第3章 第46話

本当に私は最低だ。


「ごめんなさい。」


「え?」


「私、自分が自分がって、佐藤先輩の気持ちなんて考えて無かった。」


「え?」


「本当に最低。

ちゃんと話を聞こうとか、言おうとか、そういうのも怖くて。

そういうの言ったら嫌われる?

そういうの言うまで待てばいい?

って、ずっとずっと悶々としてた。」


「……。」


「佐藤先輩の気持ちを考えて、どうしてなのかなって考えるんじゃなくて。

何で私の気持ちを考えてくれない?って思ってた。」


「……。」


「ダメだ、こんなの。

恋愛って二人でするものなのに。」


「……。」


「本当にごめんなさい。」


気付いたら沢山喋っていた。

これを何であの時言えなかったんだろう?

何で気付かなかったんだろう?

初めての彼氏で、しかも素敵な彼氏で、テンパってたから?

今になって気付くなんて。


「雪夏さぁ、そういうのため込みすぎ。」


ボソッと苑香が呟く。

苑香が知らぬ間に後ろに立っていた。


「ごめんなさい。」


「佐藤先輩もさぁ、こんなに追い込まれてるの気付いてあげれないってさぁ。

どうなのよ?」


「ごめん、佐藤先輩は悪くない。

私が悪い。」


気付いたら泣いていた。

もう罪悪感でいっぱいになった。


「違うだろ。

二人共、悪いんだろう?

苑香ちゃんもさぁ、色々言いたいのは分かるけど、今じゃないよ。

もう少し二人に時間をあげよう?」


軽部先輩の声がした。

苑香の後ろに立っている。


「ほら、行くよ。」


軽部先輩が苑香を連れていった。

私は自分が泣いてて気付かなかった。

佐藤先輩も泣きそうだって事に。


「佐藤先輩……ごめんなさい。」


「ううん。

ちょっと苑香ちゃんの言葉が刺さった。」


「え?」


「気付かない俺も悪い。

受験生とは言え、自分の事でいっぱいだった。

自分の焦りとか苦しみとか、雪夏にぶつけてたかもしれない。

もっと優しくなれたら良かったのに。」


「ぶつけていいんだよ。

ぶつけて欲しかった。

それで支えになれるなら。」


「雪夏……。」


「かっこ悪い自分を見せて、去られるのが怖かった。

どんどん嫌な自分になって、もう嫌われてもおかしくないって思った……。

だからお前を試すような事を言ったり、かっこ悪いからってお前に言えない事も増えた。

マジで俺こそ最低だ。」


「佐藤先輩のそういう気持ちに気付けなくてごめんなさい。」


「俺こそ、ごめん。

雪夏、隣に座っていい?」


「うん……。」


目の前に座ってた佐藤先輩が私の隣に来た。


「ほら、涙拭いて。」


「これ、おしぼり……。」


「え?

おしぼりで顔を拭いてる人もいるから良いんじゃないの?」


「それ、オジサンみたいじゃん!」


何だか笑えて来た。

こういうやりとり……好き。


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