私あの人と結婚したい!~メルシア&エイドリアン馴れ初め編~
「メルシア、今度アレクサンドル王国に行く事になったの。私はいけないから、あなたがお父様と行ってきなさい。」
お母様に呼び出されたと思ったら、来週行く予定のアレクサンドル王国にお父様と一緒に私も行けという話だった。
「もしかしたらアレクサンドル王国に、素敵な殿方がいるかもしれないわよ」
素敵な殿方か。私は今年15歳。第二王女だというのに、まだ婚約者がいない。その事を、お父様もお母様もかなり気にしているようだ。そのため、何とか私を婚約させようと、何人かの令息を紹介されたが、どの人もパッとせず断り続けている。
正直結婚なんて興味が無いのよね。このまま自由に生きたいけれど、王女という身分がそれを許さない。
アレクサンドル王国か…面倒くさいな…
そう思いつつも、お父様に連れられてアレクサンドル王国へと足を運んだ。出迎えてくれたのは、国王陛下、王妃様、そして王太子のカルロ殿下だ。ちなみにカルロ殿下には最愛の婚約者がおり、1年ほど前に王太子就任と婚約発表会が大々的に行われた。
まあ、正直私にはどうでもいいことだ。王妃様と王太子に案内され、今日は騎士団の練習風景を見せてもらうことになった。
正直、男ばっかりのむさくるしい騎士団なんて興味が無い。そう思っていたのだが…
騎士団の練習風景を見学している時、ふと1人の少年に釘付けになった。燃えるような赤い髪、美しいエメラルドグリーンの瞳の美少年が、木刀を持って次々と向かってくる騎士たちをなぎ倒していく。
あんなに美しい少年なのに、なんて強いのかしら。私の鼓動は一気に早くなり、心臓がドキドキする。いわゆる一目ぼれという奴だ。
「ねえ、あの赤い髪の男の子は誰?」
隣にいたカルロ殿下を捕まえ、彼の事を聞く。
「彼はフィーサー公爵家の嫡男、エイドリアンだよ。」
私の勢いに若干引き気味のカルロ殿下。エイドリアン様と言うのね!
「ねえ、エイドリアン様は婚約者とかいるの?歳はいくつ?」
私はさらにカルロ殿下に詰め寄る。
「エイドリアンには婚約者はいないよ。歳は僕と同じ13歳」
13歳か。私の2歳下ね。でも、2歳くらいなら許容範囲よ。それに、婚約者がいないなんて、これはもう運命だわ。
しばらく見つめていると、どうやら休憩時間になったようで、皆練習場の周りに座って休憩を始めた。
よし、今がチャンスね。私は他の騎士たちと休憩しているエイドリアン様に近づく。
「おい、メルシア。どこに行くんだ?」
後ろでお父様が叫んでいるが、今はそれどころではない。無視しておこう。
私はエイドリアン様にそっと近づいた。
「あの、エイドリアン様ですよね?」
私が声をかけると、ゆっくりとこっちを振り向く。ヤダ、目が合ったわ!
「そうだけれど、君は?」
キャー、声も素敵!
「私は、シュメリー王国から参りました、第二王女のメルシアです。あの、もしよかったらお話しませんか?」
私がそう言うと、周りにいた騎士たちが気をきかせてどこかへ行ってくれた。よし、2人きりね。
「シュメリー王国の王女様が、俺に何か用?」
少し戸惑ったようなエイドリアン様。そんなエイドリアン様の素敵ね。
「単刀直入に申します。私、あなたに一目ぼれしました。どうか、私と婚約してください!」
ちょっとストレート過ぎたかしら?でも、やっぱり気持ちははっきり伝えないとね。
「えっと…そう言うのは親を通じてやるものじゃないのかな?」
急に真っ赤になったエイドリアン様。照れるエイドリアン様も素敵ね。
「確かにそうかもしれません。でも、私は権力を使ってエイドリアン様を手に入れたくはないのです。だから、まずはエイドリアン様に、私の事を知ってほしくて」
私は、エイドリアン様に自分の事をとにかく話した。黙って聞いてくれるエイドリアン様。でも、すぐに休憩時間が終わってしまい、エイドリアン様は練習に戻って行ってしまった。
戻る寸前
「あの、明日もここに来ても良いですか?」
私はエイドリアン様に向かって叫んだ。
「ああ、別に構わないよ」
エイドリアン様はそう言うと、にっこりと笑った。その笑顔がとにかく素敵ね!
王宮に戻っても、私の頭の中はエイドリアン様でいっぱいだ。あんな素敵な人、これから先絶対出会えない。何とかして、エイドリアン様の心を掴まないと!
