番外編

初夜を迎えました

幸せに包まれた結婚式&パーティーも終わり、クタクタになって王宮の自室へと戻ってきた。


今日から私が暮らす部屋は代々王太子妃が使っていた部屋で、ものすごく豪華だ。




「王太子妃様、お疲れ様です。早速湯あみをいたしましょう」




「アンナに王太子妃様と呼ばれると、なんだか恥ずかしいわね」


そう、専属メイドのアンナも、私の輿入れのタイミングで、王宮のメイドになった。アンナは男爵令嬢で今年24歳、本来ならとっくに結婚していてもおかしくない年齢だ。




きっとアンナのお父様も娘を心配していると思い、やんわりと王宮には付いてこなくてもいいよ!と伝えたのだが




“私は死ぬまでお嬢様のお世話をします。結婚には全く興味がないと父にも話してあるので、問題ありませんわ。お嬢様、私を捨てないでください!”


と、凄い勢いで言われてしまい、そのままアンナを私の専属メイドとして一緒に来てもらうことになったのだ。




ただ私は王太子妃ということもあり、アンナ以外にも専属メイドが5人も付いている。専属メイドたちは皆年が近いせいか、すぐに仲良くなったとアンナが話していた。




今もアンナ含め、6人のメイドに体の隅々まで洗われている。湯あみが終わると、ものすごくいい匂いのする香油を全身に塗りたくられながら、髪の毛を拭かれ、ネグリジェを着せさせられた。




6人もいると、あっという間ね…


それにしてもこのネグリジェ。なんだが少し透けていない?気のせいかしら。




「王太子妃様、こちらのお部屋で殿下をお待ちください」




アンナ達メイドが案内してくれたのは、私とカルロ様の寝室だ。私の部屋とカルロ様の部屋は寝室に繋がっていて、部屋からすぐに寝室に行けるようになっている。






恐る恐る寝室に入る。まだカルロ様は来ていないようだ。寝室には、5人は余裕で寝られるほどの大きなベッドがおいてあり、夫婦でティータイムを楽しめる様、テーブルとソファーも準備されている。そしてこの部屋もかなり広い。




「王太子妃様、こちらにお飲み物を置いておきますので、殿下がいらっしゃるまでどうぞおくつろぎ下さい」




アンナがにっこり笑って部屋から出て言った。おくつろぎくださいって、くつろげる訳ないでしょ。




前世から大好きだったカルロ様と、ついに結ばれるのよ。それに前世の私は、異性とお付き合いを経験しないまま死んでしまった。もちろん、こういった経験もない。すべてが初めてなのだ。




お母様やメルシアお姉さまは、“そんなもの、男に任しておけばいいのよ”なんて言っていたけれど、不安しかないわ。




ついつい部屋の中をウロウロしてしまう。とにかく、アンナ達が準備してくれたお茶でも飲もう。そう思い、お茶を入れて飲むが、やはり落ち着かない。




ガチャ


ドアが開く音が聞こえる。きっとカルロ様が来たのね。恐る恐るカルロ様の部屋に繋がっているドアの方を見ると、そこには白い絹のネグリジェに身を包んだカルロ様が立っていた。




「エイリーン、待たせちゃったかな?ごめんね」


少し恥ずかしそうにこちらにやってくるカルロ様。ネグリジェ姿のカルロ様も素敵ね!て、そんなこと考えている余裕なんてないわ。どうしよう、とうとうカルロ様が来ちゃったわ!




呆然と立ち尽くす私の手を掴み、ベッドへと誘導された。




「エイリーン、やっと今日、エイリーンは正真正銘僕のものになるんだね。この日をずっと待ちわびていたんだよ」




カルロ様はにっこり微笑む。この場合、私もよ!とか言うものなのかしら?でもそんな事言うのって、なんだかはしたなくない?どうしていいかわからず、真っ赤な顔をして俯いてしまった私。






「エイリーン、緊張しているのかな?可愛いね」




カルロ様はそう言うと、私のおでこにキスをする。さらに赤くなる私。でもこれ以上の事をこれからするのよね。こんなことで赤くなっていてはいけないわ!




「カルロ様、私大丈夫です。どうかカルロ様のお好きなようになさってください!」


急に私が叫んだからか、カルロ様は大きく目を見開いた後、笑い出した。


あれ?私変な事言ったかしら?緊張しすぎて敬語になってしまったから?




「エイリーン、優しくするね。僕の可愛いエイリーン!」




カルロ様は言葉通り、それはそれは私を優しく扱ってくれた。そう、本当に優しくゆっくりと!初めてのことだらけに戸惑いつつも、カルロ様と一つになれたことに感動し、つい涙を流してしまった。




「エイリーン、痛かったかい?ごめんね」




心配そうに私の顔を覗き込みカルロ様。




「大丈夫よ。泣いたりしてごめんなさい!カルロ様と結ばれたことが嬉しくて」




私はつい本音を言ってしまった。




「エイリーン!!!君はなんて可愛いんだ!」




どうやらカルロ様のスイッチを入れてしまったようで…その後は大変なことになってしまった。






~翌日~


「う~ん…ここは?」


目を覚ますと、見覚えのない天井がある。なんだか体中が痛いわ。




「エイリーン、やっと目が覚めたんだね」


この声はカルロ様!そうだ、昨日はカルロ様と…


現実に戻った私は、真っ赤な顔をして布団に潜り込む。




そもそも私、裸なんですけれど!




「エイリーン、隠れないで出てきて。可愛い顔を見せてよ」


カルロ様に言われ、ゆっくり布団から顔を出す。カルロ様も裸の様で、美しい腹筋が見える。華奢な体なのにしっかり鍛えているのね。




「体は大丈夫かい?昨日少し無理をさせてしまったから」


そうだわ!




「カルロ様の嘘つき!優しくするって言ったのに」


頬を膨らませ、抗議する。




「ごめんね!でもエイリーンが可愛いから悪いんだ。そうだ、今日と明日は休みだから、2日間たっぷり愛しあおうね、エイリーン!食事もこの部屋で運ばせれば、わざわざ部屋から出る必要もないし!」




カルロ様はものすごく嬉しそうにそう言うと、私を腕の中に閉じ込めた。直に感じるカルロ様の温もり。大好きなカルロ様と2日間ずっと一緒に居られるなんて、よく考えたら物凄く幸せよね。




でも…私の体、持つかしら?




カルロ様の宣言通り、2日間2人が部屋から出てくることはなかった。

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