双子の男の子と女の子が誕生しました
私の妊娠が分かったその日、早速国王陛下と王妃様に2人揃って報告に行った。私の体調を気遣ってくれたカルロ様が、1人で報告に行くと言ってくれたが、せっかくなら2人の喜ぶ顔を見たい!そう思い、体調は思わしくないものの、2人で報告に行ったのだ。
「まあ、エイリーンちゃんのお腹に赤ちゃんですって!それも双子!なんてめでたいのかしら。私もついにおばあちゃんになるのね!」
めちゃくちゃ喜んでいる王妃様。
「カルロ、お前も父親になるんだから、もっとしっかりしないとな」
陛下もニコニコしている。
「エイリーンちゃん、カルロが浮気しないようにしっかり見張っておくからね!元気な赤ちゃんを産んでちょうだい!」
意気込む王妃様。隣で陛下が物凄く気まずそうな顔をしている。
「母上、僕を父上と一緒にしないでください!僕はエイリーン一筋です!」
カルロ様の言葉に、俯いてしまった陛下。なんだか気の毒ね…
「でもね、あなたはあの人の血を受け継いでいるから…」
ジト目で陛下を睨む王妃様。陛下はいたたまれなくなったのか、小さな声で「すまん…」
とつぶやいた。
「とにかく、エイリーンは今体調が良くないんです。報告が終わったので、僕達は自室に戻ります!」
そう言うと、カルロ様は私を抱きかかえ、自室へと向かう。
「カルロ様、自分で歩けますわ」
「何を言っているんだ!エイリーンに何かあったら大変だ。僕が部屋まで運ぶから!それにしても母上め。僕が浮気なんてする訳ないだろ!父上と一緒にしないで欲しい!」
どうやら、陛下と一緒にされたことがお気に召さないカルロ様。
そのまま寝室へと連れて行かれ、ベッドに寝かされた。
「エイリーン、君のご両親には僕から伝えておくよ。君も心細いだろうから、公爵夫人には近々王宮に来てもらえるよう、お願いしておくからね」
「カルロ様、ありがとう!」
優しい夫に恵まれて、私は本当に幸せね。それにしても、この気持ち悪いの、いつまで続くのかしら。ずっと車酔いしているみたいね。
そして、翌日、カルロ様から報告を受けたお母様とメルシアお姉さま、アランがお見舞いに来てくれた。
「エイリーン、おめでとう。双子の赤ちゃんを身ごもったんですってね」
今日も気持ち悪くてベッドから起きられない私の為に、カルロ様が特別に夫婦の寝室での面会を認めてくれた。
「お母様、ありがとう。でも、とにかくずっと気持ち悪くて、ほとんど何も食べられないの」
「私もあなた達を身ごもった時、そうだったわ。でも、特製のみかんゼリーなら食べられたの。今日は料理長に作ってもらって来たから、食べてみて!」
お母様が私にみかんゼリーを渡してくれる。ゆっくり口に含む。あれ、美味しい。なんだか食べられそう。私はパクパク食べていき、あっという間に完食してしまった。
「みかんゼリー、食べられたわ。それに少し気持ち悪いのも落ち着いたみたい!」
「エイリーン、それは良かったわ。つわりの時は、食べたいものを食べたいだけ食べればいいからね。私もそうだったし」
メルシアお姉さまがにっこり笑ってそう言った。
「あう~~」
お姉さまに抱かれていたアラン。どうやらみかんゼリーが気になるようで、めちゃくちゃ狙っている。
「アラン、これはエイリーンのだからダメよ」
メルシアお姉さまがアランに言い聞かせるが…
「ふえぇぇぇぇん」
泣き出してしまった。
「良いのよメルシアちゃん、沢山あるからアランにもあげて。ごめんね、アラン。あなたも食べたかったわよね。さあ、おばあちゃまのところにいらっしゃい」
完全に孫馬鹿と化したお母様。アランを膝に乗せると、みかんゼリーを与え始めた。
「なんか、お母様がごめんなさい…」
私はメルシアお姉さまに謝った。
「こっちこそ、なんかごめんね。また様子見に来るから」
この日は、みかんゼリーを置いて、3人は帰って行った。少し疲れたので、横になって休んでいると…
「これはあっちに置いてくれ、それはこっちだ」
カルロ様の声、一体何をしているのかしら?どうやらカルロ様の自室から聞こえてくる。おかしいわね、今は仕事の為に執務室に居るはずなのに…
しばらくすると、カルロ様が寝室にやって来た。
「エイリーン、今日から僕は自室で仕事をすることにしたよ。そうすれば、いつでもエイリーンの様子が見られるだろう」
ニコニコ顔のカルロ様。
それからというもの、カルロ様は基本的に自室で仕事を行い、事ある事に寝室を覗きに来るようになった。そして、ちょっとでも私の様子に変化があると、慌てて医者を呼ぶ始末…
お医者様から「殿下、いい加減にしてください!」と、終いには怒られていた。
