第3章 第36話
今日は休み。
カフェに来ている。
実は胡桃に呼び出された。
「ゴメン、直接話したくて。」
「どうした?」
「苑香と秋奈にはまた別の日に約束してあるから黙っていて欲しいんだけど。」
「うん、黙ってる。」
何の話だろう?
「胡桃ちゃん、僕も同席した方がいい?」
「うん。」
胡桃の隣に男性が座る。
この人は常連客のヤスダさん。
「雪夏は会った事あるから知ってると思うけど、こちら、
「うん、常連さんだよね?」
「そう。
彼とお付き合いする事になりました。」
「え?」
「いずれ二人で店を継ぎたいねって。」
「胡桃も……。」
「え?」
「何か良かった……。」
「ちょっと、どうした?
何で泣いてるの?」
気付いたら泣いていた。
胡桃はもう彼氏なんていらないって言いそうだったし、安田さん、良い人っぽいし。
「こういう時は何を渡せばいいのか悩みますね。
ティッシュしかないですけど。」
「すみません……。」
安田さんがテーブルに置いてある箱ティッシュを渡してくれた。
最近、こんな事ばかりだ。
「雪夏?
大丈夫?」
「何か皆が幸せそうで嬉しい……。」
「そんな泣かないでよ。
私まで……。」
胡桃も泣き出した。
「胡桃ちゃんもティッシュでいいですか?
僕の服でもいいですよ?」
「何で服?」
「アハハ、すみません。」
「せめて、ハンカチにしてくれません?」
「うん、そうだね。
はい、どうぞ!」
「え?
何か珈琲の匂い……。」
「あっ、それ、さっき珈琲を少し拭いちゃったヤツ……。
ゴメン……。」
「アハハ、しっかりして!」
「ハハハ、ゴメンゴメン。
ティッシュで我慢して。」
「しょうがないなぁ。」
二人が仲良さそうで嬉しい。
「安田君、手伝ってくれる?」
「あっ、はい!」
胡桃パパが安田さんを呼びに来た。
「胡桃パパ、安田さんと仲良さそうだね。」
「うん。
もう息子出来たーって喜んじゃってさ。」
「でも両親が認めてくれてるんでしょう?
嬉しい事だよね?」
「そうね。
前の時は、さっさと別れろって言ったのに。」
「あれは、私もそう思ってた……。」
「だよね。
いつも雪夏にも支えてもらってたね。」
「こちらこそ。」
「雪夏はどうなの?」
「うーん、分からない。」
分からないって言うより、忙しくてそれどころじゃない。
「雪夏、何か凄い疲れてそう。
恋愛する暇無さそう?」
「そうだね。
仕事大変で。
早番遅番夜勤って時間も不規則。
恋愛に向かないよね?」
「それって同棲しないと会えなそう。」
「だよね。」
「いい人、いたらいいのにね。」
いい人と言われて、佐藤先輩を思い出した。
「誰か思い出した?」
「ううん。」
「そっかぁ。
雪夏にも幸せになって欲しいな。」
「ありがとう!」
私の幸せを願ってもらえるのは嬉しい。
でも最近自分の幸せより、友人の幸せが大事で。
自分の事はあまり考える余裕が無い。
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