最終章 第12話
今日から夜勤。
「こんばんは。」
「こんばんは。
小豆沢さん、ちょっと良いですか?」
轟さんが早めに来て、私を待っていたみたい。
「実は僕達の結婚にあたり、専務に相談した所、うちの本社に来年の四月から入社する事になりまして。」
「え?
本社?!」
「はい。
店長でも良かったんですけど、不規則勤務になるというので、本社へ。」
「それって、私と一緒に働くということですか?」
「そうですね。
貴女は本社勤務を希望されているんですよね。」
「はい。
宜しくお願い致します。」
「こちらこそ。」
轟さんが深々と頭を下げている。
「それでですね、お伺いしたいのですが。」
「はい。」
「僕達、すぐではありませんが、結婚式を予定しているんです。」
「はい。」
「貴女は拓哉君と結婚されるのですか?」
「いずれ、そうしたいですが、仕事もしたいと思っているし、すぐには出来ないです。」
「それでは拓哉君の御両親に挨拶を考えたりは?」
「していますが、具体的にいつとか考えていません。」
「なるほど。
僕は貴女を結婚式に招待したいですし、それは裕美にも了解を貰っています。」
「そうなんですね?」
「でも貴女は義理の弟の婚約者として出席するか、僕の同僚として出席するか。
どうしたら良いと思いますか?」
「あぁ……それで悩んでいたってわけですね。」
「はい。
性格上、きっちりしたくて。」
「同僚として……が良いです。」
「え?」
「だって、御姉様とは昨日初めて会ったわけで。
轟さんとの方が私は付き合い長いですよね。」
「そうですけど。」
「まぁ、その時に私が佐藤になってたら身内として出ないといけないでしょうけど。」
「なるほど。
御意見ありがとうございました。」
「こちらこそ、気遣って下さりありがとうございました。」
轟さんは何かメモをしてから帰って行った。
「へぇー。
轟さん、本社勤務になるんだ?」
「りょ、良子さん、いつからそこに?」
「結婚するにあたり……何とかかんとか。
何かあの人、声が小さくて聞こえないんだよね。」
「それ、最初の方ですよね?」
「そうかな?
それで、雪夏ちゃん、佐藤さんと付き合うんだって?」
「はい……。」
「元気無いね?
どうしたの?」
「ついつい昔の事を持ち出して喧嘩しちゃうんです。
そういうの嫌って言われていて。」
「女って、そういう昔の事を持ち出して喧嘩する生き物だよ。
しない人もいるけど、思い出させられては口に出す。
それを我慢してストレス抱えてる人もいる。」
「……。」
「今度、佐藤さんに言ってあげるから。」
「え?」
「あの人は話せば分かる。
優しい人だよ。」
「はい……。
何か御迷惑おかけしてすみません。」
「幸せになりなよ?」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、そろそろ帰ろうかな。」
「お疲れ様です。」
良子さんと話して、ホッとした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます