最終章 第13話
「何をそわそわしてるんです?」
「と、轟さん……。」
「そろそろ、配送が来る時間ですね。
休憩して来て良いですよ。」
「でも……。」
「貴女は不規則勤務だから、彼と中々時間を合わせられないでしょう?」
「はい……。」
「大丈夫ですよ。
僕は義弟に幸せに過ごして欲しい。
荒れてた頃も見てたのでね、余計に。」
「そうなんですね?
私、頑張ります!」
「頑張らなくていいって。
ねっ、拓哉君」
「え?」
振り返ると拓哉が後ろに立っていた。
「すみません、伝票。」
「ほら、小豆沢さん、行っておいで。」
「はい。」
拓哉と一緒に店の奥へ向かう。
「はい、伝票。」
「お疲れ様です。」
「あのさ?」
「はい……えっ?!」
拓哉に腕を引っ張られる。
そして、キス……。
「拓哉……仕事中……。」
「あと、もう少しだけ……。」
長いキス……仕事中なのに……。
でも、こうなるって、きっと轟さんも分かってた。
「充電完了。」
「え?」
「本当は……したいんだけどね。
ほら、安全運転しないとね。
「もーう、本当に気を付けてよ!」
「うん。」
「ねぇ?」
「ん?」
「もう一回して?」
「コラコラ……。
しょうがないな。」
私って、こんな女だったっけ?
自分からキスをねだった事なんてあったっけ?
拓哉がそれにこたえてくれる。
キュンとする。
「雪夏……。」
「そんな目して、店に立つなよ?」
「え?」
「誘ってんの?って思われるぞ!」
「え?
そんな目?」
「轟さんがいるし、あの人は襲ったりしないだろうけどな。」
「そうだね?」
「でもあの人、昔は女遊び激しかったんだよな?」
「え?」
「今は落ち着いてるけど、元総長。」
「バイクで走るアレ?」
「うん。
今時珍しいリーゼントだった。」
「嘘?!」
「本当だよ。
お前、轟さんをジロジロ見るなよ?」
「うん……。」
「それじゃあね。」
「うん、また。」
一気に現実に引き戻された。
あぁ……戻りづらいけど、戻ろう。
「あっ、雪夏ちゃん!」
「お、お姉さん?!」
仕事に戻ると店内に拓哉のお姉さんが!
「拓哉……拓哉君、今、行ったばかりです。」
「無理しなくていいよ。
拓哉って呼んでるんでしょ?」
「はい……。」
「私も名前で呼んで欲しいな。」
「裕美さん……で良いですか?」
「うん。」
裕美さん、何をしに来たんだろう?
「じゃあ、私、帰るね。」
「夜遅いですけど大丈夫ですか?」
「車だから平気!」
「そうなんですね?
気を付けて!」
「うん。」
裕美さんが帰った。
「すみません、びっくりさせましたね?」
轟さんが申し訳なさそうにしている。
「どうかしたんですか?」
「ちょっと喧嘩をしてしまってね。
仲直りせずに、仕事に来たんだけど、気になって眠れないから決着つけに来たと……。」
「仲直りしたんですか?」
「はい。」
「良かったですね!」
「はい。」
轟さんが嬉しそうで良かった。
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