第13話 『憤怒』と『色欲』の向こう側


 コアルームに帰ってきて、まずは40体ほどスケルトンを追加しておく。

 そのあとすぐに祈るような思いで新しく使用可能になった配合をタッチしてみる。



『確認:配合対象を選択してください』


「よし! 行ける!」


「あたしからー!」



 どうなるか分からないが使用可能である配合をガラクシアとポラールにする。

 最初の配合は魔名の制限に関係なく2回はすぐにでも行えるという説明を聞いていたのでさっそく以前選んでもらっていたアイテムをタッチしていく。



「どうなるかは保証してあげられないけど頼めるか?」


「なんとなくだけど大丈夫だと思うよ!」


「ご主人様のさらなるお役に立ってみせます!」



 本当にこの2人に真名をあげてよかったなって思う。

 こんな制限だらけの魔王と一緒に来てくれたし、こんな絶望的な状況でもポジティブでいてくれる。


 まずはガラクシアとアイテムをタッチする。


1.魔名カード『夜天を統べる者』 ランクEX

2.魔名カード『辺獄』 ランクEX

3.魔名カード『大罪』 ランクS

4.聖魔物『禁忌の書』 ランクEX



 ミルドレッドが言っていたが、いくらいいアイテムを使っても合っていなければ失敗するから気を付けろと。

 ガラクシアの勘を信じることになるが、きっとこれでガラクシアのなりたい姿になれるはずだと俺も信じている。


 画面をタッチするとガラクシアの体の周りに4つのアイテムが現れて吸い込まれていく。

 ガラクシアの体が輝いて少しずつ形が変わっていった。

 黒い羽が6枚と立派に増え、豪華な漆黒のドレスを身に纏い、煌びやかな装飾品も追加されて、さらに綺麗になったガラクシアがそこにはいた。



「とっても綺麗だよ。それにしても凄いことになったねガラクシア」


「ありがとうマスター! 私は外に出てブリちゃん助けてくるね」


「頼むよ」



 そういうと転移が使えるようになったのか俺の眼前から消えた。

 すぐにポラールのほうを向いて声をかける。



「お願いします!」


「こちらこそ、何が起こるか分からないけど頼んだよ」



 画面をタッチして再び配合を選択して、ガラクシアが直感で選んで保留していたアイテムを選択する。

 確かに正気に戻ると保留したくなるようなラインナップだった。



 1.魔名カード『奈落』 ランクEX

 2.魔名カード『六道輪廻』 ランクEX

 3.魔名カード『大罪』 ランクS

 4.聖魔物 『天上の薔薇』 ランクEX



 よく見ると天使が選びそうにないものランキング上位に入るであろうアイテムを選んだポラール。

 でも本人が選んだものだからきっと良い方向に行くと思うし、統一感はしっかりあるからなんとかなるはず。


 ガラクシアのときと同じ演出が入りポラールの体に4つのアイテムが吸い込まれて輝き始める。

 すると突然黒い炎に包まれ燃え始めた。



『確認:超変異が起こりました。配合を続けます』



 このタイミングで超変異が起きるのかよ!

 確率で予測された配合結果より凄く良くなるか悪くなるかの2択になる配合事故だ。

 でも不思議と悪いほうに行く感じがしなかった。


 黒い炎が上から消えていき、見慣れた顔したポラールが見えてきた。

 右に太陽、左に月のイヤリングが追加されており、赤黒金の軽鎧とドレスの合体版のような凛々しい格好で現れてくれた。

 ガラクシアと同じで6枚の黒い羽が生えていて、なんだか凄い安心感がある。



「どうですか?」



 その場でクルッと一回転してみせてくれる。

 フワッと舞う黄金に輝く髪と美しいドレスが目を奪う。



「見惚れて戦争どころじゃなくなっちゃいそうだよ」


「ふふっ! ありがとうございます。では虎蜘蛛さんのところに行って参ります」


「頼んだよ」



 ポラールはガラクシアと同じように一瞬で消えていった。

 コアに書かれている2人のステータスを見ると、気絶してしまいそうなほどぶっ飛んだことがそこには書かれていた。



【アスモデウス】 堕天使 ランクEX Lv970 固定 

         真名 ガラクシア 使用DE?

 ステータス 体力 EX+91  物理攻 SS+83  物理防 SS+90

       魔力 EX+99  敏捷 SS+85  幸運 EX+99


アビリティ ・『情欲と激怒でコスモス・溢れる天の川アスモダイ』 EX

      ・『全ての夜はワールド・イズ掌の上・ノクス』 EX

      ・『天文の賢者ユニバース・マギア』 EX

      ・『魔王の智慧サタン・ウィズダム』 EX

      ・ソロモン72柱の力 EX

      ・『星空の魅力スターウラノス』 EX

      ・大いなる堕天使 EX

      ・『禁忌ノ遺訓アルマンデル

スキル  ・『色欲ラスト』 EX

     ・禁忌魔導 EX

     ・魔神の権能 EX

     ・星天魔導 EX

     ・極闇魔導 EX

     ・時空間魔法 EX

     ・結界魔法 EX


・『色欲』の大罪を背負う堕天使。『色欲』の権能と闇と星魔導を使用する後衛型である。 

 1つの国すべての生命を支配し治めることができるほどの『色欲』の力があるので諜報活動も得意としている。

 サキュバス+『大罪』+星魔法関連ランクSS以上+地獄関連ランクEX+禁忌の書 の配合のみで生まれる。

 


【サタナエル】 魔神族 ランクEX Lv999 固定 

        真名 ポラール 使用DE?