ちなみにお父様は
「メルシアはフィーサー公爵令息が気に入ったようだね。私から公爵に話をしようか?」
と、ニヤニヤしながら言ってきたが、権力を使ってエイドリアン様を手に入れたくないとはっきり伝えた。
そう、私はエイドリアン様の心も欲しい。だから、絶対自分で振り向かせるんだ!
それからというもの、毎日毎日騎士団の練習場に向かい、朝から夕方まで張り付いた。そして、隙さえあればエイドリアン様に話しかける。
周りからも
「エイドリアン。もう王女と婚約しちゃえよ」
なんて言葉も飛ぶぐらい、私は騎士団内で顔を売った。でも、ずっとアレクサンドル王国にいられる訳ではない。今回の滞在期間は1週間。そして、明日はいよいよシュメリー王国に帰る日だ。
私はいつもの様に、朝から練習場に張り付いた。すると、何人かの令嬢が話しかけてきた。
「あの、ちょっといいですか?」
何だろう?私は令嬢たちに連れられ、練習場の裏手に行く。
「あなた、最近ずっとエイドリアン様にべったり引っ付いて、目障りなのよ」
1人の令嬢が私に文句を言って来た。
「エイドリアン様だって、あんなにべったりくっ付かれて、迷惑しているのよ。でも、あなたが王女だから邪険にも出来ずに、本当にエイドリアン様が可哀そうだわ!」
迷惑している?確かに私はここ数日、ずっとエイドリアン様にべったりだった。でも、本人からは迷惑なんて言われたことは一度もない。
「それって、エイドリアン様本人が、迷惑だって言っていたの?」
「本人が言った訳ではないけど、見ていればわかるわよ!」
「そう、単なるあなた達の思い込みなのね。第一なぜあなた達にとやかく言われないといけないの?あなた達もエイドリアン様が好きなの?」
疑問に思ったことを投げかける。
「エイドリアン様が好きだなんて!エイドリアン様は私たちにとって、雲の上の人なのよ。そんな人を、好きだなんて言える訳ないでしょう」
「なんだ、好きって言う勇気のないのに、私に文句を言いに来たの?私はエイドリアン様が大好き!世界で一番好きなの。この気持ちは誰にも負けないわ!」
私は令嬢たちに向かって叫ぶ。なぜか令嬢たちが私の後ろを見て固まっている。
誰かいるの?
ゆっくり後ろを振り向くと、そこには顔を真っ赤にしたエイドリアン様が立っていた。そして、私を庇う様に令嬢達と私の間にやって来たエイドリアン様。
「君たち、彼女がシュメリー王国の王女だと知っていて、こんな場所に連れて来たのかい?一歩間違えれば、国際問題にも発展しかねないんだよ!」
エイドリアン様の言葉に、ヤバいと思ったのか令嬢たちは「すみませんでした」と一言言って去って行った。
あの子たち、一体何だったのかしら。
「メルシア王女。嫌な思いをさせて申し訳ございませんでした」
頭を下げるエイドリアン様。
「頭をあげてください。私は何とも思っていませんから。それに、私がさっき言った気持ちは…」
「それ以上は言わないでください!」
私が気持ちを伝えようとした時、エイドリアン様に止められてしまった。あぁ、さっきの令嬢たちが言っていた通り、やっぱりエイドリアン様は私の事迷惑だって思っていたのね。でも、私が王女だから気を使って話してくれていたんだわ。ついそんな事を考えてしまい、うつむいてしまう。
「メルシア王女、顔をあげてください」
エイドリアン様の言葉で、私は恐る恐る顔をあげた。
「メルシア王女。あなたの飾らないまっすぐな性格、思ったことは包み隠さず伝えるところ、俺より年上なのにちょっと頼りないところ、いつも楽しそうに笑っている笑顔、全てが愛おしいと感じています。
最初は戸惑うこともありましたが、あなたと過ごすうちに、あなたへの思いがどんどん膨らんでいきました。こんな俺で良ければ、ぜひ婚約をしていただけませんか?」
エイドリアン様…
これは夢かしら?まさか、エイドリアン様からこんな嬉しい言葉を聞けるなんて。私の目から、とめどなく涙が溢れる。
「エイドリアン様。私で良ければ、ぜひお願いします」
私の言葉を聞き、嬉しそうに笑うエイドリアン様。そして、ギューッと抱きしめてくれた。
エイドリアン様の温もりが体中に伝わる。私、絶対この人から離れない。この人を絶対幸せにして見せる!そう誓ったメルシアだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます