第3章 第41話

今日は遅番最終日。

昨日まで桝本さんと少しずつ売場を作ったりしていた。

今日は桝本さんは休み。


「お久し振りですね。」


「あっ、専務!

お久し振りです。」


「その後、どうですか?」


「難しいですね。

時間帯によって御客様も違うので。」


「そうですね。

それは店舗によっても違うんですけど、ここはわりと年齢層が幅広いですね。」


「そうなんですね。」


久々に専務に会った気がするけど、ちょっと疲れている感じがする。


「失礼だったらすみません。

専務、疲れていませんか?」


「あぁ……寝不足かな。」


「目の下のクマが気になりますね。

寝不足って、忙しいからですか?

それとも眠れないんですか?」


「両方かな?」


「ちゃんと湯船に浸かるとか、目元温めるとか、アロマとかでもいいですけど、工夫してます?」


「いや、してない。」


「オススメ、いっぱいあるんですけど、専務なら知っていそうですね。」


「オススメしてみて下さい。」


私は専務相手にベラベラと喋りすぎた気もするけど……頑張ろう。


「うちの店、アロマ充実してます。

体に優しく色んな香りがあります。」


「匂いのする物は妻の好みとか分からないからね……。」


「じゃあ、目の下に貼るシートはどうですか?」


「女性っぽくないか?」


「男性も美意識高い方がいますよ。」


「なるほど。」


「あとはサプリとかもあります。

私は使った事が無いのですが、こちらがよく売れています。」


「なるほど。」


「こちらの入浴剤も良いですよ。

お風呂上がりに温泉入ったみたいなポカポカした感じがするので、気持ちよく眠れます。」


「湯船なんて浸かる機会無いな。」


「この際、浸かってみませんか?」


「そうだね。」


「確かこの入浴剤、試供品ありますよ。

差し上げましょうか?」


「え?」


「気に入ったら是非購入していただきたいと……。」


「アハハ!」


専務が爆笑している。


「どうなさいました?」


「私は小豆沢さんと桝本さんの関係について聞きに来たつもりだったのだが、すっかり忘れさせられた。

これが貴女の話術なんですね。」


「え?

雑談のつもりでした……。」


「そうなんですね。

私は今日、この入浴剤を購入して帰ります。

本当にポカポカするのか試したくなった。」


「そうですか。

ありがとうございます!」


「あと、桝本さんとは上手くやれてるようだって報告があった。

そうなのか?」


「協力して売場を作っています。

彼女が下着を買うのに男性の目が気になるそうなので、生理用品売場のスペースを上手く使って置きたいので。」


「そうなのか。

他店でもそうした方が売れるのか、売上チェックさせてもらうよ。」


「宜しくお願い致します!」


専務が機嫌が良さそうに入浴剤を買って帰ろうとしている。

優子さんが驚いたような表情で応対していて笑ってしまいそうになった。





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