第6話 お茶会に参加します

私は今エイドリアンと一緒に馬車に揺られてある場所に向かっている。


兄妹で招待されたお茶会に参加するためだ。


今回はフィーサー家と古くから交流がある、オリエンダル侯爵家が開催するお茶会。


「はぁ~」


ついついため息が漏れてしまう。


まだエイドリアンとの仲は全く改善されていないため、馬車の中は非常に気まずい。


何か話した方が良いのかな?でも無視されそうだし…


そもそもこのお茶会に招待されてから今日にいたるまで、エイリーンは苦労の連続だった。




それはさかのぼること数週間前のこと。


「エイリーン、こちらへいらっしゃい」


お母様に呼ばれ、広間に行くとデザイナーと宝石商が来ていた。


「今度オリエンダル侯爵家のお茶会に招待されているでしょ。その時に着ていくドレスと宝石を決めなくちゃね」


そうだった。


以前の私はお茶会が開かれるたび、ドレスと宝石を大量に買い込んでいたのだ。もちろんどれも超高級品ばかり。その中から気にいった物を当日着ていく。


選ばれなかったドレスや宝石たちは、タンスの肥やしとなっている。



「気持ちはありがたいけど、少し前に新調したドレスや宝石があるから、今回は大丈夫よ。デザイナーさんと宝石商の方たちには申し訳ないけど、今回は帰ってもらって」


エイリーンの言葉にお母様は大パニック!


「エイリーンがドレスと宝石を新調しないなんて」と医者まで出動する始末になってしまったのだ。


もちろん異常などあるわけない。


そもそもいくら公爵家の財産がたくさんあるからって、こんなに散財を繰り返していてはいつかは破産する。


現に漫画では、エイリーンの散財のせいでお父様は悪事に手を染めたのだ。


その後も何度も「ドレスと宝石を本当に新調しなくてもいいの?」と聞いてくる両親を根気強く説得した。


「お父様、お母様、お金というのは降ってわいてくるわけではありません、領民たちが汗水流して収めてくれた税です。そんな大事なお金を、もっと大事に使いたいと私は思います。それにどうしても必要な時はきちんとドレスも宝石も新調するから。」



領民の税なんて言葉、7歳の女の子にはちょっとふさわしくないかなっと思ったけれど、中身は成人した立派な大人だからその点は見逃してね。



そう思っていたが両親は「エイリーンは本当に心優しい子だ」と涙を流して喜んでいたから、まあ良しとしておこう。



こうして散財を無事とめることができたけど、さてこの馬車の中の気まずい空気…どうしようかな?


そんなことを考えていると、馬車が止まった。どうやら目的地に着いたようだ。



オリエンダル侯爵家はフィーサー公爵家と引けを取らない立派な造り、特にバラ園が素晴らしいのだ。後でゆっくり見せてもらおう。


そう考えているとオリエンダル侯爵と、その息子ダニエルが出迎えてくれた。


「エイドリアン殿、エイリーン嬢よく来てくれたね」


「こちらそこお招きいただきありがとうございます」


侯爵のあいさつに、すかさずエイドリアンが答える。私も最近習ったばかりのカーテシーを決める。


「今日は子供だけの気軽なお茶会だ、二人とも楽しんでいってくれ」


そう言い残して、侯爵は屋敷に戻っていった。


ダニエルとエイドリアンは騎士団で一緒らしく、楽しそうに話している。そんな二人の後ろを歩きながら、お茶会会場へと進んでいった。


さすがバラ園が魅力のオリエンダル侯爵家、色とりどりのバラが咲いた園庭が今回の会場だ。


会場に着くとすかさず令嬢たちが近づいてきた。


「まあエイリーン様、お久しぶりですわ」


「今日もとっても素敵なドレスですわね」


「さすがエイリーン様」


絶対的権力を持つ公爵家のエイリーンに少しでも媚を売ろうと、まあ褒める褒める。


昔の私なら「当然よ」とご機嫌で答えるところだけど、今は正直面倒くさい。


「まあ。ありがとう、あなたのドレスもとても素敵ね」


なんて当たり障りのない会話を繰り返していく。


ホントお茶会って何が楽しいのかしら、疲れるだけじゃない…


しばらくの間令嬢たちと話をしていたが、さすがに疲れてきた。


「少し疲れたみたいだわ、私はこれで」


そういって令嬢たちと別れた。


せっかくきれいなバラがたくさん咲いてるんだもの、お庭の散策でもしようかしら。


赤・ピンク・白・水色など本当に色とりどりのバラが咲いている。


ゆっくり歩いていると、物陰に隠れているエイドリアンを見つけた。


あら?かくれんぼでもしているのかしら


そう思って近づくと、男の子たちの話し声が聞こえてきたのだった。

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