第1話 『迷宮核』の使い方
リーナに連れられて、先ほどいた部屋よりも広くて中央に1mほどの大きさで浮いている赤石がある部屋に到着した。
「あれがダンジョンコアです。ダンジョンの核であり、ソウイチ様の命も同然のものです」
「あれが壊されたら終わりってことか」
「その通りです」
あの石を守りながら、いかにダンジョンを上手に動かすのかを考えるのが魔王の仕事ってことか。
コアにはダンジョンを動かすために必要な機能が全て集められているらしく、基本的には何かするためにはコアのところまで来ないといけないらしい。
「ダンジョンの構造変化や魔物召喚など様々なことを行えます。今は使用できませんが配合もここで行うことができます。これが砕かれてしまうとソウイチ様は消滅してしまいます」
「そいつをいかに頑丈に守れるかどうかってことか」
「どの魔王様もコアの守りには全力を注がれております」
コアに手を伸ばしてみる。するとコアはクルクルと回りながら薄く光りはじめる。
「最初は声をかければ起動します」
「なるほど……目覚めろ! コア」
俺の言葉に反応するかのように光が強くなり、石から地図のようなものが表示される。
そこにはダンジョンについて色々書いてある。
ダンジョン名 無し
ダンジョン所在地 帝国領 南 大森林内
構造 洞窟 地下2階構造
現在のDE 1000DE
その他未設定
「ではダンジョンを作っていきましょう。まずはダンジョン名ですね、ソウイチ様のダンジョンだと分かりやすく、かつ人間の間でも広まるような名前が好ましいですね」
いきなりそんなこと言われても正直困る。
人の間でどんなものが流行るかなんて知らないし、分かりやすいというのも難しいけれど、どうしたもんか。
「そうだな……ダンジョン名は『罪の牢獄』だ」
『ダンジョン名『罪の牢獄』承認』
コアから無機質な声が響く、声で認識できる力ってのは便利なものだな。自分なりに分かりやすくて覚えやすい名前にしたつもりだけどどうだろうか?
「良いと思います。では次に構造ですね、今は洞窟ですが最初の一度だけ変えることができますがどうですか?」
リーナの声と同時にダンジョン構造に使えるカタログのようなものが表示される。
書いてあることを読んでみると、ダンジョン構造は配置する魔物にも影響を与え、環境にマッチさせることができれば強くなるので、自分の『魔名』にあったものにするのがオススメだとか。
『大罪』にマッチするものってなんなんだ? まぁ牢獄って言っているし、とりあえず地下のある洞窟でいいか。
「このままで大丈夫だ」
『承認』
特に変えはしなかったけど、後からDEってのを使って追加することができると書いてある。このDEってなんだ?
「DEって何?」
「それはディザイア・エネルギーといい、ダンジョンを運営するために必要なポイントですね。ダンジョン内で人間が起こす様々な事柄に対して獲得することができまして、一番DEを得る方法は殺すことです」
「そういうことね」
構造のところに書いてある、ダンジョン内に温泉を作るには2000DEと書いてあるが、コアを介して何かするときには絶対必要ってことか。
ダンジョン構造にDEを使えば使うほど、環境にマッチした魔物の性能も上がるようだし、死にたくなければDE集めろっていうのがよく分かる。
「DEを得やすいように魔物を配置するのが基本ですが……」
あぁ…そういうことか、だからリーナは俺の力を聞いた時に少し驚いていたのか。
「強い魔物は奥地に配置したほうが誘いやすいけど、『大罪』の縛りのせいでコアから召喚できるのはGランクのみ」
「正直厳しい制約ですね、魔物召喚の欄をご覧ください」
コアに念じて魔物召喚の一覧を表示させる。
ランク一覧のところが「G」のみで他の部分は赤く塗りつぶしてある。
「武器を持った子どもが3人居れば倒すことが可能なレベルの魔物がGランクです」
「とんでもない縛りを引いちまったのか」
「……そもそも『魔名』にこのような厳しい縛りは聞いたことがありません」
俺本体の戦闘力がずば抜けてあるわけでもないのに、召喚できる魔物のランクまで低いとなるとたまったもんじゃない。
ダンジョン運営どころか、生き残ることさえ不安になってきた。
「召喚以外の方法でも強い魔物を作る方法はありますよ。人間が魔物を倒すとレベルアップするように、魔物も何かを倒せばレベルアップをするので、Gランクの魔物が人間や他ダンジョンの魔物を倒せるようにしなくてはなりませんね」
「とりあえず魔物をどこかに召喚してみるか」
コアに表示されている魔物一覧から「一角ウサギ」を選んでみる。
召喚する場所は洞窟入り口から10mほど進んだところにしてみた。
『承認 所定位置に一角ウサギを一匹召喚します。使用DEは10DEです』
コアから映像が表示される。
ダンジョン入口が映し出され、地面に1つの赤い魔法陣のようなものが浮かび上がり、そこから40㎝ほどの白いウサギが現れる。
