最終章 第32話
そういえば拓哉のスマホが長く鳴ってたんだっけ。
それで私が目を覚ましたわけで。
「電話?
でなくて良かったの?」
「今からかけ直すよ。」
拓哉が電話をかける。
「もしもし、さっきゴメン。
すぐ出られなくて。」
「こっちこそゴメン。
雪夏ちゃんと一緒だった?」
拓哉のスマホから聞こえたのは軽部先輩の声。
「一緒だよ。」
「そっか、邪魔してゴメン。
「どうした?」
「さっき、拓哉も無理してたよな?」
「え?」
「俺達の為にしてくれたんだよなって。」
「あぁ……。」
「ゴメンな。」
「別にいいよ。
お前達が仲良くしてくれたら、俺も雪夏も嬉しいから。」
「そうか。
ありがとう……。」
「うん。」
拓哉の嬉しそうな表情に、私も嬉しくなる。
「率直に言っていい?」
「え?」
「あのさ……。
拓哉も雪夏ちゃんも、あんな色っぽい顔するんだって思って……。」
「え?」
「俺も苑香ちゃんもドキドキしたって言うか……。」
「……。」
「何か俺ら、緊張してドキドキしてたんだけど、そういうんじゃないドキドキって大事だなって。」
「うん……。」
「まぁ……凄く興奮させられたと言いますか……。」
「そうか。」
「うん。
ちょっと苑香ちゃんが話したいって。」
苑香にかわるみたい……。
「佐藤先輩?」
「うん。」
「軽部先輩が今、言った通りなんですけど……。」
「うん。」
「私、雪夏があんなに色っぽいって知らなかったんです。」
「まぁ……友達には見せない表情だよね?」
「はい……。
佐藤先輩は時々あんなふうに雪夏を見てるのは知ってたんですけど……。」
「そうなの?」
「はい。
雪夏を見てたら、私までドキドキしちゃって。」
「俺だってドキドキするよ?」
「そうなんですね。
何か余裕あると思ってました。」
「余裕なんてないよ。
一回フラれてるとさ、不安にならない?」
「なりますなります!」
「でも……本気で好きなら忘れられないし、フラれても嫌いになれないじゃん?」
「分かります!」
「俺も苑香ちゃんも頑張ってるよな。」
「頑張れてますかね?」
「大丈夫。
俺はちゃんと認めてるよ。」
「佐藤先輩……。
何か泣けて来ました。」
「軽部に慰めてもらって?
こっちも貰い泣きしそうな人いるから。」
「フフッ、すみません……。
雪夏の事、お願いします。」
「うん。
軽部の事、宜しくな!」
「はい!」
「何かあったら言って。」
「はい。
ありがとうございます。
軽部先輩がお邪魔だから、そろそろって。」
「邪魔じゃないよ。
でも二人の時間大切にしなよ?」
「はい。
それでは、失礼します。」
「うん、またね!」
通話が終わる。
「雪夏、泣いてるの?」
「……。」
「泣いてないけど。
苑香の声が明るくなってて……。」
「そうだね。
欲求不満がどうこう言ってた時とは別人だな。」
「そういう事はしっかり覚えてるんだから!」
「他も覚えてるよ。」
「ふーん。」
「適当に返事するなよ?」
「適当じゃないもーん。」
「コラッ、マジで襲うよ?」
「襲ってよ!」
「え?」
「その驚いた顔、大好き!」
「あぁ…もう。」
私達はこうやって笑い合うのが本当に幸せって……。
ちゃんと気付いて、大切にして行かないといけないね。
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