最終章 第7話

軽部先輩と苑香の住むアパートへ。


「ごめん、来てもらって。」


「いや、別に近いから問題無いよ。」


私と拓哉は部屋に入ろうと……。


「やだやだ、見られたくない!」


「え?

何で布団かぶってるの?」


「え?

雪夏、いるの?」


「いるよ、どうした?」


「雪夏ぁー、ふえーん……。」


布団をかぶってた苑香が出てきて、私に抱きついた。


「どうした?

泣いてたの?」


「だってぇ……くすん……。」


とりあえず苑香に抱き付かれたまま、動けずにいた。


「二人とも、ごめんね。」


軽部先輩が申し訳なさそうにしている。


「どういう事だよ?」


「いやぁ、昨晩からずっと泣いてる。」


「何で?」


「雪夏、大丈夫?

雪夏、平気?

上手く行ったら泣いちゃう。

上手く行かなくても泣いちゃう。

どうしよう、涙、止まらない!

そんな感じ。」


「あぁ……。

早くに詳細を伝えるべきだったか。」


「まぁ、それはさ、そっちも色々あるだろうから。」


「そうだな。」


「煙草吸いたいな。」


「え?

何で急にそれを?」


「いや、家で吸うの嫌がられるし、でも付いててあげたいし、でも吸いたいって、何か葛藤してた。」


「禁煙何とかってヤツ、使ったら?」


「あぁ、効くか?

アレ?」


「知らん。

俺、そんなの無いけど、禁煙成功中。」


「マジで?

何で?」


「雪夏が苦手だから。」


「マジか……。

じゃあ、俺も苑香ちゃんの為にやめるか……。」


何故か禁煙の話をしてる男達。

苑香が泣いてるのに。


「え?

ホント?」


苑香が泣き止んだ?!


「ん?

何が?」


「禁煙!」


「あぁ……自信無いけど、やってみるよ。」


「本当?」


「うん。」


「だーいすきっ!」


苑香が軽部先輩に抱き付く。


「おいおい、二人が見てるから!」


「いいじゃん!」


「良くないでしょ。

わざわざ来てもらったんだから、ちゃんと話を聞くべきだろう?」


「はーい。」


「やる気無い返事するな!」


「だってぇ、嬉しいのに止めるからぁ。」


「後にして、ねっ、お願い!」


「分かった。」


一瞬、私達はここに何をしに来た忘れてしまった。


「ごめん。

二人が俺達に話があるんだよな?」


「まぁ、そうなんだけど。」


「どうした?」


「雪夏、どうする?」


どうする?って聞かれても……。


「お好きにどうぞ。」


それ以外の言葉が見つからない。


「付き合う事になったのだが、早速もめている。」


「え?」


「とりあえず、帰って話し合うわ。」


「そうか……。」


ハッキリ現状を報告しているのを見て、キョトンとしてしまった。


「雪夏、大丈夫?」


「うん、ちゃんと話し合うから。」


「分かった。」


「苑香、ちゃんと目を冷す方がいいよ。

明日仕事でしょう?」


「うん……ありがとう。」


「じゃあ、またね!」


「うん、またね!」


私と拓哉はアパートから出た。




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