第7話 『骸骨』の奮闘記
ポラールの配合準備が無事に終わり、ガラクシアとLv上げでスケルトンソルジャーを連れてGランクの魔物しか出現しない魔王不在のダンジョンに来ている。
ちなみに今のスケルトンソルジャー君の能力値がこんな感じだ。
【スケルトンソルジャー】 アンデッド族 Lv12 ランクF 真名 無し
使用DE20
ステータス 体力 F 物理攻 E 物理防 F+1
魔力 F 敏捷 F 幸運 G
アビリティ ・武具の心得 F
・連携 F
スキル ・渾身斬り F+1
・捨て身 F
装備 ・鋼の剣
・バックラー
・丈夫な布
ガラクシアとポラールのアビリティによるバフはすべてオフにしている。アビリティを発動するとなかなかのステータスになり敵は敵で弱くなるから実戦経験にならない。
森が中心のダンジョンなので、洞窟の中に引きこもっている身分としては凄く新鮮な空気で気分が良い。
ガラクシアとポラールは実戦どころからアビリティを発動したらGランクだと近づいてくる魔物が減るので抑えてもらっている。
贅沢な悩みだが戦いに慣れるまでは見守りに徹してほしい部分もある。
魔王としての力も蓄えていかないといけないからな。
前方からゴブリンが一匹見える。
このダンジョンは魔物が集団でポップしにくいので本当に初心者向けになっておりありがたい。
ソルジャー君が武器を構えて近づいていく。
勢いだけで行かない賢さがあるのがソルジャー君の良いところだ。それに剣の使い方も悪くなく、攻撃するより捌くほうが得意な変わったスケルトンである。
「ギャッギャッ!」
ゴブリンがソルジャー君を見つけたようだ、何も持っておらず丸腰だがソルジャー君に突進していく。
体は個体によってバラバラだけども、今回のゴブリンは少し大きめである。
――ドゴッ!
ゴブリンの体当たりをバックラーで何事も無いかのように受け止めるソルジャー君。
そのまま勢いをいなして隙だらけになったゴブリンの体に剣を振り下ろす。
――ズバッ!
ソルジャー君の力では両断なんてできないが、深い傷を負わせることには成功したようだ。
振り下ろした剣をそのまま元に戻すように振り上げ攻撃を行おうとするが、さすがに深手を負ったゴブリンは下がろうとする。
しかし歩幅の差でソルジャー君の踏み込みのほうが速く、ゴブリンを斬り上げる。
「ギャー―ッ!」
初期の錆びついた武器と違い、『原初の魔王』からのプレゼントで得た武器セットの中にあったものを装備しているので、そこそこの切れ味で敵を倒せている。
アンデッドだからか知らないけど、恐れなく踏み込めるのは普通は難しいから接近戦をする分にはメリットになる。
その後もゴブリンや一角ウサギ、スケルトンやスモールボアなんかを倒していくソルジャー君。
さすがにランクとLv差からかLvアップまで行かないのが惜しいところ。
「ご主人様、4人組の人間が近づいてきています」
「冒険者かな?」
ガラクシアとポラールが人の接近を伝えてくれる。
このダンジョンはGランクしか出ないけど、このダンジョンに来るまではEランク帯を抜けてこなければいけなかったはずなので、ソルジャー君では厳しい戦いになりそうだから用心しとかないとな。
2人に様子を見てきてもらうのが一番かもしれないな。
「少し見てきてくれないか?」
「攻撃された場合は好きにやっていいの~?」
「あぁ…任せるよ」
「了解しました」
2人は翼を広げて気配のする方向へ飛んでいった。
ちなみに2人とも翼はガラクシアが8枚、ポラールが12枚まで展開できるらしい。邪魔になるんじゃないだろうか?
◇
「火炎斬!」
本日何匹目か分からないゴブリンを斬り倒す。
Gランクしか出現しないダンジョンのコアを破壊する依頼を受けてここまで来たが、こんな辺境の地にダンジョンがあって、しかもGランクだけだなんて変わった場所だ。
「Eランクの魔物が多くいる山の近くにGランクだけの森って不思議よね」
彼女はエスカル。
紫の魔導士ローブに黒い魔導帽を被った女性、肩まで伸ばした赤い髪が特徴的な俺たち『空の狼爪』の大事な後衛の1人だ。
「はっはは! まあこの分だとコアの破壊も順調に行けそうだな」
豪快に笑う巨体の彼はダリル。
うちのチームのタンクを務めてくれていて、大きな盾と斧槍を持ち、立派な鎧で俺たちが戦いやすいように体を張ってくれて、チームのムードメイカーでもある。
髭が少し邪魔そうだなってくらいあるけど本人は気に入っているらしい。
「深いダンジョンではなさそうなのでコアも近辺にあると思います」
優しく微笑みながら伝えてくれるヒーラーのラーナ。
エスカルと似たローブだけど色は白で魔力を貯める珍しい木から作られた杖を持っている。
明るい金色の髪をポニーテールにしているのがとても似合っている。
「気を抜くとケガをするから集中していこう」
そして僕が『空の狼爪』で前衛剣士を務めているルクスだ。
黒髪黒目が特徴的で武装は個人的に好きな色である青で統一している。
背中に背負った剣『氷狼の牙』を使った近距離戦に自信がある。
今回は報酬は低いし、場所も僻地なのが理由で誰もやろうとしなかったダンジョンのコア破壊の依頼を受けた。
もしかしたら何か得るものがあるかもしれないと思って受けてみたけど、今のところ苦労に見合う何かは得られていない。
「本当にこんなところに何かあるのかしら?」
「僕の勘では何かあると思ったんだけどな~」
「まぁ勘なんてそんなもんじゃ!」
さすがに僕らはギルドランクDを貰っているのでGランク相手に苦戦することは無いけど、本当にこのままじゃただ僻地に来ただけになっちゃうな~。
その時。
「「「「っ!?」」」」
上空からとんでもない圧を感じる。
体が動かず、何者か把握するためにも上を見なければいけないのに首すら動かすことができない。
Cランクの魔物とは遭遇したことは何度かあるけど比べ物にならない圧だ。
それに少しずつ近づいてきているのが分かる。
どうすればいいんだ?
