エイリーンにライバル登場?隣国から王女が視察にやって来ました【おまけ】
「兄上、エイリーン嬢、取り込み中申し訳ないが、とりあえず王宮に戻ろう。今回の件、しっかり話し合わなければいけないからね」
フェルナンド殿下に邪魔?されて、明らかに機嫌の悪いカルロ様。そんなカルロ様を無視し、私たちを馬車へと押し込んだ。もちろん、リリーも一緒だ。
「とりあえず、騎士に予め今回の事件の事を、父上に伝えてもらう様に頼んでおいたよ。それにしても兄上、少し行動が軽率だ!もう少し王太子としての自覚を持って行動してもらいたいものだ」
フェルナンド殿下にも怒られるカルロ様。
「すまん、フェルナンド」
シュンとするカルロ様。なんだか可哀そうになって来て、カルロ様の頭を撫でた。すると、カルロ様がコテンと私の肩にもたれかかって来た。
「フェルナンド殿下、カルロ様も今回の件はしっかり反省している様なので、どうか許してあげてください」
あまり怒ったらカルロ様が可哀そうだわ。私の言葉に呆れ顔のフェルナンド殿下と、苦笑いのリリー。
そんなやり取りをしているうちに、王宮に着いた。早速陛下の待つ部屋へと向かった。部屋に入ると、陛下と王女様が待っていた。
「先ほど騎士から報告を受けて驚いた。一体なぜこんな事になったんだ!カルロ、詳しく説明しなさい!」
若干お怒りの陛下。カルロ様が今回の事を詳しく説明した。
「なるほど、確かにルナ王女の行動は非常に問題だ。この点に関しては、アメダス王国の国王に抗議をしよう。しかしカルロ、お前の軽率な行動も問題だ。そもそもお前がルナ王女に付いて行かなければ、こんな事にはならなかったのだぞ!」
陛下にも注意され、落ち込むカルロ様。
「申し訳ございませんでした」
悔しそうに拳を握りしめ、下を向いてしまったカルロ様。そんなカルロ様の手をそっと握る。
「お言葉ですが陛下、確かにカルロ様の行動は軽率だったかもしれません。しかし、ルナ王女の性格を知っていたにもかかわらず、カルロ様を1人にしてしまった私にも責任がございます。どうかカルロ様だけを責めないで下さい」
「エイリーン!」
カルロ様がびっくりして、私の名前を呼んだ。そうよ、そもそも私がカルロ様を1人にしたのも良くなかったわ!私もまだまだね。
「ありがとう、エイリーンちゃん。今回の事件で、あなたは最初からカルロの事をずっと信じていたと聞いたわ。私本当に嬉しかったのよ!それよりシリル様!確かにカルロは騙されてしまったけれど、しっかり拒んだわ!そもそも過去に浮気をしたあなたが、大きな顔をして説教できる立場ではないでしょう!」
王妃様、まだ陛下がかつて浮気した事を怒っているのね。まあ、当たり前と言えば当たり前か。
王妃様の言葉を聞き、俯いてしまった陛下。
「父上、とにかく今回の事件を見過ごす事は出来ません。早速アメダス王国の国王に抗議しましょう。もちろん、俺も付いて行きますから」
何とも言えない空気をぶった切ったのは、フェルナンド殿下だ。
「ああ、そうだな!早速行こう」
なぜかフェルナンド殿下の手を握り、部屋から出て行こうとする陛下。
「父上、気持ち悪いから離してください!兄上、何をボーっとしているのですか。あなたも一緒に来てください」
秒殺で陛下の手を振り払い、カルロ様の手を掴んで部屋を出て行ったフェルナンド殿下。陛下が少し寂しそうにしていたのは、気のせいだろうか…
残された女性陣3人。
「今回の事で本当にエイリーンちゃんには感謝しかないわ!やっぱりエイリーンちゃんね。カルロの事を心から愛してくれて、ありがとう」
王妃様が頭を下げた。
「いいえ、私は当たり前の事をしたまでです。それに、今回の事件を止める事が出来ませんでした。推しを愛する者として、失格です!」
推しを守るのが私の仕事なのに!きっとフィーリップ様にも怒られるわ。
「何を言っているのですか、エイリーン様!あの時のエイリーン様、めちゃくちゃかっこよかったですよ。あの時の悔しそうな王女の顔、思い出しただけでも笑いが止まらないわ」
悪そうな笑みを漏らすリリー。この子、漫画ではこんな性格じゃなかったんだけれどな…
その後、女性3人で大いに盛り上がった後、王宮を後にした。家に帰っても、今日の事件の話で持ちきりだった。特にメルシアお姉さまのお怒りは半端なく、今からルナ王女に文句を言いに行くと言い出したくらいだ。
もちろん、エイドリアンによって阻止されたので、実際には行っていない。どうやらこの1週間、メルシアお姉さまが暴走しない様、見張りを付けていたらしい。本人にも、“絶対に行くな”と、きつく言い聞かせていたみたいだし。
メルシアお姉さまのお尻に敷かれていると思っていたけれど、どうやらエイドリアンの方が強い様だ。
そして翌日
今日は学院がお休みなので、朝から王宮へと向かった。王宮に着くとすぐに応接室へと案内された。
そこには陛下と王妃様、リリーとフェルナンド殿下、カルロ様、さらにアメダス王国の国王陛下と泣きはらしたのか、目を真っ赤にしたルナ王女が居た。
「遅くなり申し訳ございません」
一言謝罪し、急いでカルロ様の隣に座る。
「エイリーン嬢、今回娘がとんでもない事件を起こしてしまい、本当に申し訳ない。謝って済む事ではないが、まずは謝罪をさせてくれ」
アメダス王国の陛下が私に深々と頭を下げた。どうやら昨日、かなりきつめに抗議した様で、長い話し合いが持たれたらしい。証拠が揃っている事もあり、ルナ王女も素直に犯行を認めた様だ。
そして気になるルナ王女だが、金輪際アレクサンドル王国への入国は禁止との事。もちろん、カルロ様との接触も禁止だ!本来であれば、王女としての身分をはく奪される可能性もあったが、さすがにそれは可哀そうという事で、こういった処分になったとの事だ。
「カルロ殿下、エイリーン様、本当に申し訳ございませんでした」
涙を流して謝るルナ王女。なんだか少し可哀そうな気もするわ。私はルナ王女に向かって語り掛けた。
「ルナ王女、あなたの行った事は、決して許される事ではありません。でも…あなたには少しだけ感謝しているのですよ」
「感謝?」
皆が一斉に私の方を見た。
「私は今まで、ライバルと呼べる女性がいませんでした。だから、自分でも完全に安心しきっていた部分があったのも事実です。でも今回あなたが現れて、絶対にカルロ様を奪われたくないと、強く思いました。それと同時に、どれほどカルロ様が私にとって大切かも、再認識できました。だから、ありがとうございます。私のライバルになってくれて」
魔王が封印されて物語が終わり、完全に安心しきっていた。そんな私に、再び緊張感を与え、さらにカルロ様の大切さを再認識させてくれた。そう言った意味でも、感謝している。
「あなたって、本当に馬鹿ね。こんな私に感謝するなんて…」
そう言って再び涙を流し始めたルナ王女。そっとルナ王女の元に近づき、背中をさすった。
「ルナ王女、どんな理由であれ、自分の肌を晒す事は金輪際行わないで下さい。そんな事をしたら、あなた自体の価値が下がってしまいます。それに、あなたにもきっと素敵な人が現れるはずです。その時後悔しない様に」
耳元でそっと呟いた。
「さあ、ルナ。そろそろ帰ろう!もちろん、今回の事はお前の母親や姉たちにも話をするからな。しっかり反省しろよ!」
「えっ?お母様やお姉さまにも?」
「当たり前だ!」
真っ青な顔をするルナ王女。後で聞いた話だが、アメダス王国の王妃様と第二王女はものすご~く、怖いらしい。
真っ青な顔で馬車に乗り込むルナ王女。残念ながら、もう会う事はないだろう。でも、きっと幸せになってね。初めて出来たライバル、そんな彼女の幸せを願わずにはいられないエイリーンであった。
~あとがき~
ー後日、エイリーンと王妃様の会話ー
「王妃様、どうしてルナ王女を学院に入れたり、ルナ王女の肩を持つ様な発言をなされたのですか?」
「別にルナ王女の肩を持ったつもりはないわ。ただ、あなたが嫉妬する姿をもっと見たいと思ったのよ。カルロも嬉しそうだったしね」
「だからって、学院にまで入れなくても…」
「それは私も悪かったって思っているわ。学院に入れなければ、今回の事件が起きる事も無かったものね」
一応反省はしている王妃様。
「でも、ルナ王女を学院に行かせたから、あなたも刺激的な生活が送れたでしょう!ね、エイリーンちゃん!」
「…(エイリーン)」
この人に何を言っても駄目だ。そう思ったエイリーンであった。
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