最終章 第2話

もうキスだけで、どのくらい経ったのか分からない。

キスが私の唇でなく、耳や首へと……。


「佐藤先輩……。

私……お風呂に入ってない……。」


「もう先輩は卒業してくれない?」


「拓哉……。」


「ん?」


「お風呂に……。」


「後で入ったらいいよ。

俺は風呂入らなくても気にしないよ。」


「でも……」


「大丈夫だよ。」


汗のニオイしないかな……とか思ってしまった時に、佐藤先輩……じゃなくて、拓哉が私をお姫様抱っこして、ベッドへ運ぶ。


「雪夏、軽くなった?」


「仕事するようになって、少しね。」


「そっか。

頑張ってるもんな。」


拓哉が微笑む。

ヤバい……キュンキュンする。


「肌、キレイになったね。」


「そんな見ないで……。」


「何で?

本当にキレイ。

今日はじっくり味わわせてもらうよ。」


「え?

あっ……んっ……。」


「色っぽい声を出すようになったね。」


「そういう事……あっ……。

言わないで……んんっ……。」


耳元で囁かれて、もうたまらない……。

優しく撫でる指と、優しく触れる唇が……。


「雪夏、もういいかな?」


「い……いいよ……。」


「好きだよ。」


「うん……。」


体がもう自分の物じゃないみたいに、フワフワする。


「もっと……。」


「うん……。」


一つになるって……こんなだった?

本当に……もう……。



―――私達は別れていた期間を埋めるかのように

何度も何度も……。



「大丈夫?」


「うん……。」


「はぁ……何かもう止まらないや。」


「疲れてるんじゃない?」


「平気だよ……。

雪夏こそ、疲れてない?」


「平気……。

何かボーッとしてる……。」


「俺も……。」


「ねぇ……。」


「ん?」


「何か、幸せ~って思った。」


「俺も……幸せだよ。」


「遠回りしちゃったけど。」


「まぁな。

誰かさんが嘘吐くからな。」


「そっちこそ、隠し事するから!」


「そういう事言うと……。」


「好きにしていいよ。」


「おいおい、煽るなって。

ほら、そういう目で見るなって!」


言いたい事が言えるって、こんなにラクなんだね。

触れたいときに触れられる距離にいられるって、幸せなんだね。


「もう絶対離さない。」


「いらないって言われても離れないもん。」


「言うかよ、そんな事。」


「言うかもしれないじゃん。」


「言わないって言ってるだろ。

やっと手に入れたんだもん。

意地でも離すもんか。」


「フフッ。

佐藤先輩、そういうキャラだっけ?」


「だから、その先輩っつうの、やめろ!」


「あっ、ごめん。

た・く・や……。」


「コラ、耳元で囁くな!」


「わぁー、顔真っ赤!」


「見るな!」


「見せてよ!」


じゃれ合うなんて……初めてかもしれない。

楽しい!

こんな風に……ずっとずっと仲良くしていられたらいいな。




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