エイリーンにライバル登場?隣国から王女が視察にやって来ました【後編】

ルナ王女とのし烈な戦いが始まって、もうすぐ1週間だ。そう、明日にはルナ王女は自国に帰る事になっている。




この戦いも、明日で終わるのだ。でも、油断は出来ないわ。最後の最後で、何かやらかして来るかもしれないものね。




そう思い、気合を入れる。今日も朝早く起きて、王宮へと向かう。




「毎日毎日大変ね。でも、後1日だから頑張って!」




メルシアお姉さまからエールを貰い、馬車へと乗り込む。




ちなみに今回の件をメルシアお姉さまに話したら




「婚約者が居る人を奪おうなんて、王女として品が無い事この上ないわ!それも他国の王族が相手だなんて!エイリーン、あのカルロ殿下の事だから大丈夫だとは思うけれど、油断は禁物よ!私も協力するから何でも言って!それとも、私がその王女に一言文句を言いに行ってもいいのよ!」




そう言ってくれたのだ。ただそれを聞いていたエイドリアンが「面倒な事には首を突っ込むな!」と、メルシアお姉さまに釘を刺したため、文句を言いに行く事は無かったけれどね。




王宮に着くと急いでカルロ様の元へと向かう。




「カルロ様、おはよう」




「エイリーン、おはよう。毎日王宮まで来て大変だろう。それも今日で最後だね。でも、こうやって毎日エイリーンと登下校出来なくなるのは、なんだか寂しいな」




そうって私を抱きしめるカルロ様。今回は私が無理を言って、1週間だけという約束で王宮から一緒に馬車で学院に通っている。そのため、明日からはまた別々の登校になる。別に一緒に登校してもいいのでは?と思うのだが、なぜかお父様が認めてくれないのだ。




「さあ、学院に参りましょう。あまりゆっくりしていると、遅刻してしまうわ」




カルロ様の手を取り、王宮の馬車へと向かう。そこへルナ王女がやって来た。




「カルロ殿下、おはようございます」




そう言うと、私と繋いでいない方の手を取った。




「ルナ王女、おはようございます。いつも言っていますが、婚約者のいる男性にむやみに触れるものではございませんよ」




さりげなくルナ王女からカルロ様を遠ざけた。




「相変わらずね、エイリーン様。こんなに嫉妬深い人が婚約者だなんて、カルロ殿下がお可哀そうですわ!」




何とでも言ってくれ!とにかく、カルロ様に気安く触れられるのは嫌なのだ。お互い火花を散らしつつ、学院へと向かった。




やっと教室に着いた。教室に居る間だけが、気が抜ける時間だ。




「エイリーン様、やっと明日あの王女が帰りますね。本当に図々しい女だったわ」




満面の笑みを浮かべているリリー。それにしても、ルナ王女の事を図々しいだなんて、さすがね。でも、やっと帰ってくれるのね。そう思うと、正直嬉しくてたまらない。




でも今日はなぜか休み時間もお昼休みも、ルナ王女は来なかった。一体どうしたのかしら?




そして放課後、カルロ様が先生に呼び出されたので、リリーとフェルナンド殿下と一緒に、教室で待つことになった。




「ねえ、エイリーン様、あの王女、今日は全く姿を現さなかったわ。怪しいと思いませんか?何か企んでいないか、私心配ですわ!」




確かにリリーの言う通りだ。なんだか嫌な予感がする。




と、その時だった!


1人の女子生徒が物凄い勢いで教室に入ってきた。




「エイリーン様、大変です。カルロ殿下が…とにかく校舎裏に来てください」




え?カルロ様が!リリーとフェルナンド殿下と一緒に、急いで校舎裏へと向かう。そこには既に凄い人だかりが出来ていた。




「カルロ様!一体どうなされたのですか?」




人をかき分け、カルロ様の元へと向かった。そこには、放心状態で座り込むカルロ様の姿と、なぜか服がはだけて涙を流すルナ王女が居た。




これは一体どういう事?




「エイリーン様、ごめんなさい!実は私、さっきカルロ様に呼び出されて“僕の事好きならいいだろ”って言われて、襲われかけたのです」




そう言って涙を流すルナ王女。




「違う、エイリーン、信じてくれ。僕はそんな事は絶対していない」




必死に無実を訴えるカルロ様。




近くに居た人の話では、ルナ王女の悲鳴を聞きつけ駆けつけると、服がはだけたルナ王女の腕を掴んでいるカルロ様がいたらしい。




「カルロ殿下!あなたエイリーン様と言う人が居ながら、なんて事をしたの!最低ね!」




隣で怒り狂うリリー。




私はそっとカルロ様の元に近づいて座り込んだ。




「カルロ様、先ほどルナ王女がおっしゃった事は本当ですか?」




カルロ様の目を見て問いかける。




「僕は本当に何もしていないんだ!信じてくれ!僕はエイリーン以外興味はない!」




「そんなの嘘よ!私を無理やり襲おうとしたじゃない!」




ルナ王女が興奮しながら叫んでいる。




「ルナ王女は少し黙っていてください!今はカルロ様に話を聞いているのです!カルロ様、ではどうしてこうなったのか、カルロ様の口から説明して頂けますか?」




カルロ様の目を見て、語り掛けた。




カルロ様の話では、先生に呼ばれた後、ルナ王女にどうしても一緒に来て欲しいと言われ、仕方なく付いて行ったらしい。そうしたら校舎裏に連れてこられて、これはまずいと思い戻ろうと思ったら、ルナ王女が急に服を脱ぎだしたとの事。慌てて止めようとしたところ、大声を出されたため、人が集まってきたと言うのが、カルロ様のいい分だ。






