第3章 第48話

「あれ……もしかして海?」


「うん。」


気が付いたら海沿いの道を走っていた。

あれ……もしかして……。


「気付いた?」


「え?」


「夜の海にドライブデートで行きたいって行ってたじゃん?」


「あぁ……。」


そういえば、そんな事を話したっけ。

大人になったら、やりたいなぁって。


「ほら、海まで歩くよ。」


駐車場に車を止める。

車を降りると、波の音が聞こえる。


「危ないから、手を繋いでいい?」


「うん。」


「あそこにベンチあるじゃん?

そこでちょっと腹ごしらえするわ。」


「うん。」


私達は海の見える公園のベンチに座った。


「雪夏、食べなくて平気?」


「うん。」


「じゃあ、さっさと食べるわ。」


佐藤先輩がサンドイッチをムシャムシャ食べている。

そんなにお腹すいてたんだ?って、申し訳ない気持ちになった。


「それじゃあさ、ここから本題。」


「もう食べたの?」


「うん。」


前から食べるのは速かったような?


「雪夏、改めて、誕生日おめでとう。」


佐藤先輩が私に小さい袋を渡した。


「ありがとう。

開けていい?」


「うん。」


暗くてよく見えないけど……。

これは……。


「私が憧れてたブランドのネックレス?」


「うん。」


「そんなことまで覚えてたの?」


「うん。

つけてみる?」


「うん。」


「じゃあ、俺がつけてあげる。」


佐藤先輩が私の後ろに立つ。


「うん、これで良し。」


「うわぁ……キラキラしてて、可愛い……。」


「似合ってるよ。」


「ハハッ、ありがとう。」


嬉しすぎてニヤニヤしてしまう。


「雪夏、そのまま聞いて。

ちょっと目を見て話せそうにない。」


「うん。」


何の話だろう?


「雪夏さぁ、俺が色んな女の子と寝たって聞いて、それが引っ掛かってるんだよね?」


「え?」


「俺、他の女と寝たら雪夏を忘れられるかなって思ってた。

でも思い出しちゃうんだ。

お前の事。」


「……。」


「気付いたら、相手をお前って思わないと

ヤレなくて。」


「え?」


「しまいには、最中にお前の名前呼んじゃうし。」


「はい?」


「それでフラれたり。」


「へっ?」


「雪夏と思っていいって言ってくれる人もいたよ。」


「……。」


「でもさ、罪悪感しか残らなくて。

その時、お前と再会した。

それで、お前が凄くキレイになってて。

お前が他の男に抱かれるとか無理って思って。

でも自分勝手だよな。

自分は他の女を抱いてるくせに、お前はダメって。」


「……。」


「ごめん。

何かもう辛いや。

自分が馬鹿すぎて。

何で別れたくないって言わなかったんだろうって。

言うのカッコ悪いから、カッコつけてただけだよな。」


「……。」


「こんなヤツなんだ、俺。

モテるって言われるけど、全然良い男じゃないんだ。

でも、お前の事、どうにかして手に入れたくて。

俺にとって、お前以上の女はいないんだ。」


佐藤先輩の声が……徐々に涙声になって来てる。

私は……。


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