第4話 エイドリアンと仲良くなるのって難しい

でもエイドリアンと仲良くなるにはどうしたらいいのかしら?


前世では元々兄弟仲は良かったし…


喧嘩しても次の日にはけろっと忘れてまた一緒に遊んでいたし…


う~ん。



コンコン


「失礼いたします。お嬢様ご夕食の時間でございます」



悩んでいたところに、専属メイドのアンナが声をかけてきた。


両親も待っているし、とりあえず夕食に行くとしましょうか。



「ありがとう、今行くわ」


そう声をかけると、アンナも一瞬びっくりして目を見開いていた。


そんなに私の「ありがとう」が珍しいのか…


使用人たちにも今までひどい態度をとっていたもんね。


きっとエイリーンに対する使用人たちのイメージも最悪なんだろうな。


その点もおいおい改善していかないとね。


食事場所に行くと、すでにお父様・お母様・エイドリアンが席についていた。


「遅れてごめんなさい」


そういうと3人はまたびっくりしたように目を見開いた。


そうか、「ごめんなさい」も珍しいわよね…


今までの私って一体どんな人間だったのよ…


「気にすることはないよ、エイリーン。さあ食べよう」


お父様の掛け声で食事はスタートした。


さすが公爵家の夕食、どれも豪華でとにかくおいしい。まるでフランス料理のフルコースだ。


夢中で食べていると


「エイリーンが野菜を食べるなんて珍しいわね、どうしたの?いつも残すのに」


不思議そうにお母様が声をかけてきた。


お父様もエイドリアンも不思議そうにこっちを見ている。


確かに今までの私なら、「なんで野菜が入っているのよ!」と文句を言って残していた。



でも本当においしいんだもの。そもそも食べ物を残すなんて、勿体ないわ。


前世では「作ってくれた人に感謝し、残さず食べる」がモットーの家庭で育ったせいもあり、残すなんてありえないのだ!



でも昨日まで食べられなかったんだから怪しまれるかな?


「食べてみたら意外とおいしかったから…これからは残さず食べるわ」


苦し紛れな言い訳をしてみたが、大丈夫かな?


「そうなのね!それはよかったわ。でも無理はしなくてもいいからね」


「はい!お母様」


とりあえずごまかせたみたい。


それにしても本当においしいわね、この料理!


そうこうしているうちに、デザートが出てきた。今日のデザートは、イチゴを使ったタルトの横に生クリームが添えてある。


なんておいしそうなの!!


そうだ!このいちごのタルトをエイドリアンにあげれば、関係も修復するかも!


名付けて“餌付け作戦”。


「ねえ、エイドリアン、このとっても美味しそうないちごタルト、あなたにあげるわ」



さあ、こんなおいしそうないちごのタルトを上げるのよ、私に感謝して!そう思っていたのに…


ちらっとこちらを見たエイドリアンは、一言


「いらない」


「いらない」ですと!!


前世の兄なら一発で機嫌がなおるのに…なぜ?


「ごちそうさまでした」


そういうとエイドリアンは自分の部屋へと戻ってしまった。


こうしてエイリーンの餌付け作戦は失敗に終わった。


その後も何とかエイドリアンに絡んでみるものの、反応はよろしくない!


敵は中々手ごわいわね!そしてエイドリアンを追いかけまわしているうちに、あることに気づいた。エイドリアンはとにかく努力家、早朝はもちろん、夜遅くまで剣の稽古をしている。


「本当にエイドリアンって頑張り屋さんなのね」


もちろん私もエイドリアンを追いかけまわしているだけではない。本来の目的でもあるカルロ様を守るという使命を果たすため、日夜奮闘中なのである。

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