「なかなか狙った人にだけ魔力を当てるの難しいね?」
「力の使い方に慣れなければいけませんね」
空からゆっくり降りてきたのは似たような黒い羽とドレスを纏った女性魔族2人だった。
左は桃色の髪をしてニコニコとしている魔族、右側には黄金色の髪をした腰に剣を携えている魔族。
とんでもない圧で息をするのも苦しい。
「そろそろいっか!」
「ぷはぁっ!!」
圧から解放された!
とりあえず陣形を整えないといけない!
「エスカル! 敵の情報は視れる!?」
「……」
「どうしたのだ!?」
僕にダリル、ラーナが素早く陣形を整えるのに対してエスカルはピクリとも動かない。
洗脳や拘束魔法を使った形跡はないけどどうしたんだ!?
「普通のサキュバスじゃない!? どうなってるの?」
「くっ! 大丈夫!?」
エスカルに声をかけるがまったく応答がない。
魔族の2人は何もする気が無いのか、こちらの様子を窺っている。
なんでGランクだけのダンジョンにこんな魔族が生息しているんだ?
「ちなみに私たちはどのように視えているのでしょうか?」
こちらに質問してくる。
エスカルの『魔物鑑定』スキルは見破られているのだろう。エスカルのスキルはBランクまでの魔物なら完璧に視ることができるはずだけど。
「サキュバスとアークエンジェルのはずなのに通常種より遥かに能力が高い。たぶんだけど魔王の幹部ってところかしら?」
「「「なっ!?」」」
「なるほどそういう判断もできるのですね。私はご主人様に報告してきますね」
「は~い!」
右側の魔族は去っていく。
このまま2人とも行ってくれれば助かったけど、まだ可能性が0ってわけじゃない! こんなところで諦めるわけにはいかない!
「ラーナ!」
「はい! “
ラーナの付与魔法で4人の身体能力が強化される。
相手は武器を持っているわけでもないし、接近戦を主体としているタイプには見えない。
「エスカル頼むよ!」
「…そうね、こんなところで死ねないわ」
なんとかエスカルも魔力を溜めて大技を撃つ準備をしてくれるようだ。
僕とダリルで時間を稼いでエスカルの一撃で仕留めるいつもの連携で仕掛ける!
「魔力なんて溜めちゃって怖~い!」
口ではそう言うけど、まったく怖がっているようには見えない魔族。
綺麗な桃色の髪を靡かせている。
それにしても魔族なんだけど凄く可愛いって思ってしまう。
172㎝ある僕よりも15㎝ほど低い感じの身長、瞳も綺麗で顔が凄く整っている。スタイルも凄く良くて、ドレスを纏っている姿はとても美しい。
あんな可愛い女性を僕たちは攻撃するのか?
僕たちがやろうとしていることは間違ってるんじゃないか?
エスカルが魔法を使う前に止めないと!
「ダメだ! エスカル!」
「はぁ!? 何言ってるのよ!? 前を見なさいよ!」
「そうだな、エスカル一旦止めたほうがいい」
「ダリルさんまで! どうしたんですか!?」
くそ! 止めてくれない! エスカルには悪いけど全力で止めさせてもらうよ!
『氷狼の牙』をエスカルとラーナに向ける。
「どうしたのよ2人とも!?」
あの方に傷を負わせるわけにはいかないんだ!
2人にも申し訳ないけど、どうしてもやるのなら全力で阻止させてもらう!
僕はダリルと一緒に2人に向かっていった。
◇
「おっ? 帰ってきた」
ソルジャー君とゴブリンを相手に特訓をしているとポラールが帰ってきた。
表情はいつも通りなので特に問題なかったんだろう。
「おかえり。どうだった?」
「特に問題ありませんでした。ガラクシアの力が効いていたので間もなく4人まとめて連れてくると思います」
「さすがサキュバスって感じだな。それじゃガラクシアを待ってから戻ろうか」
ソルジャー君のLvも1上がったし、ガラクシアとポラールがとても強くなったのを再確認できたので、ダンジョンをオープンする最終準備に戻らないと。
戻って昼食を食べて、魔物を配置したらようやくダンジョン運営が始まる。
冒険者が集まるような細工はいくつもしたから来てくれるだろう。
それに確認してないけど配合してからプレゼントを見てないし、爺さんから詫びの品が来てるはずだから楽しみにしておこうかな。
少しして4人の冒険者を完全に洗脳して戻ってきたガラクシアとともに俺たちは自分のダンジョンに戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます