双子の赤ちゃんのお世話は大変です
双子の赤ちゃんを出産した翌日、王妃様や陛下、うちの両親、エイドリアン家族、フェルナンド様とリリー、ソフィア王女が赤ちゃんを見に来た。
ちなみに赤ちゃんの名前だが、男の子が“カイル”女の子が“カレン”だ。どちらも名前は父親でもあるカルロ様が付けてくれた。
「まあ、本当に可愛いわ。それにしても、瞳と髪の色は違うけれど、カイルは本当にカルロの赤ちゃんの時にそっくりね」
カイルを抱っこしながら、嬉しそうに笑う王妃様。
「瞳の色は私に似たんだな。ビクトリア、私にも抱かせてくれ」
そう言って王妃様から何とかカイルを奪い取ろうとしているのは陛下だ。
「ちょっと、お父様もお母様もずるいわ。私にもさわらせて」
必死に手を伸ばして、カイルに触ろうとしているソフィア王女。
「ちょっと王妃様、独り占めは良くないわ。私にもカイル様を抱っこさせてください」
「ちょっと、いじわる聖女。あなたは最後でいいでしょ」
「なんですって!」
「ホンギャー」
「おい、お前たちが騒ぐからカイルが泣き出しただろう。よしよし、お父様ですよ」
王妃様から奪い取って、あやし始めたのはカルロ様だ。
「兄上、俺にも抱っこさせてください」
すかさずカルロ様からカイルを奪い取ったのはフェルナンド様。
「おい、フェルナンド、大事に扱えよ」
隣で不安そうにカルロ様が見ているが、意外と上手に抱っこするフェルナンド様。
「ちょっと、フェルナンド様、ずるいわ。私も抱っこしたいのに」
「そうよ、お兄さまだけずるいわ」
王族サイドはかなり賑やかだ。
ちなみにフィーサー家では。
「カレンは本当にエイリーンの赤ちゃんの時にそっくりね。可愛いわ」
「本当だ、エイリーンによく似ている、可愛いな」
お父様とお母様が代わる代わるカレンを抱っこしている。
「メルシアちゃん、エイドリアン、アランは私が見ているから、あなた達もカレンを抱っこしてあげて」
お母様がエイドリアンからアランを受け取り、エイドリアンがカレンを抱っこした時だった。
「メェーーーー!ウェェェェェン」
アランがお母様の腕から抜け出し、よちよち歩きで何とかエイドリアンの元へたどり着くと、足にしがみついて泣き出してしまった。
カレンを私に渡すと、アランを急いで抱っこするエイドリアン。
「どうしたんだい?アラン」
エイドリアンが抱っこすると泣き止んだが、ギューッとエイドリアンの首にしがみついている。
「あらあら、きっとカレンに嫉妬しちゃったのね」
そう言って笑うのはお母様だ。ちなみにメルシアお姉さまがカレンを抱っこした時も、同じように泣き出してしまった。
どうやら、両親が自分以外の子供を抱っこするのが許せないらしい。
「さあ、今度はカレンを抱かせてちょうだい」
王妃様がカレンを抱っこしようと、フィーサー家サイドにやって来た。
代わりにフィーサー家にはカイルが来た。
「ほら、アラン、カイルだぞ。可愛いだろ?」
今度はエイドリアンがアランを抱っこし、お母様がカイルを抱っこした状態でアランに見せている。
不思議そうに見つめるアラン。お互い赤い髪同士、こうやって見ると2人はよく似ているわ。
その後も両家族とも存分にカイルとカレンを堪能した様で、満足げに帰って行った。
「やっと静かになったね。それにしても、カイルもカレンも良い子だったな。えらいぞ」
カルロ様が嬉しそうに2人に話しかける。しかし、次の瞬間
「「ホンギャー」」
同時に泣き出してしまった。慌てて1人づつ抱きかかえ、必死にあやすが中々泣き止まない。
オムツもきれいだし、授乳はさっき済んだわ。一体どうしたのかしら。しばらく抱っこしていると、泣きつかれたのか腕の中が気持ちいいのか、スヤスヤと眠った。
「カルロ様、カイルが寝たわ」
「こっちも寝たよ」
ゆっくりベビーベッドにおろす。よし、何とか成功だ!