辺りをキョロキョロ見回して、ピョンピョンと跳ねながら動き回っている。
大きさと7㎝ほどの角が無ければ普通のウサギだな。
【一角ウサギ】 兎獣族 ランクG 真名 無し 使用DE10
ステータス 体力 G 物理攻 F 物理防 G
魔力 G 敏捷 E 幸運 F
アビリティ ・獣の本能 F
・集団生活 E
スキル ・体当たり E
G~SSランクまで存在するらしく、ステータス等の数値はランクと同じなら、そのランクの平均的能力らしい。
イマイチ基準は分からないけど、Gが一番弱いってのはよく分かる。
「コアで呼び出した魔物は指令が無い限り、基本は呼び出されたエリアに滞在して敵を待ちます」
「なるほど、魔物と罠の配置を考えないとな」
罠にもそこそこのDEがかかるようだ、Gランクの魔物しか召喚できない俺は罠が生命線になってくるかもしれないから、ゆっくり考えないとな。
ダンジョンコアでやれることを確認するのは時間がかかりそうだな。これが俺の命でもあるし、この部屋に敵が侵入したら、俺もコアルームに呼び出されてしまうので注意しなくちゃな。
ちなみに自作の罠はDEを使用しなくて済むので、手伝えそうな魔物がいるのならば罠づくりをするのがいいかもしれない。
コアから表示されている画面の右上にある箱みたいなマークに17という数字があり、ピカピカと主張しているので指でタッチしてみると。
――チャラランッ♪
軽快な音がコアから流れてきて、画面にたくさんの文字が表示される。
『原初の魔王』からのプレゼントらしい。
1.初#%+(!” そH1 【2000DE】
2.=#限+(!” UH2 【ランクF魔物ランダム獲得チケット】
3.=#%+(!” UH3 【ダンジョン経験値 500ポイント】
4.RGNBD-Iス E!目 【100DE】
5.OLキーRGイBD-IC E!K 【安心生活空間セット】
6.ZZTKRB D万O 【1000DE】
7.ZZTK者B LRO 【罠3点セット(落とし穴・毒リンゴ10個・罠宝箱】
8.ZZTKRB DSRO 【武器3点セット(片手剣・槍・弓)】
9.ZZTKRB TS万O 【2週間食料セット】
10.ZZTKRB ASRO 【ランクD魔物獲得チケット】
11.ZZTKRB DQQSRO 【2000DE】
12.ZZTKRB LQQSRO 【武器3点セット×3】
13.ZZTKRB AQQSRO 【万能ポーション×20個】
14.ZZTKRB DDQQSRO 【魔物用経験値1万ポイント】
15.ZZTKRB LDQQSRO 【ランクC魔物ランダム獲得チケット】
16.ZZTKRB DMO 【ランダムアビリティ1個】
17.ZZTKRB TMO 【ソウルピック10連チケット】
とんでもない量だし、左側は何書いてあるのかまったく分からない。
でも内容見てみると分かる分だけでも凄い物ばかりだ、新米の俺からすれば破格のプレゼントなかり。
「なんて書いてあるんだ?」
「わかりませんが…右側に書いてあるのは便利なアイテムや経験値ですね。これでダンジョンや魔物のレベルをあげて、機能やスキルを解放できます」
リーナに尋ねてみるも、分からないようで首をかしげている。
でもこんな良い物貰えるなんて、かなりやれることが広がる。
気になるやつの内容を見てみることにする。
「【ランクF魔物ランダム獲得チケット】か、まぁ使うか」
「それがいいですね」
画面に表示されている【ランクF魔物ランダム獲得チケット】をタッチしてみる。
すると1枚の紙切れが現れて光りはじめ、地面に魔法陣のようなものが描かれる。
かなり突然で驚いたが、その魔法陣からボロボロの布切れを纏い、錆びついた剣と盾を持っている骨太な骸骨が現れた。
【スケルトンソルジャー】 アンデット族 ランクF 真名 無し 使用DE20
ステータス 体力 F 物理攻 E 物理防 F
魔力 F 敏捷 F 幸運 G
アビリティ ・武具の心得 F
・連携 F
スキル ・渾身斬り F
・捨て身 F
カチャカチャと音を立てながら、姿勢よく武器を構えている。
Gランクしか召喚できない俺からすればとんでもない戦力だ。でもこの脆さで一度やられてしまえば二度と呼び出せないのが痛すぎる。
「ちなみに真名は魔王様の力で付けられる数が決まっておりまして、最初の2体は好きに付けられますが、以降はひと月に1体までです。真名を付ければ戦闘力は大幅に上がります」
リーナの言葉の意味が理解できているのか音を鳴らしながら武器を高々とあげてアピールしているように見える。
Gランクしか召喚できないから自然と候補に入ってくる、だけどいきなりするには早いので保留だ。
「もちろん候補に入ってるから、今は待機しててくれ」
そう言うとスケルトンソルジャーは音を鳴らしながら部屋から出ていった。
とりあえず1つずつ確認しながらやっていくか。
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