最終章 第30話

拓哉のアパートに着いて。

玄関のドアを閉めた時。


「ちょ、こんな所で……。」


拓哉が私を抱きしめた。


「雪夏。」


「ん?」


「お前も……その……。」


「え?」


「アイツらみたいに悩んだりしたの?」


「それ、ここで話す事じゃないよ。

部屋に入ろう?」


私は何事も無かったかのように部屋に入る。

本当は……今すぐにでも……。

だけど、聞きたい事があった。


「ねぇ、拓哉。」


「ん?」


「拓哉は奥さんに専業主婦でいて欲しいの?」


「はい?」


「佐藤家は専業主婦が何とかって。」


「あぁ……。

それ、じいさんの口癖だったヤツな。」


「口癖?」


「うん。

今は専業主婦を養うので精一杯だし、子供が欲しいなら奥さんに働いてもらうしか無いよな。

でも、そういうの関係なく本人が働きたいなら無理しない程度に働けばいいさ。」


「そうなの?」


「うん。

ってか、奥さんって言い方違和感あるけど?

俺、雪夏以外、嫁にもらう気は無いんですけど?」


「ゴメン。」


「謝らなくていいよ。」


「そっか……。」


「それ、悩んでたの?」


「悩んでたと言うか……。

仕事続けたいから、辞めろって言われたら結婚出来ないかもって……。」


「そりゃ、お前の体の調子が悪いとかで働くって言うなら辞めろって言うよ。

でも、そうでなくて働きたいなら、別にいいじゃん?

でも辞めろって言われたら結婚しないの?」


「……。」


「雪夏さぁ、一人で抱えるのやめてよ?」


「え?」


「ちゃんと話し合おう?」


「……。」


「俺はお前のやりたいようにさせてあげたい。

雪夏だって、俺のやりたいようにさせてあげたいって思わない?」


「思うよ!」


「そうだろ?

だから、どうしてもって言うなら、ちゃんと話し合おう。

スッキリするまで付き合うから。」


「拓哉……。」


拓哉が微笑みながら、私の頭を撫でる。

ホッとする。


「そんで、雪夏は、アイツらみたいな悩み無かったの?」


「うーん。」


「ちゃんと聞くから。」


「本当はね、ちゃんと出来てるか不安で……。

私だけ奉仕されてるみたいな?

私もしてあげた方がいいのかな?

みたいな……。

ゴメン、恥ずかしいわ……。」


「俺は今まで通りでも構わないよ。

でも雪夏からしてくれたら……嬉しいかも?」


「……。」


拓哉が照れくさそうに笑ってる。


「拓哉、ありがとう……。」


私からのキス。

自分からって、どうするんだっけ?

適当でも良いか!

勢いでしてしまったけど……。

唇が触れた瞬間に体が痺れるような……。

自分からするのって、受け入れて貰えると満たされた感じが半端ない。


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