エイリーンにライバル登場?隣国から王女が視察にやって来ました【中編】

「カルロ殿下、せっかくだから、王宮を案内していただけるかしら?アレクサンドル王国に来るのは、今日が初めてなので」




そう言ってカルロ様に近づこうとするルナ王女。




「ルナ王女、王宮なら私が案内いたしますわ。女同士の方が宜しいでしょう。ねえ、リリー。3人で行きましょう」




そう言うと、ルナ王女とリリーの手を掴み、残った王族に軽く会釈をし、歩きはじめた。




「ちょっと、私はカルロ殿下に案内してもらいたかったよ」




隣でギャーギャー叫んでいるが、とにかく聞こえないふりをして王宮内に入った。そして、一旦立ち止まり、ルナ王女の方を向く。




「ルナ王女、私は次期王妃として、あなた様をもてなす様、カルロ様から仰せつかっておりますので。しっかりご案内させていただきますね」




にっこり笑って微笑んであげた。もちろん、目は笑っていない。そう、元々私は悪役令嬢として転生したのだ。少し吊り上がったこの悪役顔が、こんなところで役に立つとは思わなかったわ。さすがにビビったのか、その後ルナ王女が反論してくることはなかったのだが…




なぜかリリーまでビビってしまい


「いつものエイリーン様じゃない…」


と何度も呟いていた。




ずっと無言って言うのもさすがに気まずいわ。話題を変えましょう。




「そうそう、ルナ王女。彼女が魔王を封印し、この国を守ってくれた聖女のリリーよ。可愛い子でしょ」




少し怯え気味のリリーをルナ王女に紹介した。




「まあ、普通ね」




あら?王女様は聖女にあまり興味が無いのかしら?




「ちょっと、あなた!失礼じゃないの?普通とは何よ普通とは!」




どうやらルナ王女の発言が気に入らなかったリリーが、ルナ王女に食って掛かった。




「普通だから普通と言ったのよ。そんな事で怒るなんて、あなた本当に聖女なの?」




鼻で笑ったルナ王女。




「何なのこの王女は!大体あんな器の小さなカルロ殿下が好きなんて言う時点で、変わっていると思っていたけれどね」




ついにカルロ様の悪口にまで発展したわ。それに、私もそんな器の小さなカルロ様が前世から大好きなのだが…


私もやっぱり変わっていると思われているのかしら?




「ちょっと、カルロ殿下の事を悪く言わないで頂戴!そう言えば、あなたあの吊り目のフェル何とかっている人の婚約者だったわよね。あんな吊り目こそ、どこがいいのよ」




ついにフェルナンド殿下の悪口が出てきたわ。ちなみに私も吊り目なのだが…




「ちょっと、フェルナンド様の悪口は止めてよ!カルロ殿下より100億万倍かっこいいわよ」




「何ですって!」




さすがにこれは止めないとまずいわね。




「2人共お止めください!ここは王宮ですよ!リリー、まずカルロ様はとても魅力的よ。今度ゆっくりカルロ様の魅力を説明するわね。それからルナ王女、他国の王子の悪口は、国際問題にも発展しかねません。慎んでください!」




私の言葉を聞き、明らかにシュンとする2人を連れて王宮内を案内した。一通り案内し終えたところで、カルロ様達がやって来た。




「カルロ様!」




ルナ王女が動くより先にカルロ様の胸に飛び込む。少し品が無いが、そもそもカルロ様は私のものだ!これくらいしても大丈夫だろう。




「エイリーン、おかえり。ちゃんと案内は出来たかい?」




優しく頭を撫でてくれるカルロ様。やっぱり大好きだわ!




「はい、途中トラブルがありましたが、大丈夫でしたわ」




「トラブル?」




不思議そうな顔をしているカルロ様の横で、リリーがフェルナンド殿下にさっきの出来事をギャーギャー伝えていた。




「ちょっと、聖女!先に喧嘩を売ってきたのはあなたじゃない!」




リリーの声が大きすぎて丸聞こえだったせいか、抗議の声を上げたのはルナ王女だ。どうやらリリーとルナ王女は仲が悪いようだ。さらにひと悶着した後、私たちは各家へと帰る事になった。






正直ルナ王女を王宮に残して帰るのは、物凄く不安だ。帰り際、こっそりフェルナンド殿下を呼び出し、カルロ様とルナ王女があまり接触しない様お願いしておいた。






「まさかエイリーン嬢がここまで嫉妬深いとはね」




そう言ってクスクス笑っていたが、嫌なものは嫌なのだ。とにかくこの1週間、何とかしないと!






