第3章 第43話

昨日の夜、優子さんに誕生日のお祝いをしてもらった。

帰り際に、プレゼントのお菓子も貰った。


「明日、幸せな一日にしてなるといいね。」


そう言われた。

私は今日、19歳の誕生日。

昨日だけでも幸せだった。

だから今日は普通でいいと思っていた。

でも佐藤先輩と過ごすんだから、可愛い格好したいなと思った。

やっぱり、私は佐藤先輩を好きなんだろうなって他人事みたいに思った。

引っ掛かってる事がある以上、認めたくない自分もいる。

だって、よりを戻すなんて無理って思ってた。


「雪夏?」


「あっ、佐藤先輩。」


「何か今日はいつもと感じが違うな。」


「おかしい?」


「いや、こういうのも可愛くて良いね。」


ちょっと照れる。

佐藤先輩に見た目の事ってあんまり言われた事が無かったから、どういう反応したらいいか分からない。


「乗って。」


佐藤先輩が車の助手席のドアを開けて待っている。


「お邪魔します。」


「はい、どうぞ。」


車の中は、ほんのりタバコのニオイがする。


「佐藤先輩、タバコ吸うの?」


「うん。

俺、もう20だしね。」


「あっ、そうか。」


「でも雪夏が嫌いならタバコやめるよ?」


「何か残り香が苦手で。」


「そうか。

じゃあさ、今日から吸わないよ。」


「無理しなくても……。」


「お前に嫌われる方が無理だよ。」


「……。」


「まぁ、とりあえず行くか。」


「どこへ?」


「連れて行きたい所があるんだ。」


どこへ行きたいのかな?

場所を聞くべきか聞かないべきか考えていたら、車が走り出していた。

しばらくすると、佐藤先輩のスマホに着信がある。


「ちょっとごめんね。」


佐藤先輩は目の前のコンビニの駐車場に車をとめて、車を降りながら電話に出た。

私の前では話せないのかな?


「お待たせ。」


すぐに佐藤先輩が車に戻って来た。


「さて、行こうか。」


佐藤先輩が車を走らせる。

見慣れた景色の中、辿り着いたのは……。


「え?

カフェに来たの?

カフェで待ち合わせでも良かったのに。」


「そうだな。

とりあえず先に行って、座っておいて?」


「あれ?

今日、すいてない?

車少ないし?」


「そんな日もあるだろう?

好きな席に座れそうじゃん?

俺、仕事の電話するからさ、先に行ってて?」


「うん、分かった。」


私が店に入ったと同時に『パンッ!』という音が何回か聞こえた。

クラッカー?!

何で?

驚いて立ち止まっていると、私の好きな歌手の『BIRTHDAY SONG』という曲が流れる。


「雪夏!」


苑香の声がする。


「お誕生日」


「おめでとうございます!」


おめでとうございますを沢山の人が言ってくれている。

誰がいるんだろう。


「まずは、ありがとうくらい言ったら?」


知らぬ間に背後にいた佐藤先輩に耳元で言われる。


「ありがとうございます!」


私がそう言ったら、沢山の拍手が聞こえた。


「雪夏!」


苑香が走って来る。


「こっちおいで!」


苑香に連れられて、席に座らされる。


「今日はここ座ってて。」


「うん。」


何が起きたか、よく分からない。

佐藤先輩とおでかけ……は、ここに来ることだったの?







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