「そんな話、誰が信じますの?私は現に服が乱れておりますのよ!エイリーン様、これでわかったでしょう?カルロ殿下は簡単に浮気するような男です。これを機に、私に渡し…」




「ルナ王女!私はカルロ様の言う事を信じますわ!」




ルナ王女が話しているところを遮り、はっきりとそう告げた。




「あなたバカなの?状況証拠から見ても、目撃者の証言から言っても、明らかにカルロ殿下が嘘を付いていますわ。それなのに、カルロ殿下を信じるのですか?」




私に向かって叫ぶルナ王女。




「ルナ王女、私たちの絆をなめてもらっては困りますわ。私は何があろうと、どんな状況だろうと、カルロ様を信じます!今回の事で、たとえカルロ様が責任を取って廃嫡されたとしても、カルロ様から離れるつもりはありませんわ!」




ルナ王女に向かってはっきりとそう叫んだ。私を睨みつけるルナ王女。




「そうそう、ルナ王女、あなたは知らないかもしれないけれど、この学院には私の双子の兄、エイドリアンが仕掛けた映像型魔道具が、あちこちに備え付けられているの。もちろん、この校舎裏にもね。今回の様子もばっちり録画されているはずよ!そこのあなた、早速映像を分析してもらえるかしら?」




近くに居た護衛騎士に指示を出す。明らかに動揺しているルナ王女。




その時だった。




「その必要はないよ、エイリーン」




この声は




「フィーリップ様!」




なぜフィーリップ様がここに居るのかしら?




「実は僕ずっとここに居たんだよね。そうそう、その2人のやり取りも、面白そうだったからばっちりと録画しておいたんだ。はい、これ!」




にっこり笑って私に携帯式映像型魔道具を手渡すフィーリップ様。早速再生させてみると、自分から服を脱ぐルナ王女と、慌てて止めるカルロ様の姿がばっちり映っていた。もちろん、音声付きだ。ありがたい事に、携帯式のスクリーンまで準備してくれたので、野次馬たちも一緒に見ることが出来た。




「ルナ王女、これではっきりしましたわね。カルロ様はあなたを襲おうとしていなかったってね」




「どうして…どうしてあなたは最初っからカルロ殿下の事を信じたの?この状況なら、間違いなくカルロ殿下を責めるはずなのに…」




「どうしてですって?そんなもの決まっていますわ。カルロ様を心から愛し、信じているからです。たとえどんな状況であっても、カルロ様は私に嘘は付かないし、裏切ったりはしない!そもそもあなた、カルロ様の事を好きだったのではなくって?本当に好きだったら、相手を不幸にしてまで、手に入れたいものかしら?」




本当に全く理解できないわ!そこまでして手に入れても、お互い幸せにはなれないと思うのだけれどね。






「ルナ王女、我がアレクサンドル王国の王太子でもある兄上を陥れようとした事、正式に抗議させていただきますから、そのつもりで。お前たち、ルナ王女を連れて行け!」




フェルナンド殿下の指示で、座り込んで顔を抑えているルナ王女を、護衛騎士たちが連れて行った。多分、これ大問題になるわね。






「皆の者も騒がせてしまって悪かったな。とにかく、問題は解決した。後はこちらで処理を行う。さあ、皆家に帰ってくれ」




フェルナンド殿下に促され、次々と帰って行く生徒たち。




帰って行く生徒たちを見届けていると、カルロ様が後ろから抱きしめて来た。




「エイリーン、僕を信じてくれてありがとう!大好きだよ」




そう言ってギューギュー抱きしめるカルロ様。そんなカルロ様から抜け出し、カルロ様と向き合う。




「カルロ様、私は怒っているのよ!どうして私以外の女性と2人きりになったの?そもそも、ルナ王女に付いて行かなければ、こんな騒ぎにはならなかったのよ!」




はっきりとカルロ様に告げた。そうよ、私は怒っているのよ!本当に、この人はもう!




「ごめん、エイリーン」




申し訳なさそうに謝るカルロ様。あ~、もう。私って駄目ね。そんな姿を見ていると、愛おしくてたまらない。仕方ない、これも惚れた女の弱みってやつね。許してあげよう。




「カルロ様、今回だけは許してあげる!でも、次は無いからね」




そう言うと、カルロ様の頬に口付けをした。本当は唇にしたかったけれど、さすがにそれは恥ずかしいものね。




「エイリーン、ありがとう。絶対絶対もう二度と他の女性と2人きりになんてならないからね!」




そう言って再び抱き着いて来るカルロ様。そんなカルロ様がやっぱり愛おしくて、私もギューッと抱きしめ返した。




こうして、私とルナ王女のし烈なカルロ様争いは、幕を下ろしたのだった。




~あとがき~

エイリーンのカルロ様に対する信頼度はマックスです!

後もう1話、おまけがあります。

よろしくお願いしますm(__)m

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