最終章 第6話

秋奈と亮太君が帰ってすぐに。


「ごめん、俺、笑うの堪えてた。

アハハ……。」


拓哉が爆笑してる。


「え?

何があったの?」


「いやぁ、秋奈ちゃん凄いね。

ニヤニヤしてたじゃん、帰る時。」


「あぁ……肌が何とかって?」


「あれ、俺達がエッチしたって分かってるじゃん?」


「え?

そうなの?」


「愛されてるからツヤツヤとかって意味じゃないぞ。

愛されてるわねって彼女が言う時はあんなニヤニヤしないで、うつむいて微笑む感じだろう?」


「確かに……。」


言われてみたらそうだ……。


「あぁ……どうしよ?

もうヤったのね?って思われた?」


「かもなぁ……。」


「軽い女って事?」


「そうかねぇ?」


「えぇーっ、嫌われる?」


「嫌われねぇけど、予想通りって事じゃん?」


「うーん、予想通り?」


ちょっと複雑な気分。


「まぁ、俺が散々女遊びしてたから、そう思うんだろうな。」


「それそれ!」


「お前なぁ、失恋の傷を癒したい気持ち分からないのかよ?」


「分からないよ。

私は他の人に抱かれてないもん。」


「俺だって、ちゃんとゴムしたもん。

直接じゃないもん。」


「そういう事言わないでよ、生々しい!」


「生々しいって言うなよ。」


「はい?」


「引っ掛かるのは分かるけど、嘘は吐けないよ。」


本当の事を知るって、時々残酷だ。

でも、それでも本当の事を聞きたいのも事実。


「なーんか、俺、ずっとそうやって引っ掛かるって思われてるの困るな。」


「え?」


「どうしたらいい?」


「……。」


「やり直すって言っても、何かある度にお互いこの事で喧嘩するってどう?

余計に辛くない?」


「それは……。」


辛いのに、どうしたらいいか分からない。


「俺は、雪夏とやり直すって考えて動けなかった自分の事を許せない。」


「え?」


「忘れようと必死だった。

だって、もう俺に対しての気持ちが無いって思ったから。

でも、それって俺のせいなわけじゃん?」


「……。」


「自分のせいで、自分が辛いってさ、馬鹿みたいだよな。」


「拓哉……。」


「あぁ……どうしたらいいか分からないや。」


拓哉が頭を抱えた瞬間に、拓哉のスマホに軽部先輩から着信が。


「もしもし。」


「あっ、拓哉?

そっち行きたいけど、行けないんだ。」


「え?」


「助けてくれ、家にいるから。

こっちに来て欲しい。」


「分かった、すぐ行く。」


拓哉と軽部先輩の会話は聞こえていた。


「雪夏、一緒に行ってくれるか?」


「うん。」


何とも言えない気持ちで軽部先輩と苑香の住むアパートに向かった。

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