 ステータス 体力 EX+99  物理攻 EX+99  物理防 EX+96

       魔力 EX+98  敏捷 EX+90  幸運 SS+98


アビリティ ・『至高天・堕天奈落輪廻パラダイス・ロスト』 EX

      ・『魔王の智慧サタン・ウィズダム』 EX

      ・魔神の頂点 EX

      ・大いなる堕天使 EX

      ・『終焉を告げる福音ラグナロク・ゴスペル』 EX

      ・『激昂し塵へと返すアポカリプス・サタン黙示録・ジ・イーラ』 EX

スキル  ・『憤怒ラース』 EX

     ・獄炎氷魔導 EX

     ・星天魔導 EX

     ・『黒炎魔舞踏ベリアルアーツ』 EX

     ・極闇魔導 EX

     ・時空間魔法 EX

     ・魔神の権能 EX

     

・『憤怒ラース』の大罪を司る魔神。幾つもある地獄を召喚し対象に様々な地獄に落とす力を持つ。

 召喚士や武闘家としての能力も飛びぬけており、最前線で武闘家としても戦えて、後衛で召喚魔法を使って指揮官になることもできる。


超変異必須 天使族魔物+大罪+『六道輪廻』+『奈落』+『天上の薔薇』



 とりあえず詳しくアビリティとスキルを読んでいくと日付変わりそうだからやめておこう。










――『王虎の魔王ミルドレッド』ダンジョン コアルーム



「なんだいあれは?」



 ハイオーガの攻撃を右片手で止めた黒翼の魔物に驚いてしまう。

 顔を見るとソウイチのところにいたアークエンジェルだけど急にどうしたってくらいの変化をしている。



『突然の助っ人! なんとハイオーガの一撃を受け止めたぁー! 見たことのない魔物の登場です!」



「誰かあの魔物を読み取れる者はいるか?」



 うちのダンジョンの幹部たちでも誰一人分からない存在。

 たぶんだけど配合を使ったんだろうけど、Cランクの配合をしてどんだけうまく行ってもAランクだと思うんだけど、あれは明らかに異質の雰囲気を感じる。


 黒翼の魔物が空いていた左手をハイオーガにむける。



「消し飛びなさい」



――バンッ!



 何かの魔法を使ったわけでもなく、左手から放たれた魔力の衝撃波でハイオーガの上半身が消し飛ぶ。

 あれほど猛威を振るって無双していたハイオーガが一瞬で消し飛ばされたことに驚きを隠せない。

 これは戦争が終わったら見に行かないと!



『い、一撃で消し飛んだぁぁ! いったい何をしたんだぁ!』



 Aランクかつ『狂乱』を一撃で消し飛ばす力を持つ魔物を持つルーキーなんて、今後確実に厄介なことになるだろうね。

 どんな手品を使ったのかは知らないけれど、この戦争は多くの魔王が観戦していて、私よりも上級の魔王だって今の光景を観て目を付けるだろう。



『なんと荒野のほうでも大変なことが起きております!』



 実況の声を聞いて荒野で頑張っていたブリザードイーグルをみる。

 ブリザードイーグルはなんともなく『銅』軍勢は何故か反転して自分たちのダンジョンを攻め始めていた。

 魔物がすべて反逆してしまった『銅』のダンジョンは一瞬で壊滅状態だ。



『一瞬! 一瞬で立場は逆転だぁ! 『銅』の魔物がまさかの全員反逆! いったいどんな魔法を使用したんだぁぁぁぁ!?』



 一瞬にして謎だらけの戦争になってしまった。

 こんなの歴史上初だと思う。

 大逆転の凄い戦争だけど、ソウイチが最後に呼び出した黒翼の魔物と『銅』の魔物の寝返りが理解できずに困惑してしまう。


 ダンジョンの頂上で命乞いをしている『銅』の魔王が映し出される。

 これも毎年のように見る光景だし、ルーキー以外の魔王は慣れた光景だろう。


 数秒後自軍の魔物にコアを砕かれたのだろう、『銅』の魔王は光となって消えていった。



『決着だぁぁぁ! 予想を覆し! Gランクしか召喚できないはずの『大罪の魔王ソウイチ』が勝利だぁぁぁぁ!』



 さぁ! 明日の昼ぐらいに乗り込んでやろうかね! 今ソウイチのダンジョンを知ってるのは私だけなんだから!



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る