私への面会も、カルロ様の徹底管理の元、行われている。もちろん、リリーは入室禁止令が出ている為、妊娠してから一度も会っていない。
たまに寝室の外で、カルロ様とリリーがギャーギャー言い争っている声が聞こえるのだが、気のせいだろうか。
そして辛いつわりもみかんゼリーで何とか乗り切り、妊娠7ヶ月を迎えた。この頃の私のお腹は、メルシアお姉さまが臨月だった頃とほとんどかわらないくらい大きくなった。
体調も良くなったこともあり、昼間は王宮の庭を散歩するのだが、必ずカルロ様が付いて来る。というより、カルロ様がいないときの散歩は禁止されている。
以前カルロ様不在の時、メルシアお姉さまが私を散歩に連れて行ってくれたのだが、それが気に入らなかったようで、それ以降メルシアお姉さまとの面会は、カルロ様がいる時の30分と決められてしまった。
「カルロ殿下はちょっとエイリーンを束縛しすぎよ」
と、メルシアお姉さまは怒っていた。
そして、気になるリリーだが、話し相手が居なくて寂しいと私が訴えたのと、フェルナンド様からもカルロ様に苦情が行ったようで、週に1回、30分だけ面会が認められた。
「相変わらず器の小さな男!」
と、リリーは怒っていたが、会えるようになっただけでもいい方ね。
リリーやメルシアお姉さま、お母様や王妃様、ソフィア王女が代わる代わる私の話し相手になってくれる。そのため、毎日退屈することなく過ごせている。
そして、なんだかんだで妊娠9ヶ月を迎えた。私のお腹ははち切れんばかりに大きくなっていた。ちなみに、リリーもフェルナンド様の子を身ごもっており、今妊娠3ヶ月。絶賛つわり真っ最中だ。
「おーい、お父様だぞ!聞こえるか?お、今お腹を蹴ったぞ!」
大きくなったお腹を撫でながら声をかけているのは、カルロ様だ。お医者様からは、少し早いがそろそろ産まれるかもしれないと言われている。お母様も妊娠9ヶ月で出産している為、いつ産まれてもおかしくない状況なのだ。ただ早産になる為、赤ちゃんが小さい可能性があり、その点は心配している。
「おーい、お父様もお母様も君たちに会えるのを楽しみにしているよ」
カルロ様がさらに話しかける。と、その時、水の様なものが漏れるのを感じた。
あれ?もしかして、ちびってしまったかしら?
「カルロ様、少しおトイレに行ってきますね」
トイレに向かう間も、チョロチョロと何かが出ている。これってもしかして…
「カルロ様、破水したかもしれません。お医者様を呼んでいただけますか?」
私の言葉に一瞬目を丸くしたカルロ様だったが、すぐに医者を呼びに行ってくれた。やはり、部分破水していたようで、すぐに出産の準備に取り掛かった。
でも…あれ?陣痛が来ない…
先生曰く、破水しても陣痛が中々つかないこともあるらしい。
結局その日は、陣痛が来ることはなかったのだが、次の日の朝、ついに陣痛が始まった。最初は30分間隔ぐらいで来ていた痛みも、徐々に間隔が狭まり、痛みが強くなる。
痛い、とにかく痛い!
「おい、エイリーンは大丈夫なのか?このまま死んだりしないよな」
私がめちゃくちゃ苦しんでいるのを見て、カルロ様が先生に詰め寄る。
「殿下!邪魔です。ギャーギャー騒ぐならつまみ出しますよ!」
先生に怒られ、不満げなカルロ様。
「エイリーン、頑張れ!頑張れ!」
それでもめげずに私を励ましてくれている。ごめんなさい、カルロ様。今は痛すぎて、あなたに構っていられないわ!
「王太子妃様、赤ちゃんが出たがってますよ!ゆっくり深呼吸して一気にいきんでください」
先生の指示に従い、何度も何度もいきむが、中々出てこない。と、その時。
「ホンギャーー」
産まれた!でも、まだ痛い。
「王太子妃様、もう1人います。もう一度いきんでください」
そうだった!私は再びいきむ。
「ホンギャーーー」
もう1人も無事産まれた。
ふと窓を見ると真っ暗だ。どうやら出産は夜までかかったらしい。
「おめでとうございます。男の子と女の子の双子ですよ。ただ、やはり1ヶ月早く出て来たので、少し小さめではございますが、今のところ健康状態には問題なさそうでございます。」
そう、やっぱり小さいか…
先生が、私の横に赤ちゃんを並べてくれた。男の子の方は、赤い髪に赤い瞳をしている。女の子の方は、金髪の髪にエメラルドグリーンの瞳だ。
「エイリーン、よく頑張ったね。本当に可愛い子供たちだ」
カルロ様は私のおでこにキスを落とすと、双子たちを交互に抱っこした。
出産を終えてホッとしたのか、急に眠気が襲って来たわ。私はそのまま、ゆっくりと眠りについたのであった。
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