最終章 第5話

胡桃と安田さんが帰ってから、しばらくするとチャイムが鳴る。


「ちわっす!」


「亮太君、元気だね。」


「昨日も今日も秋奈さんに会えて嬉しいっす!」


「良かったな。

入って。」


「お邪魔するっす!」


亮太君と秋奈が部屋に来た。


「雪夏さん、ここ、コーヒーのニオイがするっす。」


「うん。

さっきまでコーヒー飲んでたから。」


「俺、コーヒーあまり飲まないっす。」


「何で?」


「秋奈さんとお茶を飲むっす。」


「え?

お茶って緑茶?」


「玄米茶っす。」


そうか、玄米茶ってあるのかな?

秋奈は緑茶飲むと思ってたけど、玄米茶とは……。


「玄米茶、美味いよな。」


拓哉が玄米茶を出してくれた。

何て用意がいい……。


「雪夏、私は貴女から聞きたい。

どうなったのかしら?」


秋奈がボソッと呟く。


「うん、佐藤先輩と付き合うよ。」


「そうなのね。」


秋奈がうつむく。

どうしたんだろう?


「秋奈さん、どうぞっす。」


すかさず亮太君が持っていたタオルを差し出す。


「これ……湿ってるわよ。」


「あぁ……、さっき顔を拭いたっす。」


「顔を拭いたタオルで私も拭けって事かしら?」


「ダメっすか?

まだまだ使えるっすよ?」


「うん。

使えるわね。」


秋奈がタオルで目元を拭いている。


「秋奈、泣いてるの?」


「心の汗よ。」


「それ女子はあまり言わないかな?」


「そうなの?」


「多分……。」


「私ね、自分がこんなに幸せなのは雪夏のおかげと思ってる。」


「そんな事ないよ。

二人が頑張ってるからでしょう?」


「だから、雪夏が幸せじゃないと嫌なの。」


「え?」


「ずっと辛そうだった。」


「……。」


「今は凄い良い顔をしてるわね。

前に佐藤先輩と付き合ってた時もそんな顔をしてなかったわよ。」


「そう?」


「うん、かなり無理してた。

そりゃ、こんなイケメンで人気者で。

沢山の女にヤキモチやら嫌がらせもあったもの。」


秋奈の言うとおりだ。

無理してたと思う。


「でもね。

昨日の誕生日の事で……。

貴女が凄く愛されてるって分かった。

佐藤先輩の雰囲気も昔より全然良いし、この人と上手く言って欲しいと願ってた。」


「秋奈……。」


「もう別れるとか無しにしてよ?」


「……。」


私が言葉に詰まると同時に……。


「当たり前だろ。」


拓哉がそう言った。


「そうね。

雪夏が迷ったり悩んだりしても、絶対に離さないで。」


「勿論。

こんなイイ女、絶対に離さない。

だから、秋奈ちゃんも彼を大事にね。」


「勿論よ。

こんな素敵な人、もう出会えないわ。」


秋奈が恥ずかしそうにしている。


「雪夏さん、佐藤さん良い人っすよね。」


「え?」


「良子さんが腰を痛めてるの知ってるから、お手伝いしてたっすよ。」


「そうなの?」


「良子さんが言ってたけど、轟さんと親戚になるってマジですか?」


「あぁ……。

なるかもしれないね。

轟さんとは喋るの?」


「引き継ぎで話すっす。

真面目で丁寧っすよね。」


「うん。

そして優しい!」


「良いっすね、優しい親戚。」


「うん。

そうだね。」


そういえば、轟さんと拓哉のお姉さんは付き合ってるんだった……。


「あっ、そろそろ、妹の所に行かなきゃ。

図書館で待ってる。」


「あぁ、そうだったわね。」


亮太君は時計を気にしてる。


「雪夏、私、亮太君の妹の宿題を手伝わないと。」


「そうなんだ。

忙しいのに来てくれてありがとう。」


「ううん。

私、雪夏に会いたかったから。」


「そうなんだ。」


「うん。

何かお肌ツヤツヤでいいね。」


「え?」


「フフッ、佐藤先輩のおかげね。

それじゃ行くわ。」


「あっ、うん。」


秋奈と亮太君が帰った。

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