翌日


今日は学院がある日。とりあえず学院に居る間は、ルナ王女の事を考えなくて済みそうね。そう思っていたのだが…




なぜか学院の制服を着て現れたルナ王女。




「なぜあなたが学院の制服を着ているのですか?」




つい聞き返してしまった。




「せっかくならアレクサンドル王国の学院を見学するのもいいだろうって、王妃様がおっしゃってくれて」




王妃様!あなた私の味方じゃなかったの?




「でもルナ王女は1学年下だから、2年生の教室で授業を受ける予定だから」




すかさずフォローに入るカルロ様。て言うか、今日一緒に登校して来て居ましたよね!もう、フェルナンド殿下に2人を接触させない様に頼んでおいたのに!




フェルナンド殿下を見ると、気まずそうに目をそらされた。こうなったら仕方がない!とにかく、カルロ様から離れないようにしないと!




その日からカルロ様を巡って、ルナ王女と熾烈なカルロ様争奪戦が幕を開けた。




「カルロ殿下!お昼一緒に食べましょう」




来たわね、ルナ王女!




すかさずカルロ様の腕に巻き付き、これ以上近づくなアピールをする。




「あらごめんなさい、ルナ王女。カルロ様は私の作ったサンドウィッチを、今から私と一緒に召し上がる予定なの」




そう言ってカルロ様を連れて教室から出ようとしたのだが、もちろん相手も引き下がらない。




「それならみんなで、食堂で食べましょう!ね、カルロ殿下」




そう言い、もう片方の腕を掴んで食堂へと向かう。もちろん、カルロ様の両隣には私とルナ王女が座る。




「カルロ様、今日はカルロ様の好きな卵サンドを作って来ましたの。さあ、私が食べさせて差し上げますわ」




あ~ん、して下さい!そう言わんばかりに、カルロ様の口に卵サンドを入れる。もちろん、ルナ王女が同じ事をしようとしても、次々とカルロ様の口に私が食べ物を入れていくので、同じ事は出来ない。




「ルナ王女、早く食事をしないと、授業に遅れますわよ」




満面の笑みでルナ王女に微笑んでやった。今回は優しい方のほほ笑みだ。




ルナ王女と同じクラスのフィーリップ様に




「エイリーン、あなたやっぱり悪役令嬢の素質があるのね。漫画ほどじゃないけれど、結構な悪役ぶりよ」




と、こっそり言われた。いつもは私がフィーリップ様と話すと怒り狂うカルロ様だが、今はそれどころではない様だ。どうしていいのかわからず、よくオロオロしている。




その姿を見たリリーが




「カルロ殿下って本当に残念な男ね。あんなに普段エイリーン様の事好き好き言っているのだから、さっさとあの王女に“僕が好きなのはエイリーンただ1人だけだ”と、きっぱり言えばいいのに」




と、呆れている。




でもね、リリー。カルロ様は何度もそう言ってくれているのよ。でも、ルナ王女が聞く耳を持たないの。本当に、困った王女様だわ!




もちろん帰る時もし烈な戦いは続いている。




「どうして毎日エイリーン様が、王宮の馬車に乗り込むのですか?朝も毎日王宮まで来るし」




「どうしてって、私はカルロ様の婚約者として今回の同行に付き添う様、指示を頂いております。それにカルロ様に変な虫が付かない様、見守る必要もありますからね」




そう、私は毎朝早くに王宮に向かい、夜は遅くまで王宮に滞在しているのだ。本当は王宮に泊まり込みたかったのだが、さすがにお父様がそれだけは許してくれなかった。昔は何でも言う事を聞いてくれたのにな。




今日もカルロ様の隣をしっかりキープ。仕方なく向いに座るルナ王女。ちなみにフェルナンド殿下はどうやらこの空気が耐えられない様で、ニッチェル家の馬車に乗り込んで、リリーと一緒に視察同行の為王宮に帰ってくる。






馬車の中ではもちろん、カルロ様にぴったりくっ付いて離れない。最初はこんな私の姿をカルロ様に見られて、嫌われたらどうしようと思っていたが、どうやら私が嫉妬する姿を見るのは嬉しい様だ。私がすり寄ると、嬉しそうに頬を緩める。




私達はこんなにラブラブなのだから、いい加減ルナ王女には諦めて欲しいわ。



~あとがき~

意外と嫉妬深いエイリーン。実はカルロ様より嫉妬深かったりして(・∀・)

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