第7話 エイドリアンをバカにする人は私が許しません

声の方に行ってみると、そこには今回の主催者の息子ダニエルと、その他3人の男の子がいた。


「絶対におかしいですよ、ダニエル様ではなくエイドリアンが選ばれるなんて」


「そうですよ、実力的にはダニエル様の方が上なのに」


ん?何の話をしているんだ?


話の内容がよくわからないので、私はさらに耳をすませた。


「まあまあ、今回の騎士団の選手は先生自ら選んだんだから、仕方ないよ」


「ダニエル様は優しすぎるんですよ。絶対エイドリアンが父親に頼んで選手にしてもらったんですよ」


話の内容から、どうやら騎士団に関係があるようだ。


はっ?何こいつら!そもそもエイドリアンがお父様に選手にしてほしいなんて頼むわけないじゃない、誰よりも正義感が強く努力家のエイドリアンが!!


「大体公爵令息ってだけでろくに努力もせずに選手になれるんだから、ほんと俺らなんてやってられないですよね。大体どう見てもダニエル様の方が実力も上なのに」


「父上~僕絶対選手に選ばれたい~お願い~父上」


「「「ワハハ やめろ」」」


1人がエイドリアンの真似?をして残り3人が笑っている。


「ぶっちーーーーん」


さすがに堪忍袋の緒が切れた私は、4人の前に飛び出した。



「ちょっと~~さっきから黙ってきてれば、随分エイドリアンのことひどく言ってくれるじゃない!!」


いきなりの私の登場にたじろぐ4人


「いや…これは…違うんです…」


「何が違うのよ、大体選手を決めたのは先生なんでしょ!先生があんたよりエイドリアンの方が実力があると認めたからエイドリアンが選ばれたんでしょ!


それをグチグチグチグチと男のくせにみっともない。それも影でコソコソ言うなんて、女々しいったらありゃしないわ!」


「おい、やめろ」


エイドリアンが慌てて私たちの方に向かってくるのが目に入ったが、もう止まらない!



「大体エイドリアンは誰よりも努力家なの、朝も早くから練習してるし、夜も遅くまで稽古しているのよ、それにエイドリアンは曲がったことが大っ嫌いで誰よりも正義感が強いの!だからお父様にお願いして選手にしてもらうなんて、ぜっっっったいしないんだから~~~」



「わかったから、もうやめろって」


エイドリアンに腕を掴まれて、はっと我に返った。


4人は「すみませんでした~」と叫んでどこかへ行ってしまった。


やってしまった…


こんなことしたら、今後エイドリアンが騎士団で肩身の狭い思いをするかもしれないのに…


そう思ったらとめどなく涙があふれてきた


「ごめん…エイドリアン、私…ごめんなさい。こんなことしたら、エイドリアンの立場がもっと悪くなるよね…ホントごめんなさい」



泣きながら謝ることしかできない私に、エイドリアンは優しく頭を撫でてくれた。


「騎士団での立場なんてどうでもいいよ…それに…俺のために嬉しかったし…」


えっ、


ぱっと顔を上げると真っ赤な顔のエイドリアンと目が合ったが、すぐにそっぽを向いてしまった。


「エイリーンも疲れただろ、今日はもう帰ろう」


そういうと、エイドリアンは私の手を取って歩き出した。



「うん、でもやっぱりあいつらは許せないわ」と鼻息荒くして怒っていると


「ぶっ」


急にエイドリアンが笑い始めた。なぜ笑われているのか全く分からないのだが…


ひといき笑った後


「やっぱりエイリーンは変わったね」


そういってエイドリアンがほほ笑んだ。


もしかして、エイドリアンと仲良くなれた感じ?


その後会場に戻った私たちは、主催者であるオリエンダル侯爵に挨拶をして家路についた。


馬車の中は相変わらず無言、でも行きと違って、この無言もなんだか心地いい。


そう感じるのは私だけかな…


そして今日はとにかく疲れた。馬車の揺れって本当に気持ちいいのよね…ダメだ…眠い


気が付くとエイドリアンにもたれかかって寝てしまったエイリーンであった。

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