第17話 決戦の朝を迎えました

アイラン様との思いが通じ合った翌日、いよいよ決戦の朝を迎えた。


朝早くに戦場に向かうため、かなり早起きをした。まだ少し眠いわ。



私の為に準備されていた服は女性騎士団のもので、下はズボンだ!コレどうやって着るのかしら?



コンコン

「シャーロット様、おはようございます」


フェアラ様だわ!良かった。


「フェアラ様、おはようございます。あの、これってどうやって着ればいいのでしょうか?」


ズボンを持ってウロウロしている私を見て、クスクス笑うフェアラ様。結局フェアラ様に着替えを手伝ってもらった。



ガリレゴ王国の戦争は、まさに背水の陣で臨む為、オルビア様やフェアラ様など令嬢たちも手伝いの為、戦場に一緒に向かう。



ただ令嬢たちは戦えないので、食事の準備などを行うことになっている。



コンコン

「シャーロット。準備は出来た?最後の打ち合わせを行うの、あなたも来て」



オルビア様に連れられて、会議室へと向かう。


おっといけない、魔力を込めた水晶と珊瑚も持って行かないとね。近くにいた護衛騎士に、運んでもらう様にお願いする。



会議室にはアイラン様・アルテミル様・ファビオ様の他に男性が6人いた。



「陛下、この方が先ほどお話しされていた女性ですか?確か、昨日のダンスパーティーの時に、陛下と一緒にいらした方ですよね?」



1人の男性がアイラン様に何か確認しているようだ。



「そうだ。シャーロット、君の事は予め話しておいた。ここに居る彼らは、各軍を束ねる団長達だ」



アイラン様の話によると、アルテミル様とファビオ様含め、8つの軍団に分かれているとのこと。なるほど。では、水晶は彼らに渡そう。


一通り話が終わったところで、私は話し始めた。


「アイラン様、少しお時間はよろしいでしょうか?」


「ああ、いいぞ」


「今回の戦争に勝つ為に、私なりに色々と準備をしてまいりました。まずはこちらを、全兵士に配っていただきたいのです」



私は魔力入りの珊瑚をみんなの前に置いた。


「これは珊瑚の様に見えるが…」


「はい、そうです。しかし、ただの珊瑚ではございません。この珊瑚には、私の魔力が込められています。これを付けていれば、怪我をしても10回程度であれば治癒が出来ます」


「なんだって、そんな素晴らしいものがあるのか」


目を丸くする団長達。



「今回、私は聖女と呼ばれる女性と戦いますが、ものすごい魔力を放出されることが予想されます。まともに食らえば、命はありません。その為、この珊瑚には、私の魔力を無効にする力を持たせてあります。また、聖女の魔力にもよりますが、うまくいけば聖女の魔力も防げるかと!」



「なるほど、これがあれば確かに勝てるかもしれないぞ!」


今まで暗い雰囲気だった室内が、一気に活気づいた


「人数分の二倍以上作りましたので、必ず身に付ける様兵士たちに伝えてください。後、魔力が無くなると砕けますので、その際は新しい物に交換してください!」


私は後ろに山積みにされている珊瑚を指さした。


「シャーロット、まさかこれ、全部か?」


アイラン様が、あり得ないと言った表情で私を見つめた。


「そうです。後、アイラン様と団長様達にはこちらを」


私は魔力入り水晶を手渡す。


「これは、珊瑚ではないな?」


「はい、こちらは珊瑚の10倍の魔力が入った水晶です。どうか、こちらをお付けください。ただ、水晶は10個しか準備できませんでした。1個は予備ということで」



「10倍だと!シャーロット、そんなに魔力を詰め込んで大丈夫だったのか?だからずっと部屋に閉じこもっていたのか!体は何ともないのか?」


急に焦りだすアイラン様。


「アイラン様、私はピンピンしております。大丈夫ですわ」


「それなら良いのだが…」


「さあ、あまりのんびり話している訳にはいかない。今日の昼過ぎには戦いが始まる。急がないと」


アルテミル様の声で、私たちも急いで会議室を後にした。



私達は、民たちに見送られながら戦争が行われる場所へと向かう。ちなみに、私はアイラン様の馬マックスに乗せてもらって出発だ。乗馬、練習しておけばよかったわね…。


戦いの場所は、フェミニア王国とガリレゴ王国の国境沿い。そこにかなり開けた場所があるらしい。そこまで、約3時間かけて向かう。



途中で朝食を摂りながら、ゆっくり向かったが、お昼前には何とか到着した。すぐにテントを張り、この場所を我が軍の拠点とするようだ。周りは住民の気配が一切感じられない。不審に思ってオルビア様に聞いてみると、住民たちは予め王都に避難しているとのことだった。




「オルビア様、念の為、令嬢たちにも珊瑚を付けておいてもらってください」


私はオルビア様にも珊瑚を渡す。


「でも、私たちは戦いには参加しないから必要ないんじゃないかしら」


「いいえ、あの国はオルビア様が思っているよりもずっと卑怯な国です。きっと、オルビア様たちしかいない時を狙って攻めて来ますから」


それとバリアも張らないとね。でも、私のバリア、ちょっと危険なのよね…。


そうだわ、あの子たちに見張りをお願いしましょう。


出でよ。動物たち!


私が唱えると、犬、猿、鳥たちが次々と出てきた。


「シャーロット、あなた今何をしたの?」



「私たちが戦いに出た後、この拠点一帯をバリア魔法で守ります。ただし、とても危険なバリアなので、バリアには近づかないでください。万が一近づいてしまっても、ネックレスを付けているから大丈夫だと思いますが。私たちにはバリアは見えませんので、この子たちがバリアのある場所を教えてくれます」



「「「キー」」」


「「「ワン」」」


「「「クァ」」」



「わかったわ、皆にも指示しておく。それよりシャーロット、くれぐれも気を付けてね。無理しちゃダメよ」


不安げな顔のオルビア様。


「ありがとうございます。大丈夫ですよ。私の魔力量はびっくりするほど高いですから。ちょっとやそっとじゃあ無くなりませんから」


そう、魔力大国でもあるゾマー帝国1番の魔力持ちの私が、あんな卑劣な聖女なんかに負ける訳がないわ。


「シャーロット、そろそろ戦場へ向かおう。オルビア、ここは頼んだぞ」


アイラン様達が迎えに来た。


「オルビア、行ってくる」


アルテミル様はオルビア様をしっかり抱きしめた。すでに泣きそうなオルビア様。大丈夫よ、オルビア様、アルテミル様も絶対私が守るから!


「オルビア様、私が言ったこと、どうぞよろしくお願いします」


「ええ、任せて!必ず守るようにみんなにも伝えるわ」


さあ、いよいよね。腕がなるわ!


アイラン様率いる、ファミニア王国軍は、いよいよ戦場でもある広場へと向かったのであった。



~あとがき~

フェミニア王国周辺の大陸では、自分の領土に本陣を構え、国王含めみんなで戦いに出るスタイルです。そのため、戦い中は本陣には女性だけしかいません。


ちなみにファビオ様が第2部隊の軍団長、アルテミル様が第3部隊の軍団長です。そして、全ての軍団のトップが国王のアイラン様です。

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