最終章 第1話

いきなりのプロポーズ。

それを受け入れたのは私で……。


「入って。」


佐藤先輩の部屋に来るのは初めてじゃないけど……。

凄く緊張する。


「俺、シャワー浴びて来るわ。

洋服洗濯したいし。」


「うん……。」


佐藤先輩シャワーを浴びている。

私はどうしたらいいんだろう?

結局、スマホを触るしか出来ない。


「ゆーきなっ!」


「え?」


目の前を佐藤先輩がトランクス一丁で歩いている。


「ちょ……服とか……。」


「いいじゃん?

俺、いつもこうだよ?」


「……。」


「それよりさ、ビール飲んでいい?

あぁ……でも一緒に飲めないか。

ノンアルコールで乾杯するか。」


佐藤先輩がノンアルコールビールを持って来て、コップに注いでくれた。


「私もやるよ。」


私も佐藤先輩の分をコップに注ぐ。


「はい、それじゃ……二人の未来に乾杯!」


「フフッ。」


「笑う所じゃない!」


「ごめんごめん、カンパーイ!」


私は生まれて初めてのビール。

ノンアルコールだけど。


「マズッ……。」


「え?」


「苦いよ……。」


「ほーんと、お子様だなぁ。

来年、皆で飲むとかなったらどうするんだよ?」


「ジュースでいいよ。」


「マジで?

優子さんにカクテルとかチューハイ飲まされそうだな。」


「そうなの?」


「あの人、酒に強いんだよな。

凄い酒臭いのに普通に話してくるからさ。」


「そうなんだ。」


「まぁ、お前がビール不味いとか言ってもいいように、ジュースもあるよ。」


「あっ、これ、私の好きなサイダー!」


私は口直しにサイダーを飲んでいる。


「お前、本当に美味そうに飲むよな……。」


「ん?」


「美味いだろ?」


「おいひいでふ。(美味しいです)」


「口に入ったまま喋るなよ。

可愛いな。」


「へっ?」


佐藤先輩が私の頭を撫でる。

私はビクッとする。


「緊張してるの?」


「うん……。」


「初めてじゃないのに?」


「だってぇ……。」


「そういう目で俺を見るな。

理性保つの必死なんだよ。」


「え?

必死なの?」


佐藤先輩に抱きしめられる。


「俺、余裕無いって分からない?

心臓バクバク言ってるし!」


「本当だ……。」


佐藤先輩の胸に耳を当てると鼓動が速いって分かる。


「雪夏、俺を見て。」


「え?」


「好きだよ。」


佐藤先輩からのキス。

長い長いキス。

こんなふうに優しいキスするんだったっけ?


「こら、また何か考えてる!」


「……。」


「言ってごらん?」


「こんな優しいキスするんだったっけ?

って思ってた……。」


「え?

今までと同じじゃない?」


「違うよ。

今まではもっと激しいというか荒々しいというか。」


「そういうのが好み?」


「ううん。

どっちがいいとかじゃないの。

どっちでも……してくれたら嬉しい……。」


「お前……マジで可愛いな。」


「え?」


「顔、真っ赤だな。

本当に可愛いよ。

今の俺に集中して。

過去の俺も、俺は俺だけどな。」


もう一回、やり直し。

何かボーッとする。

集中すればする程……ゾクゾクする。


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