ちなみにアレクサンドル王国では、基本的に王族や貴族であっても自分の子供は自分で育てる。後、日本では里帰り出産なんてものもあるが、この国では基本的にそう言ったものはない。もちろん、私にはアンナを始め専属メイドがいるので、彼女たちが2人の面倒を見る手伝いもしてくれる事になっている。そのため、特に心配していなかったのだが…
赤ちゃんってこんなによく泣くものなのね。特に夜になると、いつ眠るの?というくらい泣く。1人が泣けば、もう1人も泣く。やっと寝たと思ってベビーベッドに置けば、すぐに起きてまた泣く。
背中に何かセンサーが付いているのかしら?そう思うくらい、よく泣くのだ。本来であれば、アンナ達に任せてゆっくり休めばいいのだが、何分アンナ達は独身で出産経験がない。カイルとカレンをどう扱っていいのかわからない様なのだ。
それに、カイルとカレンは私たちの子供だ。出来るだけ自分たちで育てたい。そんな思いから、何とか必死に子育てをしていた。それにしても、子育てってこんなに大変なのね…
そんな日々が2週間ほど続いたある日。
「王太子妃様、顔色が悪いです。昨日も、夜ほとんどお眠りになっていないのではありませんか?今日はお2人は私たちが見ますので、少しお休みください。このままでは、王太子妃様が倒れてしまいます」
アンナにそう言われたが、正直彼女たちに預けるのは不安がある。
「ありがとう、アンナ。でも大丈夫よ。カルロ様も寝不足の中、頑張っているのですもの。私だけ休むなんて申し訳ないわ」
「わかりました。でもお2人は今ちょうどベビーベッドでお休みです。今のうちに、少しでも休んでください」
「そうね、そうさせてもらおうかしら」
そう言ってベッドに横になろうとした時だった。
「ホンギャーーー」
カレンが泣き出してしまった。慌ててカレンを抱き上げる。隣で寝ていたカイルまで起きて泣き出してしまったわ。隣ではアンナがカイルを抱っこしてあやしているが、中々泣き止まない。
周りのメイドもオロオロしている。私がしっかりしなきゃ、そう思ったのだが、なぜか今日は中々泣き止んでくれない。もう、どうして泣き止んでくれないの。目からジュワっと涙が沸き上がる。
その時だった。
「あらあら、随分と元気ね」
「お母様!王妃様も」
お母様と王妃様は私の方に来ると、カイルとカレンをそれぞれ抱っこし、あやし始めた。すると、すぐに泣き止んだ。どうして私が抱っこしても泣き止まなかったのに!そんな思いが込み上げる。
「エイリーン、あなたは頑張りすぎよ。もっと周りに頼りなさい!母親が心にゆとりがないと、この子達も不安になってしまうでしょう?」
にっこり微笑むお母様。確かにそうだ、でも…
「私もね、あなたとエイドリアンが赤ちゃんの時、本当に大変だったわ。でも、私は協力してくれる人みんなに頼ったわ。だって、初めての子育てで、わからないことだらけだったんだもの。頼れるものは頼らなくっちゃね」
「そうよ、エイリーンちゃん。私も公爵夫人も、この子たちにとっては祖母に当たるのよ。私たちも一緒に子育てに参加させてもらえないかしら?だってこんなに可愛い孫がいるのですもの。もっと面倒を見たいわ」
「王妃様…」
「それにしても、カルロが選んだメイドたちは揃いも揃って独身だもの。子供のあやし方なんか、わからないわよね。それでね、新たに出産経験者のメイドを3名追加で雇ったの。もちろん、カルロには許可を取ったわ。夜どうしても夜泣きが辛い時は、彼女たちを頼ると良いわ。あなたが倒れてしまったら、カイルとカレンが困るものね」
「王妃様、ありがとうございます…」
今までため込んでいた物が一気に溢れて、私は人目をはばからず泣いてしまった。優しく背中をさすってくれる王妃様とお母様。
その日を境に、私は皆に頼ることにした。それにしても、王妃様の雇ってくれたメイドたちは、本当に子供をあやすことになれている。
「あなた達もいずれ結婚して子供が出来た時、今みたいにオロオロしなくて済むように、しっかり覚えておきなさい」
と、アンナ含め私の専属メイドたちにもビシバシ指導している。
最近では度々、昼間はお母様と王妃様、夜はメイドたちに2人を預けているおかげで、心にゆとりが持てるようになった。最初は辛かった育児も、今は楽しいとさえ思えるようになったわ。
そうそう、最初は頑なにメイドに2人を預けるのを拒んでいたカルロ様だったけれど、最近では頻繁に預けようとする。
「よく考えたら、こうやってエイリーンと2人きりになれる時間って、物凄く大切だよね」
何て言っている。このままだと、近いうちに3人目が出来るかもしれないわ。カルロ様、どうかカイルとカレンがせめて1歳になるまでは、3人目をつくるのは控えて欲しいわ。
カイルとカレンの可愛らしい寝顔を見ながら、そう願うエイリーンであった。
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