第3話 家族ももちろん大切です

ん?なんだか廊下が騒がしい気がするけど、何だろう?



「「エイリーーーン」」


勢いよくドアが開いたかと思うと、お父様とお母様が飛び込んできて、私はお父様に抱きしめられた。



「エイリーン、体調が悪くて寝込んでいると聞いて、心配で心配で飛んできたよ!


体の調子は大丈夫なのかい?私のかわいいエイリーンに何かあったら、もうお父さん生きていけないよ」


横ではお母様が涙目でうなずいていた。


そういえばエイリーンは両親から溺愛され甘やかされて育ったんだったっけ。


前世では両親は共働きなうえ、うちは兄弟も多かったからこんな風に心配された記憶ってあんまりないな…


あっ、だからって孤独だったとかってことは全くなかった。祖父母もたくさんの兄弟もいたしね。


「エイリーン、大丈夫かい?」


物思いにふけっていたせいで、お父様が心配そうに顔をのぞき込んできた。



「お父様、お母様、心配かけてごめんなさい。体調が悪いわけじゃなくてちょっと考え事をしてただけだから大丈夫よ。夕食にはちゃんと行くから」



「考え事って何か嫌な事でもあったのかい?誰かに意地悪されたのか?もしそうなら言ってごらん。お父さんが懲らしめてやるから」



懲らしめるって…だから漫画の世界のエイリーンは何か気に入らないことがあるたびに「お父様に報告するから」って言ってたのね…



「お父様本当に何でもないの、夕食まで少し休むわ、心配してくれてありがとう」



なぜか私が「ありがとう」といった瞬間、両親は一瞬大きく目を見開いたが、すぐに


「わかったよ、ゆっくりお休み」


と言って、部屋を出て行った。


今までのわがままなエイリーンなら絶対「ありがとう」なんていわないもんね…



それにしてもエイリーンの両親は本当に娘を溺愛しているのよね。



エイリーンが望むものは全て与えていた結果、公爵家は財政難に陥り、悪事に手を染める。エイリーンがヒロインを毒殺し裁かれるタイミングで、両親もその罪を問われ、爵位をはく奪され平民に落ちる。


私って大切な家族も不幸にしていたのね。そもそもエイリーンが散財さえしなければ、


お父様も悪事に手を染めることはしなかったんだろうから、やっぱりエイリーンのせいよね。



確かに娘に甘すぎる両親だけれど、私にとっては大切な家族。お父様もお母様も私が守ろう。



家族と言えば、忘れてはいけない存在がもう1人、エイリーンの双子の兄、「エイドリアン・フィーサー」だ。



エイリーンと同じ赤い髪にエメラルドグリーンの瞳を持つフィーサー家の嫡男。


幼いころから騎士団に入団していたこともあり、正義感が強く曲がったことが大嫌いなエイドリアンは、漫画でもフィーサー家唯一まともな人間として描かれていた。



エイドリアンは、我が儘で傲慢でヒステリックな妹と、そんな妹を甘やかし続ける両親を毛嫌いしていた。



実はエイリーンがヒロインを毒殺しようとしたときの証拠を見つけたのも、父親の不正を暴いたのもエイドリアンだ。



そんなエイドリアンは、妹と両親の事件の後、その功績が認められ騎士団長に指名されたが、正義感の強い彼は家族を止められなかった責任を感じ、1人旅に出てしまうのだ。



ちなみに強烈な妹を近くでずっと見ていたせいで、女性不信になってしまったというエピソードもある。



エイドリアンもエイリーンに人生を壊された1人なのよね…


前世では兄2人、姉1人、弟1人の5人兄弟だった私。喧嘩することもあったけれど、辛い時や嫌なことがあった時、守ってくれたのもまた兄弟。



やっぱり兄弟っていいよね。


それにエイドリアンと良好な関係を築いておけば、後々カルロ様の手助けにもなるかもしれないし!


よし!エイドリアンとの関係修復も今後の課題の1つにしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る