最終章 第29話

「拓哉、続きは家で話すから、家まで送ってくれる?」


「オーケー!」


拓哉は車を走らせる。

チラッと後ろを見ると、軽部先輩と苑香が手を繋いでいるのが分かった。

公園から軽部先輩達の家は近くて、すぐに着いた。


「拓哉も苑香ちゃんもゴメン。

ありがとう。」


「ううん。

あっ、そうそう、軽部さぁ、俺が前に貸したビデオみたいな事は禁止な!」


「え?」


「乱暴にしたら喜ばないよ?

ソフトタッチ!」


「そういう事、女子の前で言うなよ!」


「だって、苑香ちゃんもソフトにって言ってたじゃん?」


「そうだけどさ!」


「ちゃんと不満は解消してあげろよ?」


「分かってる!」


軽部先輩は恥ずかしそうだったけど、何か苑香が凄く嬉しそうに軽部先輩を見ている。


「苑香、頑張ってね!」


「雪夏、ありがとう!」


苑香の表情が明るくなっていて嬉しい。


「さーて、俺達はどうする?」


「どうします?」


「私、欲求不満なのって言われたいな。」


「はぁ?」


「誘ってるじゃん、それって?」


「言いません!」


「チェッ。」


「舌打ちするな!」


「こわーい!」


「怖くない!」


拓哉と言い合いしながらも、車はどこかへ向かっている。


「え?

もしかして学校?」


「うん。」


私達の通っていた高校に向かっている。


「夜の学校って怖いよね。」


「俺は平気だけどな。」


高校の前に車をとめる。


「これ勝手に入ったら防犯カメラとかあるのかな?」


「あるんじゃない?

警備員とかいるのかも?」


「マジか。」


私達は校門の前に立った。


「雪夏。」


「ん?」


「俺達、この学校に入って良かったよな。」


「うん。」


「でもさ、高校時代に戻って、別れないようにやり直したいや。」


「うーん、でも、違うタイミングで別れたかもよ?」


「そうか?」


「うん。」


「どっちにしろ、やり直すって?」


「そうね。

そうだったらいいね。」


「そうに決まってるだろう?」


拓哉が私を抱きしめる。


「ちょっと……。

拓哉、心臓ドッキドキじゃん?」


「やっぱ、友達の前でキスとか、緊張するわ。」


「え?

平気そうだったじゃん?」


「平気じゃねーよ。

でも今なら誰もいないから平気だよ?」


拓哉の手が私の顔に触れた。


「目を反らすなよ。」


「恥ずかしい……。」


「さっきはゴメン。

相談もなく、キスしようとして。」


「え?」


「俺達がキスしたら、向こうもしたくなるかなって。」


「したくなったかな?」


「最初からしたかっただろう?

でも今でも緊張するって軽部が悩んでて。」


「その話をカフェで?」


「うん。」


「さすがにお前達が来るのが想定外だったけどな。」


「うちらだって。」


「でも解決するっぽいし、良かったな。」


「うん。」


「ちょ、そういう目で見るな!」


「え?」


「キスしてって言ってるように見える。」


我慢してたと言わんばかりのキス。

激しいけど……嫌じゃない。


「雪夏、このまま連れて帰っていい?」


「うん……。」


車に乗って、あっと言う間に拓哉の住むアパートに着いた。






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