をつけられていると思います」
2人で楽しそうに食事をとっている姿を見ると、以前と変わりないように見えるけど、とんでもない戦闘力を手にしたし、アビリティの影響は凄まじく、ただのゴブリンだって2人が近くに居ればとんでもないステータスになってしまうのだから恐ろしい。
まぁ膨れ上がった能力を制御できないゴブリンが生まれるだけなんだけども。
そんなことを話し合いながら食事をしているとミルドレッドが入ってきた。
「おめでとう! ソウイチ! 面白い戦争だったよ」
「ありがとうミルドレッド。できれば次から事前に連絡してくれると助かるんだけど」
ガラクシアとポラールが少し冷たい目で見ているので何が起こるか分からない。
ミルドレッドの様子を見るときっとガラクシアとポラールのことについて探りに来たのもあるんだろう。
一応コアで許可しないと入ってこれない設定にできるからやっておかないとな。
いくら友達機能で入るとコアを攻撃不可能になるからと言って、さすがに不用心すぎたか。
「今や魔王の間ではソウイチの話題で持ち切りさ。ソウイチが思ってるのとは違くて『憤怒』と『怠惰』の力について議論されてるね」
「どの情報もあまり知られたくないもんだな」
「ここからは色んな魔王があの手この手でダンジョンに攻めたり、冒険者けしかけたりして探られるだろうね」
「仕方ないか…」
そうなるかもしれないってのは予測できていたけれど、洞窟型ダンジョンってのはバレてしまったし、ルーキーってことでここ最近できたダンジョンっていうのも見つけやすくしてしまう条件だな。
「何かあればいつでも相談してくれて構わないからね。ルーキー以外の魔王情報はそれなりに詳しいからね」
「さすが師匠。頼りになるよ、それで聞きたいことがあって来たんだろう?」
「あははは! さすがにお見通しかい」
まぁ俺の戦争戦術について興味深そうに戦前は聞いてきていたので、まったく出てこなかった最後のガラクシアとポラール、特に目立っていたポラールについて気になったんだろう。
いくらミルドレッドだからと言って全容を話すわけにはいかないので隠しておかないとな。
このことは事前にガラクシアとポラールに話してあるから大丈夫だろう。
そう思って2人のほうをチラ見するとミルドレッドの幹部である白虎と話をしていた。
「まぁさすがに切り札を他の魔王に話すつもりなんて無いだろうからね。私の予想では堕天使なんだろうけどどうだい?」
「まぁ正解みたいなものだ」
ポラールのこと見て言ってるからポラールの話なんだろうから答えたけど、ポラールは魔神であり『大いなる堕天使』っていうアビリティがあるから堕天使ってことにしておく。
アビリティ:『大いなる堕天使』 ランクEX
・敵対する光属性は全てのステータス・アビリティ・スキルの能力値が2段階低下する。
・自身の使用する闇属性に関連するスキル能力値が2段階上昇する。
・敵対する者からの能力低下を1段階分無効にする。
・ダメージを受けた後、反撃時の攻撃ステータスが+5される
・いかなる拘束技を受けることが無くなる
・自身の近くにいる自軍闇属性の魔物は全ステータスが+10される
これ1つでもぶっ壊れアビリティなんだけど、読み解くとポラールは堕天使でもあるというか堕天使だったとも思えるから決して堕天使だよってのは嘘になってないと思う。
「『銅』のとこにいたハイオーガは『狂乱』って魔王の力を得ていて、攻撃力だけは凄いことになっていたが、それを片手で防ぐなんてどんな能力してるんだか」
「まぁ1つ教えておくと、今のポラールは物理攻撃主体の武闘家だよ」
「なに!? あの格好で近距離型なのか」
遠距離でも圧倒的な仕事ができるけど、本人的にも得意のレンジは超接近戦らしい。
たぶん今話している白虎に自分と同じ空気を感じているから話しかけてみているんだと思う。
あの白虎が話をしているのも初だな。黙ってミルドレッドを見守っている感じだったはずだけど、さすがにポラールに興味が出たのかもしれないな。
「あのハイオーガを一撃で消し飛ばす力だなんて、また凄い魔物だし真名を与えていたのは大正解だったね」
「強くなろうがなんだろうが、ポラールに真名を与えたのは後悔なんて絶対しないよ」
「相変わらず良いこと言うね~!」
自分が勝ったわけじゃないのに凄いテンションが高いミルドレッド。
本当に良い師匠だなって改めて思う。
今後はどんどん強い冒険者だったり騎士団や色んな人が来るだろうから街を作っておくとやりやすくなると教えてくれる。
迷宮都市として栄えてさえしまえば人間側も無闇に変なことはしてこられなくなるし、他の魔王も手を出しにくくなるとのことだ。
「ダンジョンが満足行く形になったら取り掛かるよ」
「私んとこの街からも宣伝や助っ人人材を送るから連絡してきておくれよ」
「頼ってばかりで申し訳ないし、俺にできることがあったら言ってくれ。俺も色んなことを経験したいしな」
「そんなことする暇が無くなるほど忙しくなるさ、ソウイチの同期は今から多くの戦争を始めるだろうから仲良くしたいなら絡んでおきなよ」
「確かに全員に狙われたくはないからな」
魔王ではその年代だったり、似た魔名同士だったりで派閥を作って助け合いをしてるらしい。
特に同期数人で仲良くするのはよくあることで互いに切磋琢磨していくのは魔王としての成長を良いものにするとも言われているらしい。
「まぁ美味しい食材を持ってきたから祝勝会と行こうじゃないか!」
ミルドレッドが色々用意してくれたらしく、まだ昼だったのだが夜中まで続く祝勝会を開いてくれた。
白虎のバイフーンとポラールは武術についての話をしていたらしく、能力はあるけど経験は無いポラールが真面目にバイフーンから話を聞いていたらしい。
バイフーンもポラールの真面目さに負けたのか話すようになり、俺にも軽く声をかけてくれた。
ミルドレッドは途中から1人で酒を飲みまくって踊りまくっていたのでバイフーンに回収されて自分のダンジョンへと戻っていった。
なんだかんだ楽しいもんだな。
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