孤独だったこの場所が温かな場所へと変わった~フェルナンド視点~

※フェルナンド、リリーの新婚生活です。



リリーと婚約して早4年、やっと正式に夫婦になる事が出来た。俺は結婚と同時に臣籍降下し、公爵になった。ちなみに住まいは、以前住んでいた離宮を改築してそこに住んでいる。




もちろん、領地も与えられたので、今はリリーの兄上やエイドリアンに領地経営について学んでいる。2人共とても親切で、色々なアドバイスをくれる為、本当に助かっている。




どうやら父上も俺の事が気になる様で、事ある事に離宮に来ては、領地経営はうまく出来そうか?困っていることは無いか?と聞きに来る。さらに父上の専属として働いていた執事を俺に付けてくれた。




そして、なぜかソフィアや王妃も事ある事に様子を見に来る。特にソフィアは頻繁に来ては、なぜかリリーとギャーギャー喧嘩をして帰って行く。あの2人、実は仲良しなのかもしれない。




気になる新婚生活の方だが、リリーは俺にべったりだ。基本的に今は領地経営について勉強している為、離宮の執務室で仕事をしている。今も執務室で仕事中なのだが…




「フェルナンド様、聞いてくださいよ!カルロ殿下が私をエイリーン様に会わせてくれないの!いつ会いに行っても“エイリーンは体調が悪いから”って言うのよ。酷いと思わない?」




俺の膝の上にちょこんと座って、文句を言うリリー。最近、義姉上エイリーンの妊娠が分かって、どうやら兄上はピリピリしている様だ。義姉上を兄上がいる時以外は部屋から一切出さない様にしている様だし、監視もかなり厳しいらしい。




ソフィアや王妃も愚痴っていたな。




「わかったよ、今度俺から兄上に話しておくから。リリー、悪いが今は仕事中だ。少し静かにしているか、部屋から出て行ってくれるかい?」




可愛いリリーと一緒に居たいけれど、今は仕事中だ。集中したい。




「わかりました。でもフェルナンド様、仕事もほどほどにして、私にも構ってくださいね」




少し寂しそうに出て行くリリー。可哀そうな気もするが、今はとにかく公爵としてしっかり仕事を覚える事が大切だ。そう思い、仕事に集中する。しばらくすると、またリリーが訪ねて来た。




コンコン


「フェルナンド様。お菓子を作ったの。一緒に食べましょう」




満面の笑みで執務室に入って来た。その笑顔を見ると、ついダメだとは言えない。




「わかったよ。こっちにおいで。一緒に食べよう」




俺の言葉を聞き、嬉しそうに飛んできて膝の上に座るリリー。リリーは本当に子犬みたいで可愛い。無意識にギューギュー抱きしめてしまった。リリーも嬉しそうにすり寄って来る。




俺に初めて人の温もりを教えてくれたリリー。愛おしくてたまらない。お互いお菓子を食べさせ合いっこをしながら食べた。






仕事が終わると、リリーと一緒に夕食を食べる。リリーはおしゃべりだ。今日何をしたのか、事細かく教えてくれる。




食事が終わると、それぞれ湯あみを済ませ、夫婦の寝室へと向かう。寝室ではなぜか恥ずかしそうにしているリリー。いつもなら飛びついて来るのに、なぜかベッドの側に立ってモジモジしているのだ。




「リリー、そんなところにつっ立っていないで、さあこっちにおいで」




俺が手招きをしても、なぜか動かないリリー。どうやら恥ずかしいらしい。本当にリリーは世話が焼けるな。そう思いつつも、可愛くて仕方がない。




リリーの手を引き、ベッドへと誘導する。恥ずかしがるリリーをベッドに寝かし、ゆっくりと唇を重ねた。




既に初夜は済んでいるはずなのに、毎回顔を真っ赤にするリリー。その反応に、つい興奮してしまう。




その後はもちろん、リリーを堪能した。行為が終わった後、リリーはいつも安心したかのように、俺の腕を枕にして眠る。




実はこの時間が俺にとっては、一番幸せな時間だ。物心ついた時から、ずっと1人だった。こうやって誰かの温もりを感じながら眠るなんて、想像も出来なかった。




でも、今はリリーの肌の温もりを存分に感じて眠れる。こんな幸せな事はない。今日もリリーを腕に閉じ込め、俺は眠りに付いた。






そんな穏やかな生活を送っていたある日、リリーが妊娠していることが分かった。




「フェルナンド様、私のお腹に赤ちゃんがいるのよ。私たちの子供よ」




嬉しそうにお腹をさするリリー。でも、それと同時に辛いつわりが始まった。俺は早速兄上や王妃に相談し、食べられそうなものをリリーに食べさせる。




辛そうにしながらも、いつも嬉しそうにお腹をさすっているリリーを見ていると、なんだか温かい気持ちになる。




安定期に入ると、リリーのつわりも落ち着き、義姉上の元へ、ちょくちょく遊びに行くようになった。どうやら、義姉上に赤ちゃんのお世話や出産時の話などを聞きに行っている様だ。




俺も父親になった時慌てない様に、エイドリアンや兄上に、子供について色々と教えてもらっている。






リリーのお腹はどんどん大きくなり、ついに臨月を迎えた。




「フェルナンド様、このお腹見て。この子凄くよく動くのよ。ほら」


リリーのお腹がグニュグニュ動いている。




「本当だ、きっとリリーに似て元気な子だね」




俺はそう言ってお腹をさすると、ポンっと蹴られた。本当に元気な子だ。早く生まれておいで。そう願いながら何度もお腹をさすった。




そしていよいよリリーが産気づいた。苦しむリリーの側について、俺も必死に背中をさする。そして、明け方無事産れた。




銀色の髪にブルーの瞳をした可愛らしい女の子だ。産まれたての子は、エイドリアンや兄上が言っていた通り、小さくて壊れそうだ。それに温かい…




「リリー、お疲れ様。この子の名前はどうする?」






「名前はフェルナンド様が付けてください。フィーサー家もエイリーン様のところも、男性陣が付けたと聞きましたわ」


にっこり笑って答えたリリー。




「分かったよ。それなら君は今日からリーネだ」




「リーネ、可愛い名前だわ」


リリーも喜んでくれた様で、ホッとした。そして午後、図々しく王族一同がリーネを見にやって来た。




「リーネ、なんて可愛いのかしら。おばあちゃまよ」




嬉しそうにリーネを抱く王妃。その横で、私にも抱かせてくれと、父上がウロウロしている。




「いじわる聖女にしては、かわいい子を産んだじゃない。やっぱりフェルナンドお兄さまのいでんしがいいのね」




「何ですって!」


相変わらずソフィアとリリーは喧嘩をしている。




「本当に可愛いわね。髪の色はフェルナンド様、瞳はリリーに似たのね」




王妃からそっと奪い取った義姉上が、リーネを抱っこして嬉しそうに笑っている。ちなみにカイルとカレンはメイドが見ている様だ。




「本当だ、顔はフェルナンドに似ているな。エイリーン。僕にも抱っこさせて。それにしても、小さいし軽いな」




兄上も嬉しそうに抱っこしている。




「そうだわ、フェルナンド。新しくメイドを雇ったの。もちろん、出産経験者よ。これでリリーちゃんも安心して子育てが出来るはずだわ。もちろん、私にも頼ってもらっていいのよ」






どや顔で報告してくるのは、王妃だ。なぜかこの人、最近俺の事を本当の子供の様に接してくる。そして、リリーとも仲良しだ。




本当に、人というものは変わるものだ。




何だかんだでリーネを堪能していった王族一同は、満足して帰って行った。今日は疲れているからと、娘を気使ったニッチェル伯爵家は明日来るとの事。




「リリー、家の一族が申し訳なかったね。普通当日は遠慮するものなのに」




「いいえ、いいのよ。皆リーネを可愛がってくれていたし。それに、陛下や王妃様が嬉しそうにリーネを抱いてくれて、私とっても嬉しかったの。もうこれで完全に確執は無くなったんだなって思って」




「リリー、ありがとう」




リリーはずっと俺の家族との関係を心配してくれていた。本当に優しい子だ。




「ホンギャー」




「あら、リーネが泣き出してしまったわね」




「いいよ、俺が見るよ。リリーは休んでいて」




リーネを抱っこし、ゆっくり揺らすとスヤスヤと眠った。本当に可愛いな。




それにしても、この場所離宮ではずっと1人で過ごしていた。でも今はリリーやリーネが居る。孤独だったこの場所も、これからは家族の笑い声が絶えない幸せな場所になる。リリー、孤独だったこの場所を温かい場所へと変えてくれてありがとう。これからも、親子3人、幸せに暮らそうね。



~あとがき~

王妃様を母上と呼ぶことが出来ないフェルナンド様。でも、実はもう母と認めているのも事実。


素直になれないお年頃ですね。


リーネも誕生し、ますます賑やかになってきました。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る