最終章 第15話
夜勤最終日が終わり、もう帰るだけ。
「お疲れ。」
「お疲れ様です。」
拓哉が迎えに来ていた。
「顔色悪いな。
大丈夫か?」
「さっき、生理が……。」
「そっか。
腹巻きとかしたらどうよ?」
「え?」
「姉ちゃんが生理中はお腹と腰を温めるとラクって、腹巻きしてたんだよ。」
「へぇー……。」
「何だよ、そのやる気ない返事。」
「腹巻きなんてした事ないよ。」
「じゃあ、俺が抱っこして、温めてやろうか?」
「ヤダヤダ!」
「ヤダって、どういう事だよ!」
相変わらず私達は言い合っている。
「朝から元気だね。」
「あっ、良子さん、おはようございます!」
「おはよう。
仲良さそうでいいね。」
「ハハハ……。」
笑ってごまかしてるけど、仲良さそうって言われるとニヤニヤしたくなる。
「ねぇ、あの食品売場、どうしてあの配置にしたの?」
「あぁ、あれはですね、高齢のお客様がよく買われる物が一番下だと危なくて……。
いっつもボトボト落としてるんで、思いきって変えてみました。」
「そうね。
配置を変更したので、分からない事は店員までって書いてあったよね。
私も変更を知らなくて、御客様と一緒に探したのよ。」
「すみません。
一応レジの配置表には書いておいたのですけど……。」
「あぁ……見てなかったわ。」
「店長が申し送りしておくって言ってたのですけど。」
「あぁ……私、あの子の話を聞いてないわ。」
「アハハ……。」
「私、腰を悪くしてから、取りづらい物があるのよね。」
「あの……私、次は早番なので一緒に売場を見直しましょう!」
「本当?
ありがとう。
もーう、佐藤さん、この子泣かせたら、私が許さないからね!」
何故か突然、拓哉に話をふる良子さん。
思わず笑ってしまった。
「嬉し泣きは沢山させたいですけど、悲しいとか辛いとかで泣かせたくないですね。」
「何か最近佐藤さん、前よりイケメンになったわよね?」
「え?」
話が噛み合わず、拓哉が混乱している。
「いつも寝不足で疲れてて、何か知らないけど雰囲気が暗かった。
優しいっていうのは知ってたけど、本当はもっと華やかな雰囲気だったのね。」
「華やかですか?」
「うん。
店長がいっつも笑ってジャレ合ってる高校生カップル見て、あぁ……戻りたいなって言ってたのを思い出して。
あの時の笑顔に戻ったわね。
あのカップル貴方達だったのかって、やっと気付いた。」
「見られてたんですね?」
「うん。
若かりし頃にあんなふうに幸せそうに過ごせたら、そして未来もそうだったら。
羨ましいわね。」
「自分も店長や良子さんみたいに優しい先輩になりたいですよ。」
「まぁまぁ、この人ったら。」
良子さんにバシッと背中を叩かれた拓哉。
やり過ぎですよとは言えないけど苦笑していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます